Dreamfieldへの旅 by 鰻谷

    第6回 「Day-Night Two-Ballpark Doubleheader」

    第7回 「871」

    第8回 「遠征旅行を100倍過酷にする方法」

    第9回 「2005年 球場巡礼速報 前半」

    第10回 「2005年 球場巡礼速報 後半」



     第6回 「Day-Night Two-Ballpark Doubleheader」


     まいど御機嫌さん、鰻谷でございます。さてみなさん、日本中がサッカーW杯アジア最終予選に夢中になっている一方で、もうひとつの日本代表がひっそりとアツイ戦いを繰り広げていたのをご存知でしたでしょうか?そうです。2月10日からスイスで行われていた男子アイスホッケートリノ五輪最終予選がそれです。日本、ノルウェイ、デンマーク、スイスの4カ国の中で1チームだけがトリノへ行けるという厳しい条件でした。結果は大方の予想通り日本は三戦全敗でトリノへの道は閉ざされました...。
     Japan Hockeyは、開催国枠で出場した長野を除けば、1980年のレイク・プラシッド大会以来五輪に出場していません。暗黒時代は今に始まったことでもないのですが、このままでは国内のホッケーは衰退する一方です。なんとか代表チームに活躍してもらって往時の人気を再び!とホッケーファンの誰もが思ったのですが...残念でした。

     さて今回のお題は、変則ダブルヘッダーのお話です。先日、マイナーリーグの1Aキャロライナ・リーグが同日の午前と午後に異なる球場で同一カードを行う、と発表しました。世に言う「Day-Night Two-Ballpark Doubleheader」です。
     日本では変則ダブルヘッダーと呼ばれていますが、事の起こりは、2000年7月8日に行われたMLBインターリーグのYankees−Mets戦でした。6月11日のYankee Stadiumでのゲームが雨天中止となり、急遽7月8日に第1試合をShea Stadium、第2試合をYankee Stadiumで行う事になったのです。
     同じような事は2003年6月28日にも起こりましたが、これらのケースは、雨天中止による言わば偶然の産物。しかし今季マイナーリーグで行われる変則ダブルヘッダーは、”予め日程に組み込まれている”という点においてまさに正真正銘史上初の試みなのです。

     時は夏休みに入って間もない、6月11日の土曜日。共にヴァージニア州に本拠地を置く永遠のライバル球団(?)、セーラム・アバランチとリンチバーグ・ヒルキャッツがまず正午にセーラムのSalem Memorial Baseball Stadiumで相見えます。
     そしてゲームが終わるや否や、選手達はシャワーを浴びる時間もなく大勢のファンと共に国道460号線をひたすら東へ大移動!わずか90分のドライブでリンチバーグへ到着、まだ陽の残る薄暮のLynchburg's City Stadiumにて両雄は再び激突する、と言う寸法です。
     ちなみにセーラムは、リーグ第3位の集客力を誇る人気チーム、一方のリンチバーグは6位という微妙なポジションです(8球団中)。このシリーズは"Highway 460 Series"と銘打たれ、両球団はロゴ入りのグッズまでこしらえるという気合いの入れようです。
     まぁ、所詮マイナーリーグのプロモーションの一環なので日本のマスコミでは全く話題にならないと思いますが、個人的には来季の日程関係で一番気になったトピックでした。マイナーのこういう小回りの効く遊び心が私は好きなんです。

     最後に私のNew York変則ダブルヘッダー観戦記をお話しましょう。ゲームの様子ではなく如何にしてチケットを取ったか、というお話です。これから現地観戦を計画していらっしゃる方には多少なりとも参考になると思います。

     2003年6月28日のGame 1はYankee Stadiumのデイゲームでした。松井秀喜が満塁HRを打ち、豪腕ロジャー・クレメンスが8回を1失点に抑えるという、ヤンクス・ファンや日本から来たファン(場内でたくさん見かけました)には最高のゲームだった事でしょう。
     私は普段は前売りは買わずに極力現地の球場窓口でチケットを買うようにしているのですが、この試合はさすがにソールド・アウト確実だったので、予め日本からインターネットで予約をしておきました。手数料が結構かかりますが(これが気にくわないワケですね)クレジットカードがあれば誰でも簡単に予約できます。チケットの受け取りは当日に球場の「Will Call」という窓口に行けばOKです。

