ホットタイガース by じん

    第1回 2001シーズンオフの監督交代劇

    第2回 2002シーズン、オールスターファン投票

    第3回 2002シーズンの息切れタイガースとお笑い芸人

    第4回 2002シーズン、後半スタート

    第5回 かつてのドラ1たちの現状(2002シーズン後半)



     第1回 2001シーズンオフの監督交代劇


     今年のタイガースを語る上で、避けて通れないのは、昨年末の監督交代劇でしょう。何人かの監督候補が新聞辞令の形で名前が出ましたが、結果的に最も現実味がないと思われた星野さんで決定するという、意外な展開で決着しました。

     監督が代われば、当然チームの雰囲気、戦力も変わります。しかし、チームのベクトルは監督が代わっても不変であるべきではないかと思います。補強ひとつをとっても、タイガースはチームとしての方針が一貫していないということはよく指摘されるところです。 タイガースの場合、監督が代わると、それまでの流れが断ち切られ、また新しい監督が1からチームを作りなおすという歴史が繰り返されてきました。いや、ひどいときは同じ監督でも一年毎に方針が変わっていたこともあったかも。

     野村前監督の功績は、タイガースが強くなるためのひとつの方向性を示してくれたことではないかと思います。もちろん、それは結果として、この3年間では実りませんでしたが、決して無駄な年月ではなかったと信じたいというのが正直なところです。
     だからこそ、例の問題で野村さんの去就が取り沙汰されたときは、ヤキモキしました。タイガースの歴史を振り返ると、ひとつの道筋が見えてきたいま、監督が変わることは得策ではないという気がしたからです。

     例えば、次期監督候補の一人として挙げられた岡田ニ軍監督の場合、野村監督1年目から、野村野球に対しては食わず嫌いなところがあるように感じていました。実際にどうなのかは当事者にしかわからないことですが、少なくとも野村野球は継承しないだろうなと思います。もちろん、岡田野球を構築するのもいいでしょう。でも、せっかく野村さんが作ってきたものを1からやり直しってのは、3年間待った身としては辛いものがあります。スワローズの若松監督のように、野村野球で基礎ができたところに自分なりの味付けをするというのが理想でしょう。いまのタイガース、まだそこまでの土台はできていないというのが、結局、4年連続最下位という結果なのだと思います。

     そういう意味で、星野さんはベターな選択だったんじゃないでしょうか。同じように名前の出た仰木さんと違い、敵将としてですがタイガースのことをずっと見ていたということもあります。また、ドラゴンズ時代の星野監督と野村前監督との間柄を思い起こしても、また他チームの監督なのにそこまで言うか?と正直に思うくらいのタイガースへ向けたコメントを思い起こしても、3年間の野村野球の流れを尊重した上で、星野流を打ち出せる監督であることは間違いないでしょう。
     とりあえず、キャンプ、オープン戦を通じては期待通りです。これがどこまで根付いていくかが問題ですね。タイガースを取り巻くマスコミやファンは堪え性がないですから・・・。(笑)



     第2回 2002シーズン、オールスターファン投票


     オールスターのファン投票の第1回目の中間発表で、タイガースの選手が11部門中8部門でトップに立ちました。そのことについては、賛否両論、いろいろな意見がネット上でも交わされています。
     でも、ちょっと冷静になって考えてみれば、あくまでも「中間発表」。今年の勢いから考えても、タイガースの選手の票が伸びるのは別に不思議ではありませんが、いずれにしても、今回の発表でいろいろと言うのは時期尚早。何よりも「中間発表」=「ファン投票選出」とならないことは、これまでもあったことですし、最終的にはそれなりのメンバーが選出されるんじゃないでしょうか。

