2002年W杯特集 出場国紹介・トップ

     世界最大規模のスポーツイベントとして知られる、サッカー代表チーム世界選手権、FIFAワールドカップがいよいよ近付いて来ました。
     普段サッカーに興味の無い人も、地元開催の今回は“にわかサッカーファン”として、終わり無きサッカー談義に加わる事でしょう。
     そこでこれから10回に分けて、皆さんのサッカー談義をさらに盛り上げるための一助として、出場国の紹介を行っていきます。よろしくご活用ください。

     なお、話をわかりやすくするため、強豪国に多くの紙面を割くと同時に、本稿を書き上げた時点よりのち、選手の故障等で状況が変わる場合がございますが、その件につき、ご容赦のほど、よろしくお願いします。



    ■2002年日本・韓国共催FIFAサッカーW杯トーナメント表


    2002 soccer world cup tournament map



    ■出場国紹介

     ・ブラジル

    【Aグループ】
     ・フランス
     ・セネガル
     ・ウルグアイ
     ・デンマーク

    【Bグループ】
     ・スペイン
     ・スロベニア
     ・パラグアイ
     ・南アフリカ共和国

    【ブラジル以外のCグループ】
     ・トルコ
     ・中国
     ・コスタリカ

    【Dグループ】
     ・韓国
     ・ポーランド
     ・アメリカ
     ・ポルトガル

    【Eグループ】
     ・ドイツ
     ・サウジアラビア
     ・アイルランド
     ・カメルーン

    【Fグループ】
     ・アルゼンチン
     ・イングランド
     ・ナイジェリア
     ・スウェーデン

    【Gグループ】
     ・イタリア
     ・エクアドル
     ・クロアチア
     ・メキシコ

    【Hグループ】
     ・日本
     ・ベルギー
     ・ロシア
     ・チュニジア

    【幻のIグループ】
     ・オランダ
     ・コロンビア
     ・ホンジュラス
     ・ギリシャ



     ●ブラジル

     ブラジルは、コンフェデレーションズカップやコパ・アメリカ(南米選手権)では不振にあえぎ、W杯予選ではその突破に苦しんだため、今や王国は凋落した、とお考えの方も多いだろう。
     しかしながら、このようにブラジルが苦しんだ理由は、極めてハッキリしている。

     まず、コンフェデレーションズカップについてだが、これは、ブラジル人選手が多く所属するイタリアのセリエリーグや、スペインのリーガ・エスパニョーラのシーズン終盤と重なったため、これらに所属する選手を召集できなかったからである。
     また、コパ・アメリカについては、開催地コロンビアの治安が悪すぎたため、同様に、これら欧州の超一流クラブの主力選手の代表入りを実現させることができなかったことによる。
     そしてワールドカップ予選の場合は、コンフェデ杯やコパ・アメリカとは違って、クラブは選手を派遣する義務が有るため、上記の理由は該当しないのだが、選手がクラブでの試合の合間を縫って一ヶ月に一度大西洋を渡り、同予選の試合に出なければならなかったので、容易にチームがベストの状態で試合に望めず、その突破に苦しんだのである。

     逆に、同予選をトップで通過したアルゼンチンは、ブラジルとは違って、常に素晴らしいチームを結成することに成功したため、独走できた。
     しかし、アルゼンチンがいかに強いとはいえ、同予選の差がそのまま実力の差、と考えるのは早計だと私は思う。

     では、今回のW杯予選でブラジルとアルゼンチンの結果にこのような差が出たのは、なぜだろうか。そこでこのことを考える前に、まずは、南米の同予選の事情について説明しよう。
     この南米予選は、以前は二組に分かれての総当たり戦であり、短い期間に、基本的には1つのチームで一気に行う、という方式であったが、前回のフランスW杯予選から、全10カ国の総当たり2回戦で、一年半以上かけて断続的に18試合行う、という方式を採っている。この方式は、各国サッカー協会や、選手を送り出す側の欧州の有力クラブが苦情を言っているほどの厳しい方式で、次回からの見直しも有り得ると言われている、極めてタフなやり方である。
     だがブラジルは、フランスW杯の前のアメリカW杯の優勝国だったので、フランスW杯の際には同予選が免除となっており、このタフな方式を経験していなかったために、これへの対策を充分練っておらず、予選では、アルゼンチンと対照的な結果に終わってしまったのである。

