Bay Area Watch 20XX by 小女子

    第6回 「NHLを楽しむ〜その1:オフ・シーズンT ハード・キャップとFAと選手大移動」

    第7回 「NHLを楽しむ〜その2:オフ・シーズンU トレーニング・キャンプとプレ・シーズン・ゲーム」

    第8回 「NHLを楽しむ〜その3:オフ・シーズンV レギュラーシーズン開幕」

    第9回 「スポーツ三昧生活・その1 ラジオでスポーツ 試合編」

    第10回 「スポーツ三昧生活・その2 ラジオでスポーツ トーク・ショウ」



     第6回 「NHLを楽しむ〜その1:オフ・シーズンT ハード・キャップとFAと選手大移動」


     各学校が夏休みに入り気候もよくなり、スポーツ観戦や行うスポーツも盛んになってきているBay Areaから、こんにちわ。


     前回の連載でも少し触れましたが、7月22日にNHLとその選手会NHLPAが新しい労使協(CBA)に合意して、北米プロ・スポーツ始まって以来の1シーズン丸ごとキャンセルという最悪の事態を招いたロックアウトが終了しました。
     そこで、NHL新時代を楽しもう企画を勝手にスタートです。
     今回は、オフ・シーズンの楽しみの一つ、選手の移動についてです。


     NHLのこのオフの選手の移動は、今まで見たこともないほど活発です。ESPNやCBSなどの各メディアの選手移動欄を見ると、毎日のように選手の所属チームの名前が変わっていて、驚きがいっぱいです。
     何故こんな前代未聞の選手の大移動が起こっているのか?


     一番の原因は、今回合意されたCBAの内容にあります。このロックアウトで最大の焦点だった、チーム年俸に上限を与えるサラリー・キャップ、ハード・キャップが導入されたのです。新CBAでは、さらにチーム年俸の下限、一選手の年俸の上限なども盛り込まれています。
     ロックアウト以前は、チームは選手への支払いは額に制限がなく、裕福なチーム大物選手と沢山契約していました。またスモール・マーケットやお金に余裕がないチームは、大物選手と縁がないという極端な状況で、さらにその差が広がりつつありました。
     例えとして、新CBA以前の最後の2003−04年シーズンのオープニング時のものをあげます。最高額のDetroit Red Wingsは7,783万ドルで、誰でも知っているようなFWが何人もいて一つのラインを組み、有名DF達がコンビを組んでいました。
     一方、最低額のNashville Predatorsは2,317万ドルで、カジュアル・ファンが知っているという選手は一人いるかいないかという状況でした。


     今回のCBAでは、下限2,150万ドル、上限3,900万ドル(契約ボーナス、出来高ボーナスも含む)、さらに一選手の年俸の上限が780万ドル、下限は45万ドル(旧CBAから大幅アップ)になりました。
     そこで、チームはキャップ内に年俸を納めようと、高額選手のトレードやFAによる放出が相次いでいるのです。さらに、大物選手達が以前は見向きもしなかったスモール・マーケットや歴史の浅いチームと契約しはじめています。


     もう一つの原因は、FA対象選手が多いことです。これには二つ理由があり、シーズンが丸ごとなかったことによる2年分のFAと、新CBAによるFA年齢の引き下げです。
     以前は31歳からのFAが、今回29歳(あるいは8年のNHL経験)まで年齢が引き下げられ、突然FAにという選手が何人も出てきています。
     いままでのオフシーズンなら、多くても1チーム3選手程度のFAが、今回は4、5人はざらで、下手をしたら10人近くがFAとなってるチームもあります。ちなみにNHLのロースター枠は23人で、試合は20人ベンチに入ります。10人といったら、ほとんど半分で、全員他のチームと契約したら、もうこれは別のチームのように見えることでしょう。


     注意)ここでのFAは制限無しFAの話のみ。制限付きFAを除く。


     オフのFAやトレードによる選手の移動は、来たるシーズンに向けて、各チームがどう変わるのかを想像するのに役立ちます。また、今までにない移動が起こり、ハード・キャップの導入の目的の一つ、競争の公平化と言うものがこれで起こるのかどうかも、新しいNHLのシーズンを見る楽しみとなることでしょう。