     Game 2はShea Stadiumでやや遅めの、20:10開始でした。このゲームが1週間前の6月21日の中止分で、もちろんチケットはソールド・アウト。ただ、私はチケットを持っていませんでしたが、球場へ行けばなんとかなるやろ、となぜか確信しており、暢気に構えておりましたが、実際に球場へ着けば案の定チケット・ブースに人が並んでいます。この行列はキャンセル待ちの列で、ちょっと並んだだけでいとも簡単に、あっさりと当日券を買う事ができました。試合開始の直前になって雨天中止分のチケットを持っていたファンがどんどん手放していったようです。
     話によると、マンハッタンにあるMetsのオフィシャル・チームストアでも買えたようで、Yankee Stadiumから流れてきた多数の日本人グループもキャンセル待ちのラインに並んでおり、ほぼ全員がチケットを買えたようでした。
     中に入ってみれば空席だらけで、私はバックネット裏のいい席に勝手に移動し、おいしい観戦を満喫。
     ゲームはのっけからソリアーノ、ジーターがMets先発のグラヴィンから連続HRを放ち、Yanksのワンサイドに。最後にMetsが1点差まで追い上げましたが時既に遅く、その時分にはスタンドはさらに空席が目立つようになっており...。いやはやMetsファンとしてはなんとも見所のない寂しいダブルヘッダーでした。

     この変則ダブルヘッダー、日本でも今年から交流戦が始まるのでひょっとして見られるかもしれません。もし雨天中止連発で予備日がどうしても取れない場合などは、可能性がありそうです。昼から神戸でオリックス−阪神戦、夜は甲子園で阪神−オリックス戦なんておもしろそうじゃないですか!?期待していいですかね?NPBに?

    追記:第5回で触れましたバーミンガム・バロンズの「リックウッド・クラシック」ですが、今季は6月2日に行われる事が発表されました。対戦相手はモンゴメリー・ビスケッツで12:30試合開始です。みなさんふるってご参加下さい!



     第7回 「871」


     まいど御機嫌さん、鰻谷でございます。今か今かと春を待っておられたBaseball Madの皆様におかれましては、飛び交うスギ花粉にビクビクしながらもセッセと球場に通っていらっしゃる事と思います。かく言う私も近未来SFのような立体マスク持参で各地の球場詣でに精を出しております。今年は三年振りに倉敷のマスカットスタジアムを訪れ、やはりここが暫定ながら日本イチの球場だなと再確認した次第です。文句なしに居心地の良い球場でした。

     さて今回のお話は、観客動員数の事です。今季からNPBも実数発表になりまして、ワタクシも毎日毎日、どこが一番少なかったのか?と興味津々でチェックしております。そして予想通りと言うかやはりと言うか、オリックスには笑わせて頂きました。3月3日のロッテ戦の観客はなんと871人!平日のオープン戦とはいえ、早くも3桁をマーク。期待通りの活躍と言ってもよいでしょう。吉本興業と業務提携したようですし、この調子で、9月の消化試合でも大いに笑わせてほしいものです。

     ちなみに海の向こうのMLBでは、ここ数年、Montreal Exposが独占して笑いを提供していました。
     北米では観客数の事を"Attendance"といい、もちろん昔から実数で発表されています。どうやって数えているか詳しくはわかりませんが、基本的には、入場する際に通過する自動改札機のような機械で、入場者をカウントしているそうです。だいたい7回くらいになると、「本日の入場者数クイズ」みたいなカタチでスクリーンにいくつか数字が映し出され、ソールドアウトの時や「これは結構入ってるで〜」と誰もが感じてる時には、期待と興奮で歓声が起こったりします。Attendanceの発表の仕方ひとつをとっても、遊び心があって楽しいですねぇ。
     いちおうMLBの一試合最高入場者数は、Colorado Rockiesが1993年のオープング・ディに記録した80,277人です。当時は現在のCoors Fieldではなく、NFL Denver BroncosのホームMile High Stadiumを一時的に使用していました。8万人なんてのはフットボール・スタジアムでしか記録できない数字ですよね。
    で問題のMontreal Exposですが、2004年の一試合平均入場者数はたったの9,357人でした(プエルトリコで主催した22試合を含めて)。これはMLBではダントツのベベです。トップのNew York Yankeesのわずか約5分の1、ブービーのTampa Bay Devil Raysとでさえ6,000人以上もの差がありました。これはもはや独占禁止法に抵触している可能性(笑)すらある凄まじい数字です。この9,357人というのが如何に少ないかを実感して頂く為に、お約束のマイナーリーグにご登場頂きましょうか。