     もう一つ、欧州からの選手の召集の事は、話せば長くなるが、現代サッカーを語る上では決して避けられない話題なので、書いておきたい。

     ベルギーの無名プレーヤー、ボスマン選手が、移籍に関してチームから不当な扱いを受けたとして起こした裁判の判決で、「EU(ヨーロッパ共同体)の住人はEU内で就職の自由が有り、EU内のクラブはEU国籍の選手に外国人枠を適用してはならない」との判断がなされ、欧州各国のリーグに、大量に外国人枠の空きができた。
     そこで欧州のクラブは、当然の帰結として、その空きを良い選手で埋め始めたので、ブラジル、アルゼンチン等の優秀な南米の選手が大量に欧州に渡り、EU外の選手が経歴を詐称してEU内の市民権を取得する事件が、複数起こった。その結果外国人枠が形骸化し始め、イタリアセリエAなどでは外国人枠を全廃する、という事態が起こったので、さらに南米の選手が欧州へと渡ることとなったのである。

    ★ ボスマン採決の詳細に興味の有る方は、以下のページを参照されたい。

    http://www.sportsnetwork.co.jp/jl/jl_advbn/vol35.html
    http://www.sportsnetwork.co.jp/jl/jl_advbn/vol36.html

     またこの2つの事に加え、ブラジル代表を苦しめた事が、もう一つある。

     このブラジルW杯代表を統括するブラジルサッカー協会は、世界最悪のサッカー協会として知られており、スキャンダルが乱発するブラジルサッカー界を統括する機関として相応しく、現場同様スキャンダルを連発し、到底優秀とは言い難いことで有名だ。
     したがって、過去のW杯予選では今回ほどチーム作りは難しくなかったために、これを問題なく突破していたわけだが、今回のW杯予選では前述の難しい問題を抱えてしまったので、同協会は自らの無能さを露呈してしまったと言える。

     以上のことから、コンフェデ杯でブラジル代表が苦しんでいた頃、ローマのエメルソンとカフーはセリエAで、レアル・マドリードのロベルト・カルロスはリーガ・エスパニョーラで、バイエルン・ミュンヘンのエウベルはブンデスリーガ(ドイツ1部リーグ)と欧州チャンピオンズリーグで、それぞれ優勝に貢献していた。特にFCバルセロナのリバウドは、リーガ・エスパニョーラの最終戦で3点取り、チームをチャンピオンズリーグ予選へと滑り込ませ、予選でも3点を取って本戦に導いており、ブラジル代表が苦戦しているのを後目に、クラブチームのために大車輪の活躍をしていたのである。
     このように、ブラジル人選手の欧州での活躍は目覚ましい。
     彼らは単に個人能力が高いだけではなく、あらゆるタイプのサッカー、あらゆるタイプの戦術に適応して、そのチームの中心として活躍する。ブラジルを凌ぐ選手層の厚さを誇る国は存在しない。

     前述の欧州のリーグのグローバル化で欧州に渡ったブラジル選手は、ほとんどのポジションでチームを強化するためにチームに加わっているが、センターバックだけは、違う。伝統的にブラジル代表は、センターバックが弱点になっているのだ。しかしながら、今回のW杯については、センターバックも多くの選手が欧州で育成されたために、第一級の構成ができる。
     ドイツ、レバークーゼンのルシオはブラジルで唯一の世界レベルのセンターバックと言われているが、セリエAローマのザーゴとACミランのロッキ・ジュニオールも世界最高の守備水準の求められるセリエAで、合格点のプレーをしている。
     したがって、アウダイール、ジュニオール・バイアーノがいた前回のフランスW杯におけるブラジル代表のセンターバック陣と比べて、かなりのレベルアップを見込むことができる。

     サイドバックには世界最高の人材がいる。
     左のロベルト・カルロスが世界最高の左サイドバックであることに異論のある人はいないだろう。小柄だが駿足で、キックはシュート、クロス共に桁違いに凄い。守備への酷評は消えないが、圧倒的な攻撃のウェポンとしてその名を馳せている。

     右サイドバックのカフーはベテランだが、ロベルト・カルロスとは違った意味で、攻撃としては最高の右サイドバックだ。テクニックに優れ、場合に因ってはゲームメーカーにもなりうる。
     所属するローマは、サイドバックの存在しないデフェンスの陣形3バックを採用しているので、最近はサイドハーフとして前側のポジションをやっているが、問題なく活躍している。
     カフーは元々FWで、プロ入り後にサイドバックに転向したために、多彩なプレーが出来るのである。

