打撃職人語録 山内一弘インタビュー by MB Da Kidd

    ●その1:バットの話シリーズ(2004.11.17.Wed収録)
     対談参加者:山内與侍子
     聞き手:ぼーる通信編集長 山本 智伊ことMB Da Kidd


    第1回

    第2回

    第3回

    第4回

    第5回



     第1回


    山本(以下MB):今日は、バットの話です。山内さんは現役時代、具体的には、どんな感じのバットを使っていらっしゃったのでしょうか?

    山内一弘(以下山内一):まあ、一般的に公式戦で使うのはトネリコとか、ホワイトアッシュも使うけれども、ヤチダモとかアオダモとか。ヤチダモなんかは、重いんだけれども、細い部分が、バットにボールが当たったとき、しなるわけだよね。それで復元力がついて、クイーンってなる。でもヤチダモで軟式用のバットをつくると、反発力はあるけれども、しなりがないわけ。だから、当たったらすぐピーンと戻ってっちゃう。だからそれだけに、ちょっと横に当たっちゃうと、折れやすいという欠点があるよね。

    山内與:で、昔、昭和39年にあなたがタイガースに行ったとき、ウレタンやってたんだけど、あれ、何のためにやってたの?

    山内一:これは、飛ばすためにやってるわけだよ。結局、ウレタン使った石井順一さんの圧縮バット、あれは反発力が強いわけ。トネリコ・ヤチダモというのは粘りがないわけ。だけど、芯に当たればよく飛ぶということで、長島・王がよく使っていたね。
    で、私もゲーム中、チェンジのとき、長島のところに行ってバット2本くれよ、と言ってもらってきたわけよ。まあ、もうなくなっちゃったよ、とよく言ってたけど(笑)

    山内與:えー、試合中にそんなことやってたの?(笑)

    MB:わはははは(笑)

    山内一:まあ、私がよくもらいに行くと、あの人いつも、バット出して一生懸命、コツンコツン、コツンンコツン、とその弾きを見とったよ(笑)
    で、長さは34インチだけど、グリップの先がちょっと太くなってるから、持てば3インチ、さらにそれより短くなるわな。だけど、実にバランスがよくて、バットの先が軽いから、振りやすいわけ。
    それで、宮田(征典、8時半の男と呼ばれた巨人の当時のクローザー)というピッチャーが投げてくるんだけれども、打っても打っても、バットの先っぽにばかり当たるわけ。ファウルになる。玉つきみたいなものだな。で、これはいかんな、こんなに軽いバットなら片手でいいや、ということで、実際にはしっかりスイングしているんだけれども、片手で打つつもりで、チョン、とバットを投げ出すぐらいの感覚で右手離してバット振ったら、打球が左中間スタンドに入っちゃったのよ。ホームランや。

    山内與:長島さんのバットで(笑)

    山内一:そう、それで長島に、「お前のバットよう飛ぶなぁ。ありがとうよ」と言ったわけ(笑)

    MB:わはははは(笑)

    山内一:それで広島に移籍してからの巨人戦のときだったか、ライトを守ってた山本一義(当時の広島カープの外野陣は、ライト山本一義、センター山本浩二、レフト山内一弘であった)が、「そんなにいいですかね。ちょっと使わせてくださいよ」と言ってきたので、「お前、これは2本しかないんだから、折れたら大変だ。だからダメ。使っちゃならん」と言うと、「いいですよ別に」とか言うもんだから、あいつあきらめたかなと思って次のあいつの打席を見ていると、黙って持っていきやがるんだ(苦笑)

    一同:わはははは(笑)

    山内一:で、バット折られないかな、大丈夫かな、と思って打席の山本を心配して見とったら、渡辺(秀武、1970年にはノーヒットノーランを達成、のちに日拓ホームズ→日本ハムファイターズ、大洋ホエールズ、ロッテ・オリオンズ、広島カープと移籍、1982年引退)の球をコーン、と打ったんだよ。そしたらライト上段に入っちゃったわけ。
    だから、山本が塁を回ってるときに、あとでちゃんと長島にお礼言っとけ、と言ったんだが...

    山内與:それが石井のバット?