     2004年にExposより多くの観客を集めたマイナーリーグの球団は、実に5つ。メジャーが人気面でマイナーに負けているなんて、マイナーの実情をご存知でない方は驚かれるかも知れませんね。3A Memphis Redbirds、3A Scramento River Cats、2A Round Rock Express、3A Louisville Bats、3A Pawtucket Red Soxがメジャーを蹴散らしたマイナー達です。
     ポータケットを除いたどれもが、2000年にオープンした最新鋭の球場で、業界では、これらの球場がマイナーの新球場建設ラッシュの集大成だと言われている程です。この4球場は完成以来5年連続でマイナーの集客ベスト5に名を連ねています。この連続的な人気は驚くべき現象なのです。
     アメリカでは毎年毎年各地に趣向を凝らした新球場が次々とオープンし、一時は社会現象にまでなった球場でさえ気づけばTOP10圏内が遙か彼方に...なんてのが多々ある業界ですから。だいたい新球場なんてのは新入社員の若いコと同じで、最初は目新しさでチヤホヤされますが3年も経つと飽きられてしまい、徐々に順位を落としていくのが常。実にシビアな世界なのです。
     上記の5球団の安定した動員は、球場のグレードもさることながら、その周辺地域が抱える人口の多さに理由があると言われています。おそらくロードアイランド州ポータケットやテキサス州ラウンド・ロックなどの都市名を聞いたことのある方はほとんどいないぐらいにこれらの都市はあまり有名ではないと思うので、この観客動員は、都市単体の人口ではなく、近郊都市などを含めた地域一帯の人口を上手く取り込んだ結果でしょう。

     幸い私はラウンド・ロック以外の4球場に足を運んだ事があるのですが、実に良くお客さんが入っておりました。明らかにOlympic Stadiumよりいい雰囲気でして、何と言うか野球の臭いが充満しております。メンフィス、ルイヴィル、サクラメントの球場はいずれもダウンタウン(市街地)の中に立地していてアクセスは非常に簡単です。メジャー超えのマイナーの実力を目の当たりにしたい方は是非行ってみて下さい。絶対に損はしないでしょう。
     日本のウエスタンやイースタン、または四国アイランドリーグが一軍のAttendanceを超える事は絶対にないと思いますが、ひょっとしてマイナー・リーグの中にはNPBを凌駕する球団が現れるかも知れません。私は、今季から3Aに昇格したラウンド・ロックがオリックス、あるいは広島を打ち負かすのではないかと期待しています(昨季マイナー全体で三位のラウンド・ロックが今季一位になるのはまず間違いないでしょう)。
     マイナー偏愛家のワタクシといたしましては、身近に新たな比較対照が現れて密かに喜んでいる開幕前の今日この頃であります。イヒヒ...。



     第8回 「遠征旅行を100倍過酷にする方法」


     まいど御機嫌さん、鰻谷でございます。ワタクシ事ですが四月のアタマにさっそく関東遠征に行ってまいりました。多くのコアな野球ファンの方はシーズンに一度くらいは敵地や地方に遠征してお気に入りのチームを応援する事があると思います。が、球場偏愛者である私の場合は一度の遠征で如何に多くの球場で観戦できるか?という点を何よりも重視しております。
     今回は週末の3日間で5球場を巡りました。"イースタンでお腹いっぱいツアー"と銘打ちまして、具体的には平塚市の平塚球場、さいたま市のやまぶきスタジアム、横須賀市の横須賀スタジアム、さいたま市の市営浦和球場、そして東京ドームへ行ってきました。首都圏在住のファンにとってはどれもお馴染みの球場ばかりですが、我々関西在住の人間にとっては(東京D以外は)なかなか行く機会のない球場です。アメリカに遠征する際によくやる、一日にデイゲームとナイトゲームを別々の球場で観戦するDay-Night Two-Ballpark Doubleheaderを二日連続でやってしまいました。いやはやタフな旅行でした。
     で、今回訪れた球場ですが、どれもいまいちインパクトに欠ける個性のないものばかりでした。もちろん、事前に写真などを見て解っていましたが、実際に足を運んでも特別な感慨はありませんでしたね。
     ただ、やはり初めて行く球場ってのは、それがどんな球場であっても何かしらドキドキするものです。スタンドからの眺めはどんなんかなぁ?とか、照明灯のデザインは?とか(照明がないと凹む)、フィールドの芝の青さは?とか(人工芝だと凹む)。このドキドキ感を持ち続けている内は全面人工芝のフィールドや全面ネット張りのスタンドにもめげず、まだ見ぬ球場へ足を運び続けたいと思っておる次第です。