     ボランチは現在のブラジル代表で、最も層の厚いポジションだ。前回のブラジル代表のボランチのレギュラー2人は共にJリーガーだったが、今回は、欧州の超一流クラブのメンバーで、控えまで占めることができる。
     ASローマのエメルソンはドイツ、ブンデスリーガでMVPになって後、このチームに来て、ここを悲願の優勝へと導いた。ヴィエラ(フランス)、エドガー・ダービッツ(オランダ)などと並んで、世界最高峰のボランチだ。
     ブラジル、コリンチャンス所属のヴァンペッタは昨年不運続きで、怪我や給料未払い問題に遭遇したが、万全なら、世界一層の厚いブラジル代表でもレギュラーになれる。

     彼らに続くのは、まずはローマでエメルソンのチームメイト、アスンソンとリマだ。若いアスンソンは攻撃、ベテランのリマはディフェンスで優れている。ローマではどちらかがエメルソンと併用される場合が多く、イタリア代表のレギュラークラスのボランチ、ダミアーノ・トンマージはベンチに残るケースが多い。

     続いてスペイン、レアル・マドリードのフラビオ・コンセイソンはデポルティボ・ラ・コルーニャで活躍して後、レアルに入った選手だが、コパ・アメリカは開催地コロンビア入りが認められず、W杯予選のアルゼンチン戦は怪我で出られなかった。現在レギュラーではないが、能力が高いのは間違いない。

     そして、ブエノスアイレスでのアルゼンチン戦にエメルソンとフラビオ・コンセイソンが出場出来なかったため、急遽召集されたのが、33才で94年W杯の優勝メンバー、マウロ・シウバだ。アルゼンチン戦では動きが遅いとの酷評を受けたが、所属するデポルティボ・ラ・コルーニャでは、チームの快進撃を支えている。

     前回のW杯では、今は無き横浜フリューゲルスのサンパイオが1試合出場停止になった時、本来ボランチでは無いレオナルド(元鹿島)がボランチで出ていたが、今回は層を厚くできそうだ。

     続いては、ブラジルの司令塔の話に入る。

     前回大会ではジュニーニョ(現フラメンゴ=ブラジル)が故障したため、ブラジル代表には左利きの攻撃的MFしかいなくなってしまい、そのことで苦労していた。理由は判らないが、右利きの選手は左右どちらのポジションでもこなせる選手が多いのにもかかわらず、左利きの選手は、右寄りのポジションを苦手としていたからだ。

     現在のブラジル代表で最も傑出した攻撃的MFは、FCバルセロナのリバウドである。左利きの彼は現在、このポジションにおける世界最高の選手で、彼ほど完璧に司令塔としての資質とFWとしての資質を兼ね備えた選手は、いない。長短のパスやシュート、ポジショニング、フリーキック、ドリブルなど、どれを取っても最高級のサッカー選手だ。
     したがってチームが不調の時には、チームはリバウドに頼り、リバウドは一人で悪戦苦闘する事になるので、どうしても、独りよがりのプレーでチームのリズムを悪くしているように見えてしまう、という贅沢な悩みまでこの選手にはついて回る。代表ではロナウド(後述)が故障してから、クラブではフィーゴ(ポルトガル)が移籍してから、ジダンでも及ばないその能力故に、それぞれのチームからは大変な依存を受けてきたのだ。

     そのために体調も崩したが、複数箇所の怪我を抱えながらでさえもレベルの高いプレーをしてしまうため、完治しないまま復帰するという悪循環に陥り、今シーズンは怪我での欠場が増えた。万全で本大会を迎える保証はないが、万全でなくても然るべきサポートがあれば、最高の活躍をするだろう。

     彼の控えはデポルティボ・ラ・コルーニャ近年の躍進の立て役者ベテラン、ジャウミーニャだ。絶好調だった昨年春に1度でもリバウドの代わりに召集されていたら、リバウドの体調も守られ、ブラジルの運命も変わったと私は考えている。リバウドほどの力強さはないが、大変なテクニシャンで、左足から芸術的なパスやキックを放つ。

     また彼らと違うタイプの左利きの攻撃的MFでは、デニウソンとゼ・ロベルトがいるが、共にブラジル代表には存在しない、高い位置のサイドMFが本職だ。デニウソンのドリブルは有名で、私は切り札的存在として代表に入ると考えている。