     と、いろいろと言ってますが、個人的にファン投票に関しては、どこか冷めた目で見ています。きっかけは数年前のファン投票用紙。タイガースのノミネート選手として、すでに、春先に退団帰国してしまったグレン&クールボーの名前が載っていたことからです。要はいまのシステムは、「球団がノミネートした選手に対しての投票」になってしまっていて、「ファン投票」とは呼べないのではないか?という疑問が頭から離れないのです。
     もちろん、球団によるノミネート選手は最大公約数的にファンに選ばれる可能性の高い選手であるでしょうし、そうあるべきですが、それでも所属球団の選手層による差やレギュラーの固定していないポジション、ノミネートの時期の問題があるための実際の成績との乖離等、いろいろと問題はあります。
     例えば、現在、遊撃手の1位の藤本選手。確かに成績的には「?」がつきます。何より、タイガース内でもレギュラーを掴んでいない選手です。そういう意味で、何がなんでもタイガースの選手に投票するとしたら、沖原選手でも田中選手でも構わないのですが、圧倒的に藤本選手に投票されています。この差は「ノミネートされたか、されていないか」の違いが大きいはずです。これはチーム内だけではなく、球団間にも当てはまる話です。
     ノミネート選手が絶対有利なこのシステムは、まだ「本当のファン投票」とは言えないと思います。

     それでも、今年の投票用紙は若干の改善が施されているようです。
     例年よりも大きな用紙だったので、あれ?と思ったのですが、投票のハガキ部分とは別に球団別の選手名リストがついています。ノミネート選手が有利なことには間違いはありませんが、それでも一般の投票者にとって多少選択肢が広がったということは言えると思います。
     さらに、これまでノミネート選手の件に関しては、非常に不透明なところがあったのですが、今年は選手リストの下に、きちんと説明が載っていました。

    「※ノミネート選手、選手リストは、3月27日現在の出場選手登録をもとに、各球団から選出された選手です。」
    「※5月31日までに支配下選手登録された選手に出場資格があります。」

     こうして基準をはっきり書いてもらうと、矛盾があるにせよ、ある程度納得することができますし、実際の投票もそれを認識してできますよね。これが実際の投票にどう影響していくのでしょう?将来的に、ファン投票がどうなっていくのかを考える上でも、結果に興味が湧いてきます。



     第3回 2002シーズンの息切れタイガースとお笑い芸人


     6月に入って、タイガースも息切れ状態。非常に厳しい試合が続いています。内容的には惜しい試合が多く、再度歯車がかみ合ってくれば、まだまだ挽回可能と思うのですが、どうも去年までの負け犬根性が頭をもたげて重苦しい雰囲気になってるような気もします。

     この状況を打破するためには、とにかく選手に頑張ってもらわなければいけないと思うのですが、いろいろとジンクスに頼ることも多いですよね。4月、5月には「アリアスがホームランを打つと負けない」とか、先日ついに崩れてしまった「木曜不敗神話」。これらは、選手の頑張りやローテーションの巡り合わせみたいなものもあって、ある程度勝敗に影響するのも理解可能なのですが、一方でファンレベルでも、いろいろとゲンを担いだりしてませんか?
     例えば、毎朝の通勤ルートをちょっと変えてみたり、生活パターンを変えてみたり。調子のいいときは、できるだけ毎日同じような行動をとっていたのですが、今月に入ってからというもの、毎日変化を与えているせいか、昨日どういうパターンだったかも混乱してわからなくなってきてしまいましたよ。
     まぁ、こんなことをしても、試合の結果に何らかの影響が与えられるはずもないのですが、それもファン心理というものです。

     さて、かなり昔の話になるのですが、関西ローカルで「春蝶のそれいけタイガース」という不定期放送の深夜番組がありました。いわゆるその日のタイガースの試合の録画ダイジェスト番組ですが、単に試合の録画放送ではなく、故・桂春蝶師匠が試合を振り返るという形式の番組でした。
     この番組、不定期に放送があるのですが、番組が始まってから何年間も「勝てなかった」んです。もう、この番組の放送予定があると、「負けてもしゃあないか」というような雰囲気がありました。
     春蝶師匠の人柄でしょうか。そういう状況にあったにも関らず、決して風当たりも強くなることなく、番組は続いていました。甲子園でたまに春蝶師匠を見かけることもあったのですが、そのときも周りのファンは「頑張れ!」と声をかけてましたが、途中からは、もう悲壮感漂う雰囲気になっていたことを記憶しています。