     先日、ベーマガ社から出ましたムック「球場物語」を入手しました。データや解説の間違い、誤植等が多く相変わらずツメの甘い仕事っぷりですが、なかなかの力作です。あれをパラパラとめくってると耳にした事もないような辺鄙な球場へ行きたくなってきますねぇ。

     さて今回はつかみで遠征の話題に触れましたので、さらに掘り下げて「オレ流球場巡礼弾丸ツアーの組み方」なるお話でみなさまの御機嫌を伺おうと思います。

     私は通常、毎年春から夏頃に約4週間をかけてアメリカ・カナダの球場を徹底的に巡っております。あの広い北アメリカのどこに行けば効率的により多くの球場を巡る事ができるか。選択肢である球場はMLB、マイナー、独立リーグ合わせて約270。途方もない数ですが、この全てがまんべんなく北米中に散らばっているワケではございません。実はアメリカ東海岸やカリフォルニア、フロリダ、五大湖周辺など、ある特定の地域に結構密集しているんですね。このポイントを抑えておくとかなりパンチの効いた効果的な日程作りが可能になるわけです。
     では実際に、昨年の私の作例を紹介しましょうか。すごく簡単なので、是非みなさまもご自分のテーマに即したオレ流球場巡りの旅をプロデュースしてみて下さい。昨年、私は25日間で11球場を巡り20試合を観戦しました。ただし、到着した日と帰国の日は観戦しようにもできなかったので実際は23日間になります。23日で20試合ですから、まぁ比較的ゆとりのあるベーシックな日程だと言えるでしょう。

     まず最初に、どうしても行きたい球場を決めます。嫁はんを質に入れてでも生観戦してみたい球場です。これが旅の核になります。去年の私の場合はプエルトリコのHiram Bithorn StadiumとモントリオールのOlympic Stadium、それにニュー・ハンプシャー州マンチェスターのGill Stadiumでした。いずれもプロのレベルで使われるのは、2004年が最後になった球場です。
     球場が決まれば、そこで行われる試合日程を最優先させて日本を出発する日取りを決めます。もし現地で雨天中止に当たってしまうとかなりショックなので、最低2試合は見るように日程を組みましょう。出発日が決まれば、予算や休みの日程の関係で帰国の日が自ずと決まってくるでしょう。出発日・帰国日・渡航先(私の場合ですとプエルトリコとモントリオール、マンチェスターの3都市)が決まれば航空券を押さえてしまいます。
     後は、核になる球場の近隣にある球場をリストアップして肉付けしていきます。プエルトリコは島なので近隣の球場はありませんが、マンチェスターの近隣にはBoston,MA、Lynn,MA、Brockton,MA、Nashua,NH、Pawtucket,RI、Portland,ME、NYなどが。モントリオールの近隣にはQuebec City,Quebec、Ottawa,ON、Toronto,ON、Buffalo,NY、Syracuse,NY、Rochester,NYなどがあります。
     こうして調べて行くと、モントリオールとマンチェスターの間に色々と球場が点在しているのがわかってきます。じゃあ、この両都市間を飛行機で一気に飛び越してしまうのではなくて、これらの点在する球場(のある町)を陸路で、即ち自家用車か都市間高速バス=グレイハウンド・バスで巡りながら移動できるのでは?という冒険心がオトコの子ならフツフツと湧き出でてくるハズです。お金に余裕のある人はレンタカーで、余裕のない人はグレイハウンド・バスで回りましょう。