     リバウドと併用されそうな選手は、ジュニーニョを含め、メンバーが揃った。
     ジュニーニョは、前回故障から驚異的な復帰を見せ、代表選考の締め切り直前にゲームに復帰したが、コンディションを理由に外されてしまった。この判断は間違いだった、と言われている。元チームメイトのFWロマーリオとの相性が良いので、ロマーリオが代表に入るのなら、ジュニーニョにもチャンスが出てくる。

     それから、今年攻撃的MFで起用され、結果を残したのが元々FWで知られたロナウジーニョだ。細身で大変なテクニシャンのロナウジーニョは、FWで起用されたシドニーオリンピックの不振で評価を落としたが、ようやく適任と言えるポジションを得て、世界屈指のテクニックを発揮出来る体制が整ったようだ。

     私個人のお勧めは、スペイン、セルタ所属のエドゥーだ。セルタでは高めの右サイドに入っているが、サイドからのクロスボールや、中央に切れ込んでのパスも良い。また、得点も多く取る。かつてバルセロナでリバウドと共にハイパワーオフェンスを構成した、先述のフィーゴに似たプレーが出来る。代表にはほとんど入っていないが、是非ワールドカップで見てみたい。

     他で敢えて上げるとすれば、日本に来たことのある、“マジカル”マルセリーニョ・カリオカだ。彼はサンパウロの複数のチームを巻き込んだトラブルを起こし、行き場を失ったために日本に来た、その際にも驚異的なプレーを見せてくれた。サイズ23?の足でボールに自由自在の回転を掛け、驚異的なボールを蹴るので、彼を世界一のキッカーに推す声も少なくないのだ。また極めて球離れが早いので、ボールをキープする事はほとんどない。小さな身体でフィールド狭しと走り回り、良くディフェンスもする。問題を起こした人物とは思えないほど献身的なプレーをするのだ。

     最後にもう一人、違うタイプの選手を上げたい。バイエルン・ミュンヘン世界制覇のメンバー、パウロ・セルジオだ。元々FWだったが、欧州に来て右利きながら左サイドMFもやるようになった。ロベルト・カルロスは右利きの左サイドMFとの相性が良いので、併用するところを見てみたい。

     FWはブラジル代表が予選の間最も苦しんだポジションだった。何故なら、理由は判らないが、最良の人選がなされなかったからだ。本来FWでは無いリバウドをFWで使う事が度々だったが、最良の人選がなされれば、ブラジル代表の攻撃は極めて強い。

     先ず上げなければならないのは、ロマーリオだろう。94年の米W杯優勝のヒーローで天才、悪童と呼ばれていたが、36才になった今、それに怪物、超人、英雄が加わった。怪我を理由に代表を辞退した直後にクラブの遠征に帯同した事で、代表のルイス・フィリッペ・スコラッリ監督(以下あだ名のフィリッポーン)の怒りを買い、昨年8月以来、代表に呼ばれていない。

     歴代のブラジル代表監督にとって、ロマーリオの名は重くのしかかる存在だ。気分屋でチームの和を乱しかねない問題児だが、今も衰えない絶大な得点能力は無視し難い。昨年8月以後、代表が苦しんでいるのを後目に、国内リーグで得点を重ね、ブラジル国民の絶大な支持を得た。人格者で知られるフィリッポーンは、チームとして行動出来ない人間は代表に入れない、と言っているが、私はロマーリオを使いこなすことが、ブラジル代表監督の最も重要な仕事だと思う。
     ロマーリオの長所は何と言っても、長短のシュートの正確さとポジショニングである。小さな身体で相手ディフェンスの空きを突き、絶妙のタイミングで抜け出す。そしてGKと対峙したロマーリオは絶大な勝負強さを誇り、他の選手なら平常心を失う場面で、いとも容易くゴールを奪う。派手なフェイントはせず、GKの届かない所に蹴るか、ちょっとしたフェイントでGKをくぎ付けにして、回り込んでゴールにボールを転がすか、である。
     彼のプレーでの悪評は、運動量が少ない、守備をしないなどといったことだが、こんな短所は、彼が3点取ってしまえば、結局は関係ないことになるのだ。相手チームにしてみたら、結局彼を90分抑え込んでも、たった15秒で3点取られてしまうのだから。つまり、「ゴールを決めれば文句はないだろ」というのが、彼の基本的スタンスということなのだ。歳もとってて怪我が多いのだが、足を引きずりながらでもゴールを決めてしまう技を持っている。
     フィリッポーンはロマーリオを外せるものなら外したいと思っているようだが、高慢故に国民に好かれていなかったロマーリオは、W杯予選の代表の不振と同時期の活躍によって、絶大な支持を得た。ブラジル代表は行く先々でロマーリオコールに遭っている。サッカー協会会長やロマーリオと不仲で知られた“キング”ペレ、更にはブラジル大統領まで、ロマーリオの召集を要求している。果たして史上最強の点取り屋に、最後の大舞台は用意されているのだろうか。