    山内一:そうそう。で、まあ、あれは、普通の木の上に硬くなるための塗料を塗っとこう、ということでやってたわけで。

    (第2回へと続く)



     第2回


    山内一:そして、広島に移ってから(昭和43年)はじめて、バット屋にバットを注文したわけ。白木のやつを200本、という具合に。ウレタン式のやつを、熱処理で注入するということでね。
    これは確か、特許の問題で裁判中だったんだけれども、ミズノがとるか、石井がとるか、ということになってたんだよ。で、そういうことなら、とりあえずやっとけ、ということでやらしたわけ。
    それでちょっと、バットの先が重くなったんだけれども、周りの広島の選手が暗示にかかったみたいになって、ヤマさんこれよう飛びますよ、よう飛びますよ、と言うんだわ。それでみんながバットを作り出したわけ。で、オーナーもこれを聞いてな、山内ィ、俺のところは自動車屋やぞ、バット屋じゃないぞって言うんだよ(笑)

    MB:え、松田さんそんなことおっしゃったんですか?(笑)

    山内一:いや、結局さ、マツダ自動車の社員がつきっきりでいるんだもの。バット作るために(笑)

    山内與:え、バットを作るために?どこでつくったの?

    山内一:松田オーナーのところよ。鋳型を造って、200度ぐらいの熱で乾燥させたバット素材を、形を戻すために入れると、ウレタンがシューッといって入っていく。
    だけど、バットというものには筋があるやろ、黒い筋。あれはやわらかいんだって。で、白い筋は硬いんだって。だから、ナイフがほとんど入っていかない。ということで、ウレタンが付着するのは1ミリの厚さほどもなくって、大体0.5ミリぐらいじゃないかな。それでも圧縮的につくるために、みぞをつくって、ウレタンを注入していくわけよ。
    それで、飛ぶわ飛ぶわ、ということで、広島の選手も優勝するようになったのかもしれんな(笑)

    一同:わはははは(笑)

    山内與:それで、いまでもあれ、続いているのかしらね?で、どっちかが特許とって、やっているのかしら?もう決着はついているわよね?(山本註:圧縮バットは1981年に当時の下田武三コミッショナーが禁止措置をとっている。したがって、現在は行われていない)

    山内一:うん、まあ、オーナーもね、あれでよう飛ぶようになったんだから、やめちゃいかんよ、ということは言ってたね。
    で、特許のことは、言われてからやめりゃいいよ、ということになったんじゃないかな(笑)結局は石井が負けたのかな、勝ったのかな?いずれにしても決着がついたんだよね。(山本註:裁判では石井が勝って、特許を取得した)

    山内與:で、それを真似て、タイガースにいたときに...

    山内一:あれはぜんぜん違うんだよ。あれはただ塗っただけ。結局表面を固めるために、牛骨でこするわけだけれども。

    山内與:肉屋さんに行って、大きな骨をもらうのよね。

    山内一:牛の前足のところ。

    山内與:で、ちょっと真ん中あたりが細くなっているから、持つのにちょうどいいんですよ。そして、これを使って、バットをこするんですよね。

    山内一:表面を硬く締めるわけ。

    MB:ああ、じゃあ、牛骨についている成分、たとえば膠(にかわ)みたいなものがあって、それをこすりつけてバットの表面を硬くするんですか?

    山内與:そう。昔は骨の表面に脂肪とかがくっついていて。

    山内一:で、私らがこれを押さえて、ギューッとやる。バットのマークが上になったら、今度は逆側もやる。そこが特に打つところのメインだから、その部分を15センチぐらいの幅で、こするわけ。締めるわけよ。

    MB:ええ。

    山内一:で、大体10本ぐらいフリーバッティングのときに打つと、黒い部分がへこんだり、白い部分が浮いたりしてくる。するとそれをまた、牛骨で修正するわけよ。こするんだな。
    あるいはバットオイルというものもあったんだけれども、バットオイルを塗ったら、そこにセロファンを巻きつけてね。油が垂れないように。そして、バットの中にしみこむように。部屋の中に吊り下げていたこともあったよね。まあ、くさかったけどな。

    山内與:そうね。いまはいろいろな機械があるけれど、昔はなかったから...

    (第3回へと続く)



     第3回


    山内一:でさ、牛骨でこするときはけっこう手が疲れるんだよ。身体の重心をバットにのっけて、やるからさ。だから、若手にやらしとったんだけどね(笑)

    MB:ははは(笑)

    山内與:えー、でも、うちでもやったじゃん。私も手伝ったじゃん。あれタイヘンでしたよー(悲鳴)

    MB:そうですか...