     肝心の球場の場所ですが、これは各球団のウェブサイトかヤフーマップで調べられます。バスで回る人(私も常にそうですが)は、バス・ターミナルから球場までの道順もヤフーマップで調べておくと便利でしょう。もちろん、バスの時刻表も調べておきます。試合開始に間に合うバスは走っているのか?試合終了後に次の町へ行く夜行バスはあるのか?これらはバスで旅をする上でかなり重要な情報なので、必ず事前に確認しておきましょう。試合終了後のバスがなければその町で泊まる必要がありますが、そうなるとホテルの場所も予め調べておいた方がいいでしょう。マイナーの球場があるほどの町なら、大概はホテルやモーテルがあります。
     核になる球場のスキ間を日程や試合開始時間をニラミながら都合の良い近隣の球場で埋めてゆくと...なんと言う事でしょう!いつの間にかあなただけの欲張り過密スケジュールが完成しているではありませんか!もちろん観戦の合間に観光する日を作ってもいいのですが、そんな事してるとまるで欧州サッカー観戦ツアーの如きになってしまいます。サッカーファンに舐められない為にも、この春は野球観戦でギッシリの過酷な日程作りに励もうではありませんか!

     最後に補足として、去年の私の詳しいルートを記しておきます。
     日本→San Juan,Puerto Rico(3試合)→NY(Mets)→Pawtucket,RI→Manchester,NH→Portlamd,ME→Boston,MA→Elmira,NY→Rochester,NY→Montreal,Quebec(2試合)→Ottawa,ON→Quebec City,Quebec(2試合予定・1試合雨天中止)→Lynn,MA→Nashua,NH→Binghamton,NY→Manchester(再訪)→Boston(再訪)。
    プエルトリコ→NY間以外は全てバス移動です。最後の日はボストンのFenway Parkでナイトゲームを見た後に夜行バスでNYへ行き、早朝の飛行機で帰国しました。なので航空券は日本→プエルトリコ→NY→日本というカタチになり、所謂アメリカ東海岸2都市周遊プランといものでした。飛行機でザクっと大雑把に、バスでちょこちょこと小気味良く、といった感じですね。



     第9回 「2005年 球場巡礼速報 前半」


     ご無沙汰しておりました。鰻谷でございます。先月はアメリカ遠征の準備に追われていたので連載をスキップしてしまいました。ごく少数の楽しみにされていた方々、どおも申し訳ございませんでした。

     さて、ワタクシ鰻谷は27日間に及ぶ巡礼の旅を終えまして、現在はアメリカの某所におきまして次なるミッションに向けて充電しているところでございます。今年は27日間で25試合・17球場を巡ってまいりました。予定では26試合・18球場になるハズだったのですが1試合・1球場だけ雨で中止になってしまいました。第5回の連載でご紹介いたしました”リックウッド・クラシック”がそれです。よりによって年に1試合しか行われない球場で雨天中止にあうとは...トホホと言うか、やはり歴史ある球場なのでニワカを寄せ付けないナニカを備えておるのでしょう。そうそうチャンスはありませんが、またいつかトライしてみようと思います。

     というわけで、今回は今年訪れた18球場の雑感を速報として読者の皆様にお届けいたします。各球場の詳しいレポートは「球場巡礼」でUPされるまでお待ちくださいませ。

    【ロジャース・センター】

     トロント・ブルージェイズのホームです。今年から地元の大手通信会社がネーミング・ライツを買い取って、スカイドームじゃなくなりました。去年からチーム・ロゴも一新されてイメチェンに必死です。フカフカ系の人工芝がインストールされて見た目はかなり改善されました。試合開始前の選手紹介の映像がすごく現代風になっていてカッコよかったです。一番安い席は9カナダドルです。日本円で約800円。安いなぁ♪

    【アレクシアン・フィールド】

     独立リーグ、シャンバーグ・フライヤーズのホームです。シャンバーグはシカゴのベッドタウンで、シカゴから東へ電車で約1時間です。99年に独立リーグの為に造られた球場ですが、なめてたら痛い目にあいます。キャパ7,000人・2Aクラスの設備で、それはもう立派なもんです。人気も傘下のマイナーリーグ以上です。

    【リグレーフィールド】

     おなじみシカゴ・カブスのホームです。カブス、最近えらい人気で、ここ数年はボストンのフェンウェイ・パークと並び、もっともチケットの取りにくい球場になってしまいました。以前はいつ行ってもガラガラだったのですが、今では当日なら立ち見席か後ろの方のクソ席しか買えません。しかも値段設定が超強気。旅行者には条件の良くない球場ですね。