     今年になってCS放送のGAORAで「サタデーTigers」という番組が始まりました。土曜にGAORAが生放送するときの試合開始30分前から、その日の練習風景も含めてタイガースの話題を放送する番組で、吉本の若手芸人さんが司会しています。
     で、すでにもう番組内でもネタになってしまっているのですが、この番組がある日はことごとくタイガースは負けています。(6/22の放送で連敗記録を更に更新)
     今年はホームでの勝率、特にデーゲームの勝率が悪いので、巡り合わせ的にも間が悪いのでしょう。ついには御祓いまでしていましたが、その効果もありませんでした。
     司会の若手芸人が、その後の生中継の副音声も担当しているのですが、毎回、後半になると声のトーンが暗くなっていくのも、聞いていて辛かったりします。
     せっかく立ち上げた番組も、今後のタイガースの成績如何では打ち切られるかもしれません。いや、番組自体に罪はないんでしょうが、そんなことでも気にしてしまうのが、ファンなんですよね。



     第4回 2002シーズン、後半スタート


     後半戦がスタートしました。連戦が続きますし、夏場に向かって厳しい試合が続いています。
     開幕スタートの最初の6連戦(対カープ、ベイスターズ)は2勝3敗1分と、残念ながら負け越してしまいました。接戦が多い今年のタイガースですが、特にこの6連戦では、一球の怖さ、試合の流れを掴むことの難しさを感じさせてくれました。逆に言えば、野球の恐さ、面白さが随所に出た試合ばかりだったんじゃないかと見ていて感じました。

     ベイスターズ戦の2試合目の逆転負けの試合、直接、流れをベイスターズに渡してしまったのは、6回途中でリリーフした弓長の、石井琢に対する四球でした。でも、結果論ということを恐れずに言わせてもらえば、6回表のタイガースの追加点、あれがあったからこそ、決して調子がいいとは言えなかった6回のカーライル続投があり、そこから流れを逆流させてしまうことになったのかもしれません。
     あの場面で追加点がなく、6回頭から投手が交代していれば、ひょっとして4−2ですんなり勝っていたかも・・・。もちろん、6回の場面で追加点を挙げたことは正解だし、それが敗因とは思いませんが、そういう「if」を想像するのも野球の面白さかもしれません。
     それでも、力があれば、その流れを強引に呼び戻すこともできるはずです。
     日曜の試合、土壇場で関本のホームランで追いつき、延長戦に入ったところで2度ほどベイスターズに流れが傾きそうなプレーがありました。ビジターでの延長戦ということで、1つのミスが負けに直結するだけに、ハラハラものでしたが、金沢やバルデスが「気迫の投球」でしのいでくれました。
     ベイスターズにしても、終盤、勝ちパターンに入ったということで、守備固めに入ったがために、延長戦での攻撃力がやや落ちてしまったという点も、勝負のアヤでした。(タイガースもそうなのですが、勝ちパターンが1つしかないっていうのは、こういうときに辛いですね。)

     さて、いよいよ、怪我で長期離脱していた赤星が復帰してきました。
     前半戦、多くの怪我人が出ましたが、その都度、他の選手が何とかカバーしてきました。ただ、赤星のリタイアで攻撃面でのバリエーションが少なくなってしまった感があります。
     今岡がトップバッターとして穴を埋めてくれたように見えますが、実際は二番以降の攻撃でのバリエーション不足と、相手投手に対するプレッシャーの掛かり方に問題があったように感じていました。この辺りが、なかなか打線が繋がらなくなっていた一因でしょう。そういう意味でも、赤星の復帰は後半のタイガースのポイントになるように思います。
     また、守備面でも、赤星はポイントになるんじゃないかと思います。やはり、センターで足を活かしたあの守備範囲は、「守り勝つ野球」の大きな柱になるんじゃないかなと思います。
     具体的にデータを持っているわけではないのですが、今年のタイガースは甲子園での勝率が悪いですよね。それでもシーズン当初は勝っていたはずです。
     甲子園の広いグラウンドでは、外野守備の良し悪しが長いシーズンの勝敗に大きく影響してきます。赤星のリタイアと、甲子園での勝率は、決して無関係ではないとずっと思っています。仮にこの仮説が正しいとしたら、後半戦のタイガースは、赤星の(完全)復帰とともに、また上昇気流に乗れると期待できるのですが・・・。