    山内與:そう。動かないようにしてやらなきゃいけないから。私の力じゃダメなので、バットが動かないように私が持ってるんですよ。

    山内一:釘打ってね。針金で牛骨を台の上に固定するわけ。それで、それをバットの上からゴッシゴシ、ゴシゴシこするわけよ。

    山内與:だから私たちが関西に行ったとき、それがあまりにもタイヘンだからということで、ある科学研究所の先生がいらしたんですけど、その先生と知り合いになってから、そこへ相談に行って、何とかならないか、という話をしたんですよね。
    その先生とはそのとき、家具の足が柔らかくて傷つきやすいという話をしていたんですけど、傷つきやすいというのなら、足を硬くするためにウレタンを塗ればいいという話になって。そこで、その話が発展して、これをバットにも応用できないか、という展開になったんですよ。
    もうね、ウレタンを何回も何回もバットに塗ると、それがカチカチになるんです。普通のバットだったら、私たちが叩いても、硬いといったって、たかが知れてますよね?爪でギュッと押せば、多少の傷はつく。しかし、何回も塗ってると、そうやっても傷がつかなくなる。見た目はニスみたいになって。おおすごい、と思ったんです。
    で、ヒビがバットに入らないように研究して、バットを何本かつくった。そして、それが進歩したものを、何年かして広島に行ってから、つくったんですよ。
    だから、最初にウレタンを塗ったときは、一緒にうちで手伝ったり、あるいは科学研究所にバットを持ち込んで、いろいろとやったりとかしてましたから...

    山内一:だから、私は、カネのない広島に余計な金使わしてたかもしれんね(笑)

    山内與:でも、それでみんながホームラン打てれば、うれしいでしょう?

    山内一:まあ、ああいう、先が重いバットだと、スイングバランスの問題というのがあるから、結局は、長嶋モデルみたいに、グリップの先がちょっと太くなってるのがいいんだよね。だから、広島のバットはわりとそういうモデルになってたね。
    私らも、ワンちゃん(王貞治・現福岡ソフトバンクホークス監督兼GM)式のような、最後まできちっとした形になってて、キュッと膨らんでくるグリップエンドじゃなくて、やわらかく太くなってくるやつ。

    MB:ああ、じゃあ、王さんのバットって、グリップエンドの形がはっきりとわかるようなバットだったんですか?

    山内一:うん、そうそう。で、ちょっと当たり損なうと、小指が痛くなることがあったね。横のところ。でも、長嶋のモデルのときは、それを感じないのね。

    MB:グリップの形が滑らかだから、あまり痛みを感じない、と。

    山内一:それで、軽いバットね。

    山内與:ふうん、長嶋さんのバットは軽いんだ。

    山内一:そう、片手で飛ぶんだよ。で、センター前にポーンとはじき返したつもりが、左中間にフライが上がっていくもんだから、あの当たりじゃダメだ、捕られるだけだと思い、ファーストベースを回ってベンチに帰ろうとしたら、ホームランだ、っていうからさ。
    で、柴田(勲、言わずと知れた当時の巨人の名外野手。殿堂入り)が、ヤマさんよう飛ぶねぇ、と言うもんだから、いやぁ、実をいうとあれは長嶋からもらったバットなんだよ、と思わず言っちゃったんだ(笑)
    そうしたらさ、柴田が、「え〜、俺らにはちっともくれないのに、ヤマさんにはくれるの?」とか言ってたよ(笑)

    一同:わはははは(笑)

    山内一:いやさ、柴田が塀際まで走っていったら、途中から打球が上にあがったっていうもんだから。柴田も、よくそれについていったものだけど(笑)

    山内與:まあでも、多少は風の影響があったのかもしれないわね。そのときのことはわかんないけど(笑)

    (第4回へと続く)