     ところで、Bay AreaのチームSan Jose Sharksは、この選手大移動にどう参加していたのかを話しますと。なんと、まったく参加していませんでした。正確に言うと、大物FWとDFそれぞれにFAの交渉をしていたのですが、どちらにも振られてしまったのでした。その後は、リーグで一番能天気なんじゃないかと思われるGMが、以前どおりの若者中心のチームでなんら問題ないと、さっさと残りの制限付きのFA選手との契約に切り替えてしまったのです。
     前代未聞の選手大移動で、憧れの大物FA選手と契約っと思ってワクワクしていたのですが、ちょっとだけ残念でした。


     次回は、若者達があつまるルーキー・トーナメントとNHLのキャンプについての話をしようと思います。




     第7回 「NHLを楽しむ〜その2:オフ・シーズンU トレーニング・キャンプとプレ・シーズン・ゲーム」


     朝晩がちょっとだけ冷えてきて、周りがすっかりフットボール・シーズンなBay Areaから、すっかりホッケー・モードに入った小女子です、こんにちわ。
     前回から勝手にはじまった、日本でTV放送があるのかまったくわからないNHLを楽しもう企画の第二弾です。今回は、オフ・シーズンの最大の楽しみトレーニング・キャンプとプレ・シーズンの試合についてです。


     FAやトレードによるシーズン前に行われる各チームの選手の移動がひと段落すると、選手達が所属チームの所在地に集まりだします。そしてトレーニング・キャンプに入り、レギュラー・シーズンが目前に感じられるプレ・シーズンの試合が行われます。
     NHLのトレーニング・キャンプは、NHLの管理下にあるトレーニング・キャンプ(あるいはベテラン・キャンプとも呼ばれる)と、各チームが主催するルーキー・キャンプ(あるいはプロスペクト・キャンプ)の2つの段階があります。
     また、NHLのキャンプは、アイス・ホッケー自体が室内競技で天候に左右されないという理由などがあり、暖かい地域にいくつものチームが集まって行うMLBのトレーニング・キャンプとは異なり、チームの所在地で行われます。
     チームは通常、レギュラー・シーズンの正式な試合を行う施設(多くがNBAなど他の室内プロ・スポーツや音楽イベントなども行う)と練習専用の施設(アマチュア・リーグやフィギュアー・スケート・クラブも使用)を持っています。トレーニング・キャンプは、その練習専用施設で行われ、通常無料で一般に開放されています。
     そのために、地元の熱心なファンは、MLBのようにホテルやレンタカー、飛行機の手配をせずに、気軽に足を運ぶことが出来るのできます。


     ルーキー・キャンプは、ドラフト後1,2年目の選手や、北米経験の浅い選手、マイナー・リーグの選手、チームから招待されるトライ・アウトの選手などが参加します。半分ぐらいがドラフトされているものの、チームとはまだプロ・契約をしていない選手によって構成されていて、チームが招待するという形を取っています。日程も各チームで違います。
     チームのシステム練習やチーム内の練習試合によって、チーム・組織内の若手がどれくらいのレベルにいるかやチェックしたり、トライアウトでよさそうな選手との契約を結ぶかどうかを決めます。そしてチームが気になる選手は、ベテラン・キャンプにも引き続き参加します。
     昨年日本人でドラフトされた福藤豊も、去年に引き続きこのレベルのキャンプから参加していました。


     ルーキー・キャンプが終わるとベテラン・キャンプに入るのですが、幾つかのチームはこの段階で、4、5チーム共同で、1地域で1週間程度の日程でトーナメント方式の試合を行います。カナダとアメリカの東海岸の5チーム、アメリカ中部の5チーム、アメリカ西海岸の4チームが現在ルーキー・トーナメントやプロスペクト・トーナメントと呼ばれるこのようなイベントを行っているのです。練習試合よりも本格的な試合の方が選手のレベルがわかるとのことではじまったこのようなイベントは、安いチケット代で一般にも公開されています。開催地以外のチーム同士の試合では、観客よりもチームのフロントやスカウト、コーチ陣の方が観客席に沢山いるという不思議なイベントです。
     今年は、幸運にもこのイベントがSan Joseで開催されて、LA Kingsのプロスペクトである日本人ゴーリーの福藤豊のプレーを、私も見ることができました。ルーキー・トーナメントは、普段はアメリカの西海岸にいると見ることの出来ない他所のチームのプロスペクトを、一度に安く見られる楽しくてうれしいイベントなのです。
     ベテラン・キャンプは、NHL選手が参加する本格的なものです。チームのシステム練習、チーム内練習試合が行われます。NHLのロースター枠は23人で、このキャンプは通常2倍から3倍の人数から始まります。そして、レギュラー・シーズンが始まるまでに23人に絞っていきます。カットされた選手の多くは、チームのファーム組織のマイナー・リーグのチームや、20歳前なら所属しているカナダのジュニア・チームなどに戻されます。