    【ジョン・オドネル・スタジアム】

     1Aミッドウエストリーグ、スウィング・オヴ・ザ・クウォッド・シティズのホームです。マイナーリーグ屈指の美しい球場として、アメリカ国内では評価が確立しています。ミシシッピ川にかかるクラシカルな鉄橋が、スタンドから綺麗に望めます。たまに、川の増水でフィールドが浸水してしまいます。

    【U.S.セルラーフィールド】

     シカゴ・ホワイトソックスのホームです。以前は白とブルーが基調のさえない球場だったんですが、ここ数年でブラック系に塗り直し、グッとひきしまった感じになりました。またわざわざ2階席の座席を削って鉄骨組の屋根を造り見違えるようにカッコよくなりました。試合前の選手紹介のVTRと音楽にシビレました(AC/DCの"Thunderstruck"が大音量で流れます)。ただ、不人気球団の割には一番安い席が$14もします。もっと安い席を作って下さい。

    【フィフス・サード・フィールド】

     1Aミッドウエストリーグ、デイトン・ドラゴンズのホームです。3Aインターナショナル・リーグ、トレド・マッドヘンズのホームも同じ名前なのでお間違えのないように。どちらも中西部でブイブイ言わせてる「フィフス・サード・バンク」がネーミング・ライツを獲得しています。毎年一試合平均8,000人以上を集める超優良球場なので今更ほめるトコロはありません。行けば納得のいい球場です。ただし、それ以下でもそれ以上でもないですけど。

    【リックウッド・フィールド】

     詳しくは「ぼーる通信」のバックナンバーをご覧くださいませ。
     マイナーの公式戦は年に一度ですが、今でも大学野球やセミプロの試合が頻繁に行われているようです。2009年には開場100周年を迎えます。中に入ると座席や屋根や照明灯のボロさに歴史を感じましたね。当日は試合前のセレモニーも済まし、3時間ほど粘ってなんとか試合をしようとしていたのですが、グラウンド不良のため審判団がOKを出さず中止になってしまいました。クソ映画「タイ・カッブ」の撮影に使われたようです。

    【レイ・ウィンター・フィールド】

     2Aテキサスリーグ、アーカンサス・トラヴェラーズのホーム。今回訪れた中では最も印象深い球場でした。1932年開場の古い球場で外観や内装がほぼ当時のままじゃないのか?と思わせる佇まいでした。なんと言うか、マイナーリーグと聞いて連想する全ての要素を備えております。木製のイス、屋根、鉄骨組みの照明灯、独特の薄暗さ。2008年に新球場ができる予定なので、あと2シーズン限りです。

    【ラグレイヴ・フィールド】

     独立リーグ、フォートワース・キャッツのホーム。オリジナルは1926年開場ですが、現在のはCatsの為に2002年に全面的に立て直された全く新しい球場です。1940・50年代にはブルックリン・ドジャースのマイナーチームがあったようで、Catsという名前はその当時の名前だそうです。もちろんチームカラーも当時のを受け継いでドジャー・ブルーです。
     キャパ5,000人の小球場ですが、スタンドはしっかり屋根で覆われており、外野席も充実しております。一見シンプルでお金はかかってるように見えませんが、居心地が良く、非常に良くできた球場でした。セントラル・リーグは独立リーグの中では格の低い方ですが、そのチームでさえこれほどの球場でプレイしているという事に改めて驚かされました。

     残りの9球場は次回にお届けいたします。また、来月、モニターの前でお会いいたしましょう!



     第10回 「2005年 球場巡礼速報 後半」


     まいどご機嫌さんです。鰻谷でございます。現在、アメリカの某所に滞在しております。バスでの球場巡りを終えた後も車でちょこちょこと球場をつまみ食いをしましたので、その分もあわせてご紹介いたします。写真もあればいいのですが、まだ未整理でしてHP上にもUPできない状況です。申し訳ございませんです。
     というわけで、今回も前回に引き続きまして球場速報の後編です。各球場の詳しいレポートは「球場巡礼」で順次UP予定ですのでお待ちくださいませ。