     第4回


    山内一:そういう意味ではやはり、左手のフォームを、ちゃんとひとつの方向に整えないと。小指と親指が、上下のひとつのきちっとした線になるようにしないといけない。
    そのためにはやはり、自分に合ったバットを使うということが大事だよね。数多くいろいろなバットを使っているうちに、自分に合ったものというのが出てくる。それを早く見つけると、上達も早いな。それを見つけられないと、どうしても練習がだらだらになっちゃって、いつまでもバッティングはうまくならない。
    結局、自分でやらないと、バッティングはダメなんだ。私らは、はじめのところだけは教えるけれども、あとは自分自身でやっていくしかない。でも、自分に合わないひとつの方向にハマってしまうと、私らではそれを止められない。だから、私らは、最初に、どうしたいか、ということを選手に聞くんだけれども、そのときに、バットでボールの下っ面を叩いてゴロを打ちたいのか、あるいは、アッパースウィングでホームランを打ちたいのかなど、いろいろと尋ねてみるわけ。
    たとえば、私らがよく言うのは、小さい身体の非力な選手がホームランを打ちたいと言っても、凡打を重ねるだけで意味がない、と。足が速ければ、地面に打球を叩きつけて内野安打にできる可能性の方が、ずっとヒットになる確率が高いわけだから。

    MB:ああ、じゃあ、それで、オリックス・ブルーウェーヴの土井監督時代、ヘッドコーチをやられていたとき、当事1軍と2軍を行ったり来たりしていたイチロー選手とかにそういう話をされたわけですか。

    山内一:うん、まあ、そういうこともあったけれど。結局彼のスウィングは、水平から下に向かってバットを繰り出してきてる。空振りするときは、しゃくり上げているよね。ところが、その空振りを見た子供たちが、しゃくり上げるようなスウィングを真似ちゃう。目に残る印象が強いから。
    アメリカの子供たちも、ああいうスウィングを真似るのかな?(笑)

    山内與:でも、イチローは、上手にバットにボールを乗せてるわよね?ちょーん、という感じで。

    山内一:そう。彼のもうひとつの大きな特徴は、動きながらのミートがうまいんだよ。だから、頭がひとつかふたつぐらい動いても、うまくタイミングをあわせられるんだ。で、強振するのは、インコースに球が来たときだけ。打球は、ジャストミートばっかり。ちょん、とバットのヘッドを利かせる、つまり、バットをちょっと起こして、バットに当てているんだよね。
    頭と前足、左バッターだったら右足だけど、これらが一本の線になるようだったら、松井秀喜のような回転スウィングになる。でも、そうすると、どうしても一歩、遅れてしまうので、アウトになってしまう。しかしイチローは、身体をスウェース(移動)させながら、ちょん、とミートするようなバッティングをするので、内野安打になるわけ。

    MB:いつも彼を見ていると、もう、1塁に向かって走りながら打っている、という感じですよね?

    山内一:それは、左打者だからできるんだよ。右打者はできない。ちょん、とあわせるようなバッティングは、変化球を打つときなんかにはよくやるけれども。ちょうど、ボクシングでジャブを打つような感じかな。
    まあ、そういうのは、自分の興味が出たら、やればいいんで。それで結果が出たら、もっと興味がわいて、どんどんおもしろくなるから、ハマってくるよね。結果が出なければ、いくらいい話をしても、興味がわかないから。たとえばこっちが、『10日後に結果が出るよ』と言っても、すぐ結果がほしいものだから、選手は勝手にやり方を変えちゃう。
    ちょん、と当てることでいえば、インコースの球をドラックバントするのは難しいよね。アウトコースの球だったら、ちょん、と転がすことはできるけれども。

    (第5回へと続く)


     第5回


    MB:アウトコースの球といえば、下手投げのピッチャーとか、横手投げのピッチャーの球についてはどうですかね?杉浦さん(山内のオリオンズ在籍時は南海ホークスのエース。下手投げ)なんかは?

    山内一:杉浦さんのフォームは、オーソドックスだよね。そして、球が下からピュッとくる感じ。広島にいた長谷川良平さんなんかも、そんな感じだね。手首のスナップで、投げてくる。身体ももちろん使っているけれども。

    山内與:ソフトボールを投げるときのような感じかしらね。ああやって、下手から投げてくるような。

    山内一:ああいう投げ方に近いのは、秋山(登、大洋ホエールズの元エース)。手を大きく回して、下からピュッと投げてくる。

    MB:秋山さんの球っていうのは、どういう感じだったんですかね?