     アイス・ホッケーでは、フォワードの3人の組合せとディフェンスの2人の組合せがいかに息が合うかを見つけるかが大切です。キャンプでは、この組合せがいくつか試されます。ファンの間では、今年は誰と誰が組むのか?というのがこの時期に大きな話題になるのです。
     そしてキャンプの終盤から、他のチームとのプレ・シーズンの試合が始まります。


     プレ・シーズンの試合は、レギュラー選手のレギュラー・シーズンに向けての調整という目的と若手選手のロースター枠獲得競争という目的の二つがあります。
     初めのうちは、まだ残っている若手選手が半分ぐらい登場して、レギュラーの選手は交代で試合に出ます。チーム内練習試合よりも、正式な試合形式の方が選手をよりきちんと評価できるので、試合後にさらにロースター枠に収めるカットが続きます。
     プレ・シーズンも終盤になると、ほとんどレギュラー・シーズンの選手で構成されて今年のチームの特徴がわかるようになり、ファンとしては期待が膨らみます。
     トレーニング・キャンプとプレ・シーズンの試合は、FAやトレードなどの選手の移動と違って生のNHLのホッケーが見られるようになります。そして、今年はどうなるのかなといろいろ想像したり、生のプレーを見ていよいよシーズンが始まるぞ!とワクワクする楽しい時期なのでした。




     第8回 「NHLを楽しむ〜その3:オフ・シーズンV レギュラーシーズン開幕」


     10月の5日に、約1年と4ヶ月ぶりに1シーズンを労使問題で潰したNHLのシーズンが始まりました。4つの北米メジャー・スポーツがエクスパンションの時代になって初めて、リーグ全30チーム一斉の15試合が行われた一日でした。
     朝方霧が出るようになり、木の葉が落ちるようになってすこし秋っぽくなったBay Areaでも、一週間遅れの10月12日に、やっとホーム・オープナーを迎えました。
     San Joseのダウンタウンは、去年は見られなかった活気を取り戻しています。アリーナへと向かうのがウキウキ、ドキドキしてきます。
     アリーナに入って、鮫の頭を模ったゲートから選手達が登場した時には胸がはち切れそうなぐらいでした。NHLのホッケーが、やっとBay Areaに戻ってきました。


     ところで、やっと始まったNHL、新時代に入ったと言われています。
     いったい、何が新しいのでしょうか?何が変わったのでしょうか?
     今回は、変わったり新しくなった部分を簡単に紹介します。



    ■新経済システム

    ・サラリー・キャップ
     全選手の年俸総額が、リーグの収入の定めた割合を定める
    (今回は、リーグのホッケー関係総収入の54%)
     チーム・年俸総額上限下限、選手年俸上限下限、ボーナスの制限、ルーキー・キャップの制限

    ・エスクロウ・ファンドの導入
     選手は、給与支払いのたびに定められた割合額をプールする

    ・収入分配
     チームの総収入がリーグ下位15チームでリーグが定める規定のチームは、リーグTV収入、プレイオフ収入や上位チームのプール金などから分配あり



    ■試合システム

    ・スケジュール変更
     ファンのライバル意識をより盛り上げるために、ディビジョン内の試合を増加(カンファレンスをまたぐ試合の削減)

    ・ルール変更
     アイス上のレイアウト変更(オフェンス・ゾーン拡大、ゴーリー進入禁止エリア導入)
     2ライン・パスが可能
     タグ・アップ・オフサイド再導入
     アイシング後のラインチェンジの禁止
     ディレイ・オブ・ゲームの対象選手の拡大(全選手対象)