    【SBCブリックタウン・ボールパーク】

     3Aパシフィック・コースト・リーグ/オクラホマ・レッドホークスのホームです。名前の通り、レンガ造りの建物が並ぶ “ブリックタウン”に90年代に新設された、レトロな球場です。アメリカではさびれた旧市街の古い建物をリフォームして、ヒップなバーやレストランにするのが流行っており、そんなおしゃれスポットの中にあります。マイナー全体でも間違いなく五本の指に入るほど、巨大で立派なハコです。正直ビビリました。

    【ブッシュ・スタジアム】

     セントルイス・カーディナルズのホームです。今季がファイナル・イヤーなので、8年振りに再訪しました。築40年ですので、さすがに古臭さを感じましたね。ハードもそうですが、ソフトも古い。場内の盛り上げ方やらビデオ・スクリーンの映像なんかは20世紀のままじゃないのか?と思うほどです。クッキーカッター・スタジアムは、何年経とうが味は出ないようです。湿気てしまうだけです。新球場はすぐ隣に現在も建設中です。

    【ボス・フィールド】

     独立リーグ/エヴァンズヴィル・オッターズのホームです。1915年開場の、アメリカでも有数のオールド・スタジアムです。古い割には丁寧にメンテナンスされています。映画「プリティ・リーグ」の撮影でも使われ、その時に作成したと思われる看板などが未だに残っていました。興味のある方はDVDをごらんになって下さい。今でもあのままの状態です。煉瓦造りのエントランスがいい雰囲気です。

    【ヘイマーケット・パーク】

     独立リーグ/リンカーン・ソルトドッグズのホームです。こちらも前回にご紹介いたしました「アレクシャン・フィールド」や「ラグレイヴ・フィールド」と同じく、独立リーグ誘致の為に2001年に建設された新球場です。カレッジ・ベースボールの強豪、ネブラスカ大学コーンハスカーズと共用ですが、ネブラスカ大学のゲームの方がカレッジ・ワールド・シリーズの常連という事もあって、人気があるようです。もちろんソルトドッグズの方も結構な人気チームです。独立リーグ誘致の為の新球場建設は現在も各地方で活発に行われています。

    【ローゼンブラット・スタジアム】

     3Aパシフィック・コースト・リーグ/オマハ・ロイヤルズのホームです。3Aでは珍しい全然ボールパークらしくない、スタジアム度200%の球場です。赤・青・黄でベタ塗りされたスタンドが毒々しくて趣味悪いです。ロイヤルズの3Aと言うよりは、毎年6月に行われるカレッジ・ワールド・シリーズの会場として全国的に有名で、期間中は毎試合2万人以上の観客を集めます。ドラフト指名されたばかりの金のタマゴたちがわんさか出場するので、レベルも注目度もかなり高いです。この球場は大学野球の聖地なのです。

    【プリンシパル・パーク】

     3Aパシフィック・コースト・リーグ/アイオワ・カブスのホームです。Des Moinesという町にあるのですが、これ読める人いますか?デモインと発音します。
     デモイン。今年から地元金融会社がネーミング・ライツを買い取って球場の名前が変わりました。なんてことない普通の球場ですが(いや、もちろん1992年開場なのでそれなりには立派です)、人気球団の傘下なので客は良く入っています。私が行った時はたまたまケリー・ウッドがリハビリ登板する日でしてソールドアウトでした!

    【ローレンス−ドゥモント・スタジアム】

     2Aテキサス・リーグ/ウィチタ・ラングラーズのホームです。外野が天然芝、内野が全面青汁人工芝という珍しいフィールドです。1934年開場ですが何度もリノベーション(改装)を繰り返しているのでレトロ感は全くありません。毎年8月にセミプロ野球の全国大会が行われるのでちょっとだけ有名です。ナショナル・ベースボール・コングレス(NBC)という団体が主催しているのですが実態はよくわかりません。スタンド裏のコンコースには過去にこの球場でプレイした有名選手のパネルが数多く展示されています。R.クレメンスやM.マグワイアなどの有名選手がNBCの大会でプレイしているのが意外でしたね。

    【カウフマン・スタジアム】

     カンサス・シティ・ロイヤルズのホームです。イニング間の噴水ショウが見物です。今回8年振りに再訪しましたが、よく見ると評判通り美しい球場でした。球場までシャトルバスで行くと入場料が$5引きになるクーポンがもらえます。従って一番安い席(アッパーデックの端っこ)がなんと$2ポッキリで買えてしまいます!マイナー・リーグより断然安いです。このチケットでフィールド・レベルに紛れ込んで知らん顔して観戦していたのは私だけではないハズです。