     前回大会の時点で、21才ながら世界最高の選手としての評価を受けていたロナウドは、決勝戦当日に不可解な形で体調不良に陥り、それがブラジルの決勝戦の敗北の原因と言われている。
     その後のロナウドの歩んだ道は、正にイバラの道だった。

     99年秋に膝の靭帯を部分断裂して、2000年春の復帰戦で、同じ箇所を完全断裂した。2001年秋にようやく復帰したが、以後2、3試合出るごとに何処かを故障している。フィリッポーンはロナウドを信頼していて、彼が大丈夫ならロマーリオはいらないと言っているが、以下に示す質問に確信を持って答えられないだろう。

    1 ロナウドは大会開幕時に試合に出られる状態か?
    2 ロナウドは大会を通じて試合に出られる状態を維持できるのか?<
    3 ロナウドが試合に出られたとして、フィリッポーンの期待する最強のFWとして活躍できるのか?。

     スピードを取り柄とするロナウドにとっては、膝の靭帯断裂は大変なマイナスだ。また、ロナウドは前述の故障以外に、19才の時の膝の怪我が有り、私は、これがロナウドの選手生命に影を落とす可能性を聞いた事がある。25才を過ぎたら、急激に衰える可能性があるということらしい。
     もちろん、過去数え切れないほどのゴールを決めてきたロナウドだから、ゴールを決める術を体で知ってはいるだろう。だが、マイケル・ジョーダンやバリー・ボンズのように、衰える身体と向き合いながら新たなスタイルを身に付けるには、彼はまだまだ若すぎる。ロナウドがワールドカップで復活してゴールを量産する確率は、日本が優勝する確率と同じ程度だ、と私は考えている。

     彼ら以外のFWでは、まずバイエルン・ミュンヘンのエウベル。彼は代表での活躍は少ないが、欧州チャンピオンズリーグに滅法強く、欧州クラブサッカーシーンにおいて最高級のFWと言っても、過言ではない。
     またロナウドの予備として本大会出場が有力な駿足の元Jリーガー、エジウソン。98〜99シーズンのセリエA得点王で、今2001〜2002シーズンのブンデスリーガ得点王に輝くと同時に、所属するボルジア・ドルトムントをリーグ(とUEFAカップの2冠)制覇に導いたアモローゾ、後述のガラタサライ躍進の原動力となったジャルデウ、マルセリーニョ・カリオカ同様に複数のチームを巻き込んだトラブルを起こし、行き場を失って日本に来た“野獣”エジムンドなど、世界最強の誉れ高いオランダFW陣にも勝るとも劣らないFWが揃っている。
     中でもエジムンドとロマーリオは不仲と言われ、お互いに人間性に問題が有るが、過去に何度かコンビを組んだ事が有り、両方調子に乗った時は手の付けられない威力を発揮した。
     エジムンドは怪我のこともあって本大会出場の可能性は極めて低いが、是非見てみたい。

     ブラジル代表は、今年国内の若手中心のテスト試合を3試合、行った。それなりに成果はあったが、欧州にもブラジル人の無名の逸材はいるのだから、欧州所属選手を対象としたテスト試合を、欧州で開催して欲しかった。
     ブラジルサッカー協会の無能さは覚悟していたが、エドゥーやリマ、アモローゾなど、有名選手でも、テストさえされずに干された選手が、相当数いる。
     正直、ブラジル代表には懐疑的になっている。
     優勝するのか、予選リーグ敗退なのかは、やってみなければ分からない。大会を前に、ブラジル代表の可能性に絶望させられてしまう可能性も有る。しかし、良いチーム作りどころか、普通のチーム作りさえ出来れば、優勝の最右翼になると思う。

    (予想フォーメーション)

    4−4−2

    2002年W杯・ブラジル・フォーメーション予想

     現実には攻撃的MFを1人、センターバックを3人が有力だが、私はセンターバックに良い選手がいるので、2人でも問題ないと思う。

     ブラジルは準々決勝まで、真の強豪と対戦する可能性は全くない。そして、そこまで行けるのなら、その時点で予選では望むべくも無かったチームとしての機能が見込める。順当なら、実現するフランス戦が試金石だ。


現連載

過去の連載

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