    ・オブストラクション(プレー妨害のペナルティー)に対する新基準

    ・ゴーリー防具の規定変更
    ・シュート・アウトの導入
     タイの試合を廃止し、レギュラー・シーズンも勝ち負けを必ずつける
     5分のオーバータイム後に、シュート・アウト(サッカーのPKのようなもの)を実施



    ■FA、ドラフト、調停など

    ・FA可能な年数、年俸額の変更

    ・ドラフト順位縮小

    ・チームからの年俸調停持ちかけも可能に

    ・選手の調停可能年数変更

    ・ウェーバー・ドラフトの廃止



    ■パフォーマンスを向上させる目的の薬物に対するポリシー

     以前はMLB以上に禁止薬物に対する対策がなかったものが登場
     禁止リストをつくり検査の導入



    ■メディア

    ・メディア・アクセス・ポリシー変更
     試合中のコーチ陣へのインタビューを認める
     試合直前のドレッシング・ルームのTVカメラを認める
     試合中の選手のマイク装着を認める

    ・アメリカ全国放送局変更
     北米最強のスポーツ・ネットワークESPNからアメリカ最大のケーブル会社でComcast傘下のケーブル局OLNおよび、4大ネットワークの一つで地上波放送のNBCと、アメリカの全国放送の新契約



    ■リーグ・ロゴの変更
     80年続いた、黒字にオレンジの文字の楯のロゴの、左あがりのNHLの文字を右上がりにし、さらに文字の色をチャンピオンの象徴スタンレー・カップの色である銀色に変更



     変更部分をざっとあげただけで、埋まってしまいましたね。
     次回は、この中で試合観戦をしていた際に気がつくほど影響があった部分について、話したいとおもいます。




     第9回 「スポーツ三昧生活・その1 ラジオでスポーツ 試合編」


     秋です。サッカーのSan Jose Earthquakesは、レギュラー・シーズンをダントツの成績で終えたのに、プレイ・オフでは、あっさり最初のラウンドで負けてしまいました。フットボールは、Oakland RaidersもSan Francisco 49ersも、今季も既にダメダメです。一番期待されていたアイス・ホッケーのSan Jose Sharksは、もたついています。ここ数年まったく期待されていなかったバスケットボールのGolden State Warriorsは、ひょっとして今年こそプレイ・オフに行けるのかしら?と思わせるくらい良いスタートです。
     全国仮装大会なハロウィーンが終わり、ホリデー・モードに本格的に突入しはじめたBay Areaから、こんにちわ。


     先月、Oakland Ahtleticsのラジオ実況アナウンサーが亡くなり、悲しみの一ヶ月を送っていたのですが、そこでラジオがスポーツ三昧生活に欠かせない存在だと気がつきました。
     ということで、気まぐれな「Bay Area Watch」、突然はじまる不定期シリーズ「スポーツ三昧生活」!
     第一弾として、今回はラジオとスポーツの試合の話です。


     スポーツ三昧生活に必要なものは、”見る”の生観戦とテレビ、”聞く”のラジオとインターネット、”読む”の新聞、雑誌、本そしてインターネットがあります。ラジオは、実際に見る生観戦やTV放送に分がなさそうだし、情報の幅広さと速さでもインターネットで十分なのでは?と思われそうですが、そんなことありません。ラジオは、重要なのです。


     まず、試合の実況者と解説者はチームの一員で、選手同様ファンには身近だということがあります。
     北米では、通常地元のテレビとラジオの実況者と解説者は、TV局やラジオ局ではなくてチームと契約します。ロードの移動もチームと共に行っていたり、選手や監督、あるいはフロント・オフィスを近い存在でチーム事情に精通しています。インタビューなども、地元新聞や全国メディアとは違うアプローチをおこなっています。
     さらに、トレードやフリー・エージェントなどで毎年のように入れ替わる選手や監督比べて、アナウンサーたちは長く残っている場合が多く、チームの歴史を一番している存在でもあります。オーナーよりも長い年月チームに所属しているような名物アナウンサーも、珍しくありません。