    【グリア・スタジアム】

     3Aパシフィック・コースト・リーグ/ナッシュヴィル・サウンズのホームです。ボロくて何の特徴もない球場ですが、最近プローモーションに力を入れており、観客動員がグングン伸びています。特に子供に甘い汁を吸わせるのが上手で、プレゼント投げ入れは頻繁に、試合終了後のベースランニングは毎試合、と言った具合です。2007年にダウンタウンに新球場がオープンする予定なので、観客動員がUPしているという具体的な数字が必要なようです。アイオワに続いてケリー・ウッドの二度目のリハビリ登板があったのですが、(前日にひつこく告知したのが功を奏し)当日は1万人を越えるファンが集まりました。

    【スミス−ウィリス・スタジアム】

     独立リーグ/ジャクソン・セネターズのホームです。1999年までは2Aテキサス・リーグのチームが居ましたが、さっさと見切りをつけてテキサス州ラウンド・ロックに移転しました。その直後に独立リーグのチームが入ってきたワケです。
     なんてったって全面青汁人工芝ってのがスゴイです。塁間はおろかバッターボックスまですべて人工芝です。マウンド以外は全て真緑。私も数多く球場を見てきましたが、こんなのは初めてです。さすがアメリカ。日本の常識が全く通用しない。ちなみにセネターズにはBad Newsですが、ジャクソンに隣接するパールという町に2Aサザン・リーグのチーム(ミシシッピ・ブレーヴス)が今季から越してきました。恐らくセネターズは近い内に移転し、この球場はプロの世界から完全に姿を消す事でしょう。

    【ゼファー・フィールド】

     3Aパシフィック・コースト・リーグ/ニュー・オリンズ・ゼファーズのホームです。1998年に初めて訪れた時はあまりに素晴らしい球場だったので興奮しましたが、今年再訪してみると3Aクラスではもやはスタンダードな普通の球場になっていました。取り立ててほめるべきところはないですが、良くできた球場で見栄えもいいです。しかし、慣れとは恐ろしいものです。

    【リヴァーウォーク・スタジアム】

     2Aサザン・リーグ/モンゴメリー・ビスケッツのホームです。2004年にできたばかりの最新球場で、球場の一部は100年以上前のかつての鉄道駅舎をそのまま使用しています。外野の芝生席やフィールドの形状なども非常に凝っており、かなりインパクトのある素晴らしい球場です。ひどく感銘を受けました。ちなみにチーム名のビスケットとはあの平べったいビスケットではなく、南部料理の方のビスケットです(ケンタッキー・フライド・チキンで売ってるやつ)。球場の売店でチームの公式ビスケットが売ってます。こういう細かい芸が好きです。

     この後もアトランタ、シンシナティなどまだまだ球場巡りは続くのですが、今回はこれくらいにしておきましょう。

     今年、色々な球場で改めて感じたのは、野球ってのは白人のスポーツだなぁ、という事です。中西部や南部という保守的な土地ばかりをまわったので余計にそう感じたのでしょうが、スタンドでマイノリティの姿を見かけることはほとんどありません。ほぼ白人です。さすがにミシシッピ州ジャクソンやアトランタでは、余所よりも黒人が多くいましたが。
     日本人の私がスタンドをうろちょろしてパシャパシャと写真を撮っていると、視線を感じますね。なんでオマエがこんなトコにいるのだ?という視線です。MLBの球場では日本人や韓国人はもはや当たり前に見かけますし、黒人やヒスパニックはもちろん、果ては台湾人(ヤンキースの王健民登板時限定)までいます。ところがマイナー・リーグになると前述した通り客層が全然違ってきます。やはりBaseballというスポーツの草の根部分は圧倒的に白人が支えているようです。どおりて国際化が進まないワケです(笑)。
     でも、私はそれでいいと思っています。野球はローカル・スポーツでいいのです。サッカーみたいに殺伐とした代理戦争になってはイヤですし。試合中に席を立って食べ物やソーダを買いに行けるあののんびりした雰囲気がいいのです。ローカルでおおいに結構。


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