     第5回 かつてのドラ1たちの現状(2002シーズン後半)


     今年も夏のロードが終わりました。怪我人続出で非常に厳しい戦いが続きますが、そんな中で若手にチャンスが巡ってきています。見ていて、まだまだ力不足の面も多いのですが、一軍での経験は若い選手には本当に貴重なものです。今回はそんな中でチャンスを与えられた3人の選手について書いてみようと思います。
     後半に入りローテーションに入って登板している藤川、藤田の両投手、そして矢野の怪我により初めて一軍での出場の機会を得た中谷捕手。全員がドラフト1位で入ってきた期待の選手たちです。
     勝ち星こそありませんが、スワローズ戦、ジャイアンツ戦と思い切りのいいピッチングとフィールディングに成長の跡がみられるのが藤川です。先日のジャイアンツ戦での登板は実際に東京ドームで見ていたのですが、気持ちのいいピッチング内容でした。特に6回のピンチで松井を三振に仕留めた場面は、本当にしびれました。その後に打たれて逆転されてしまうところは、やはり藤川の壁を感じましたが、変に逃げてやられたわけではないというところは期待してもいいと思います。
     課題はスタミナと土壇場での精神力でしょうか。技術的にも精神的にももう一皮向けて欲しいところですが、攻める気持ちが見られる限り初勝利の日は近いように思います。

     一方の藤田ですが、さすがと思わせるような素晴らしい球を投げていたかと思うと、一転、コントロールを乱して崩れて行くという内容のピッチング、少し評価が固まらないといったところです。
     相手の強力打線に対して、慎重になり過ぎて四球連発、結局1点を惜しんで大量失点というのは、ここ数年のタイガース投手陣に見られる悪いところなんですよね。で、これは本当に見ていてイライラしてしまいます。
     確かに味方に得点があまり期待できない以上、慎重になるのはわかるのですが、少なくともリードしているところで、思い切りのいい投球ができなければ苦しいです。結果を求めるのはいいのですが、それで悪い結果になってしまっては本末転倒です。今年はチーム全体に戦う姿勢が出てきて、そういう部分が少なくなってきていたところだけに、藤田のピッチングの内容はモノ足りません。力はある投手だと思うので、藤川同様、大いに期待はしているのですが・・・。

     中谷に関しては、打つ方は全く結果が出ていませんけど、守備面に関しては、なかなかどうして堂々としたものです。
     あの目の怪我以来、ある意味、頑張って欲しいとは思いつつも、期待度は多少落として見守ってきました。一軍で活躍して欲しいという願望以前に、まず野球が、そしてキャッチャーができるのかどうかという状態でしたからね。
     また、ファームである程度試合に出るようになってからも、ある一つの不安がありました。それは一軍でやる上では、必ず克服する必要があることです。
     それは、「ナイターでも目の怪我の影響がないのか?」ということ。実際に太陽の光の下でのプレイと、ナイター照明でのプレイでは感覚が違いますからね。特に目を怪我した中谷の場合は、仮にファームで野球に支障がないくらいに回復していたとしても、ナイターで大丈夫かどうかはやってみなければ、わからないと思ってました。
     実際に数試合のプレイの様子を見たところでは、その心配はとりあえず杞憂だったと感じます。後は一軍レベルへのレベルアップですね。矢野の怪我や他の捕手陣との兼ね合いでチャンスは与えられていますが、まだまだ一軍レベルではないのは明白です。それでも残り試合は中谷にとっては大きな経験になるはずです。

     とにかく、残り試合もあとわずか。チャンスを与えられた若手選手はこの3人に限らず、その経験を血肉としてステップアップして欲しいですね。


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