     また、全試合放送する唯一のメディアは、ラジオだけ。
     チームの一員と言う立場ではテレビと変わりませんが、全試合を伝えるという部分ではラジオが一番です。
     試合数が少ないNFLは例外として、通常地元テレビ局はチームの全試合を放送しません。全国放送のケーブルや地上波の放送が入る場合、ラジオのブラックアウト(放送阻止)権利存在、視聴率の影響などの理由があります。
     一方、プレイ・オフやチャンピオン・シップの試合は、テレビは全国放送に移ります。ここでもラジオは、全試合を地元のチームの放送が行います。応援しているチームがプレイ・オフを勝ち進んでいたら、中立な立場な全国放送のテレビの音声より、やっぱりチームの放送がいい!と、音声だけをラジオにするような人々もいるのです。
     チームの試合を全部追いかけたいというような濃いファンにとっては、ラジオが一番で、そのようなファンを作るのもラジオの存在が大きいのです。


     さらに、メジャー・スポーツのようにTV放送が得られない、マイナーなスポーツをカバーするのはラジオです。高校のバスケットボールやフットボール、大学スポーツ全般、マイナー・リーグや独立リーグなどの試合を、直接観戦できない場合にラジオがあります。ラジオは、あらゆるレベルのあらゆるスポーツの放送を手がけているのです。
     メジャー・スポーツのアナウンサー達は、このようなマイナーなラジオ実況で経験を積み重ねていることが多いです。


     そのほかの考えられるラジオの利点としては、ラジオ自体の手軽さです。仕事中にテレビは駄目でもラジオは聞くことが出来る職種は多くあります。また、大都市以外は車社会のアメリカでは、車でラジオを聴くのはまだまだ一般的な習慣なのです。
     さらに実際の試合会場でラジオを聴きながら観戦する人々もいます。生観戦、実は何が起きているのかは判り難い場合があり、ラジオがあると試合をより深く楽しめるのです。


     また、最近では、遠く離れた地域の放送が視聴できる衛星ラジオが注目されています。
     ラジオは無料が当たり前で、視聴に独自のラジオが必要で視聴が有料の衛星ラジオが上手くいくのか?と疑問の声がありましたが、ケーブル・テレビがそうであったように、なかなか順調のようです。衛星ラジオのメイン・コンテンツは、なんといってもスポーツで、NFLやMLBなどの4大スポーツやNASCAR、大学スポーツのNCAAなどが、続々と長期契約を結んでいます。他にも各車メーカーも次々に衛星ラジオをオプションで取り付けられるようにしています。
     数年前に、San Jose Sharksのラジオ実況者が、試合に向かう途中で交通事故にあった時に、ファンはチームの成績よりも彼の様態を心配しました。また、今回のAthelticsのラジオ実況者の死に対して、地元のメディア、プロ・チームがこぞって追悼企画を行いました。毎回試合を届けるラジオのアナウンサー達は、ファンにとっては選手以上に近い存在なのが伺えます。


     聞くという行為から、自分自身の経験や記憶のなかから頭の中で映像を作らなければならないラジオの試合放送は、なかなか大変です。けれども、チームの濃いファンを作り、つなぎとめておくには、やっぱりラジオはまだまだ重要なメディアなのです。そして、スポーツを楽しむ生活にも無くてはならないものなのです。


     次回は、スポーツとラジオの試合以外の部分、スポーツ専門ラジオ局とスポーツ・トーク番組や、最近たけのこのようにボンボン現れているポッドキャストなどのネット上のスポーツ・トーク番組の話です。




     第10回 「スポーツ三昧生活・その2 ラジオでスポーツ トーク・ショウ」


     2005年もすぐに終わりです。
     NFLの2チームは相変わらずさっぱりで、Golden State Warriorsもちょっとつまづきはじめました。けれどもほかでは、大きな動きがありました。San Jose Earthquakesは、長くファンが抵抗してきましたが、オーナーとリーグの意向どおりに、サッカー専用スタジアムを用意しているTexas州のHoustonへ移転が決定しました。San Jose Sharksは、NHL全体を驚かせるトレードで東海岸の大スター選手を獲得し、勢いを少し付けています。オフのMLBの2チーム、Oakland Athleticsは、めずらしくFAの投手を契約、MLBの問題児の打者をトレードで獲得で、相変わらず周囲をあっといわせることをしています。San Francisco Giantsは、シーズン後半からのチーム建て直しをさらに進めています。
     ホリデー・シーズンで、建物の装飾が過激になってきたBay Areaから、こんにちわ。
     前回から勝手にはじまっている「スポーツ三昧生活」の2回目で、ラジオの続きです。今回は、試合以外のラジオについてです。