    山内一:真っ直ぐの球が、途中で、キュッと曲がってくる感じかな。スライダー軌道になっててね。

    MB:いわゆる”真っスラ”という感じですか?いまでいう、カットファストボールみたいな。日本ではよくカットボールとか言ってますけど。

    山内一:カットファストボールって何?

    MB:いま松井秀喜選手のヤンキースでの同僚のクローザー、マリアーノ・リヴェラみたいなピッチャーが投げるやつなんですけど、まっすぐの軌道で来て、途中からピュッと曲がる、みたいな。いまは巨人の上原投手が取り組んでいるみたいですけど。

    山内一:それって、シュート(右打席方向へ曲がる)するの、それともスライダー(左打席方向へ曲がる)するの?
    どっちなのかな?

    MB:どっちに曲がるのかはわかんないんですけどね。とにかく、曲がる真っ直ぐに取り組んでは、いるようですよ。

    山内一:そうか。ところで、どっちに行くかわかんない、ということでいえば、ナックルなんかがそうだよな。

    MB:あれって、野手投げみたいな感じで。指の爪でボールをおさえて、ボールを手からはなすときにポン、とはじくんですよね?

    山内一:腕から、そのまま押し出すような感じでさ。回転がないんだよね。昔、バッキーという腕の長いピッチャーがいたやろ(言わずと知れた阪神タイガースの史上最強外国人右腕)。あいつが、ガーッという、バッターに食らいつくような雰囲気でナックルを投げててさ。顔の迫力はあるんだけど、球に勢いがない(笑)

    MB:あの球って、捕るの難しいらしいですよね?いま、ボストン・レッドソックスに、ウェイクフィールドっていうナックルボーラーがいるんですけど、彼の球はすっごく捕りづらいらしくって。彼の球を受けているキャッチャーがミラベリっていうんですけど、ミラベリのキャッチャーミットは、ものすごくでかいんですよ。中華鍋とおんなじぐらいの大きさ(笑)

    山内與:えー、そんなにでかいの(笑)

    MB:まあ、いちおう規格には合っているから、メジャーの公式戦でも使っているんでしょうけど(笑)

    山内一:ちなみにバッキーが投げたときに受けていたのは、谷本(稔、大映スターズ→大毎オリオンズ→東京オリオンズ→阪神タイガース)というキャッチャーでさ。当事のタイガースの監督が藤本定義さんで、谷本はオリオンズの控えキャッチャーだったんだけど、それをタイガースに引っ張ってきたのよ。
    それがさ、彼は普段、マスクとかレガースとかしていないんだけど、バッキーがものすごい顔をして投げるナックルがどこに来るか、わかんないわけよ。で、顔に当たってさ。アイタタタ、ということで絆創膏を貼っていたけれど、一度そういうことがあってから、それ以来完全武装よ(笑)

    山内與:えー、当たってもそれだけで大丈夫だったの?

    山内一:まあ、ナックルは勢いがないからね。ただ、バッキーがいつナックルを放るかわかんないし、しかも、ナックルはどこに行くかわかんないから、谷本はいつも完全武装(笑)

    MB:球がひょろひょろしてるんですよね。硬球だから、当たれば、痛いは痛いんですけど、当たっても、球に威力がないから、それほどダメージはないわけで。だから絆創膏で済んでいる、と(笑)

    山内一:ミートしにくいだけ(笑)
    で、いまのアメリカの選手は、ホームランバッターと言われるのが多くて。パワーがあるのばかりじゃないんだろうけれども、こういう、ミートしにくい球がいいんだろうね。足が速ければ、内野安打が増えるし。

    山内與:そういえば、イチロー選手のヒット262本のうち、内野安打が確か、50本近くあったわよね。

    山内一:10本しか内野安打がない、ということだったら、ぜんぜん違うからなぁ。
    昔、巨人にいたとき、柴田、松本(匡史、青い稲妻と呼ばれ、怖れられた快足選手)といった選手に、いかにファーストベースまで一生懸命走るか、そして内野安打が重要か、という話はしたことあるんだけれども。
    ただ、打率が.290とか、3割を目前にしているとき、こういう内野安打は重要なんだ、と、数字を具体的に見せてやらないと、選手は納得しないからなぁ。
    さて、今日はこれでもう終わろうか。みなさんお疲れさん。

    (終了)


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