     ラジオは、スポーツ三昧生活に欠かせません。でも、ラジオで試合以外に、何か聞くものがあるのでしょうか?
     あります。それは、スポーツ・トークの番組です。


     ここ10年近くの間、アメリカのラジオの世界で増え続けているコンテンツが、スポーツです。スポーツを扱うラジオ局が約13,000。そして、スポーツだけを1日中扱うスポーツ専門局が、なんと現在約470もあるのです。
     ラジオ局が約470もあるのは、多くが地域ごとに地域の話題を放送する局だからです。New YorkならNew Yorkにあるチームや選手の話題、San FranciscoならBay Areaのチームや選手の話題が中心なのです。
     また、スポーツ専門ラジオ局とは、一日中24時間、一週間中7日、スポーツに関する番組を提供しているラジオ局です。内容は、試合、スポーツ・ニュース、スポーツ・トークがあります。その中心となるのが、試合そのもの中継ではなく、試合の結果やその他スポーツの周りで起こる出来事について話をするスポーツ・トークの番組なのです。


     スポーツ・トークの内容は、ホストが現在起こっているスポーツに関する事柄にたいして意見を言うもの、スポーツに関するゲストとの会話、リスナーからの電話にホストが受け答えをするコール・インが主です。
     スポーツ・トークが人気なのは、情報が入ると直ぐにその背景が語られ、そしてリスナーも反応できるからです。たとえば、地元チームで大きなトレードがあったとします。まずラジオはニュースとして伝えます。このような情報は、多くの場合、ラジオが一番早いメディアです。 そして、チームのGM、本人、さらにはチーム担当の新聞記者などにコンタクトをとりラジオで放送します。今は携帯電話が普及して、本当に直ぐにいろいろな人の話が流されます。そして、リスナーが電話をしてきて意見を交し合うのです。ここでは、他のメディアでは制限があるような話や意見がでたりします。


     スポーツ・トークを中心とするスポーツ専門局が増えている背景は、いろいろあります。ケーブルTVや衛星放送などの発達により、より多くの試合を見ることが可能になていること。ESPNの登場による、試合そのものではなく、スポーツの周りで起こることを取り上げるニュース番組とそれをもとにした専門家による意見と討論の番組の定着。Fox SportsやComcastなどのTV局による、チームごと地域ごとの試合やトーク番組の放送の増加。ラジオの世界での、ホストとリスナーが電話で直接話し合いが出来るコール・インというトーク・ショウの浸透などです。
     そして、最近では、ポッドキャスティングのように提供する側の技術も進み、個人でもトーク番組を簡単にはじめられるようになりました。また、聴く方法も、i-Podなどの携帯デジタル・メディア・プレイヤーや衛星ラジオの登場により多様になっています。全国区から地域ごとの話題、スポーツ別あるいはチーム別、さらに好きなホストなど、さまざまなスポーツ・トークの番組の中から好きなものを選んで、いつでもどこでも聞かれるようになってきているのです。


     ラジオは、何かをしながらでも聞くことが出来きます。スポーツのトーク・番組が多彩になってきました。そして、音楽好きの人たちが、好みの音楽をいろいろな方法で取り入れバックグラウンドで流すように、スポーツ好きの人たちは、好みのスポーツ・トークをバック・グラウンドにして、一日中スポーツに浸っているのでした。


     ラジオの世界で初めて、ホッケーを24時間あつかう局が先月衛星ラジオに登場し、今までにないホッケー・トークが聞かれるようになりました。この冬は、私は、スポーツ三昧からホッケー三昧に変わりつつあります。
     ということで、冬季オリンピックが近づいているのこともあり、来月はアイス・ホッケーの話に戻ります。


     第11回〜はこちら


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