ホットタイガース by じん

    第16回 2003シーズン、後半戦スタート

    第17回 2003シーズン、”死のロード”総括

    第18回 2003シーズン、阪神タイガースのセ・リーグ優勝!

    第19回 2003シーズン、日本シリーズ総括

    第20回 2003年末、シーズンオフ



     第16回 2003シーズン、後半戦スタート


     オールスターも終わり、いよいよ後半戦が始まりました。
     思いもかけずオールスター前にマジックが点灯するという状況に、少なからず戸惑っています。あまりにもあっさり出てしまいましたからね。いよいよ、あの2文字を現実として意識できる時期が近づいてきたということでしょうか。でも、まだまだ実感が湧きません。
     でも、勝ち星に比例して、中身は濃いです。もう60勝を超えてしまいましたが、去年の勝ち数が66。最近勝ち慣れていないだけに、もう1年応援した気にもなってしまいます。でも、まだ「夏のロード」も始まっていないんですよね。

     ここまで順調すぎるほど順調にきました。シーズン前、期待こそしていましたが、ここまでとは思ってもいませんでした。順調に勝ち星を伸ばしながらも、もう少し波乱があるかなぁと予想もしていたし、実際、先発ローテーションの一角、藤田太陽や4番濱中の離脱などもありましたが、あまり気にならないほど、他の選手がカバーして余りあります。逆に恐いくらいです。

     オールスター前後でスワローズが連勝してきて、例年の如く、後半戦に向けて徐々に上がってきていました。タイガースとしては、いままで通り1つ1つの試合を確実に勝っていけばいいとは思いながら、長年の習性でしょうか、どうも(ファンとしては)スワローズに苦手意識があって、ちょっとイヤらしい感じもあったんですよね。まぁ、そうは言ってもまだ余裕があるし、贅沢を言うようですが、少しくらいは優勝へ向けて苦労するシーンもあった方が、将来を考えればいいのかなぁなんて思っていたりもしたのですが、ここにきて、スワローズにも一気に連勝!甲子園での試合が続いたという「地の利」もあったとは思うのですが、またひとつの壁を打ち破ったような気分です。

     順調にマジックも減ってはいますが、まだまだ数字は大きいですし、監督、選手の談話を聞いていても、まだ意識する様子はありません。ただ、逆に相手に与える影響、プレッシャーは計り知れないものがあるでしょうね。ここのところ、マジック対象になるような状況は経験していないので、思いもよらなかったのですが、よくよく考えてみれば、マジックが出ているということは、追いかけるチームは「負けるわけにはいかない」わけです。極端な話、1敗も許されないということですからね。
     確かに、マジックが点灯してからの相手チームの戦いぶりには、ある種、これまで以上にタイガースに対する意識が強すぎるようなきらいがあります。特にオールスター前のジャイアンツとの対戦を見ていると、プレッシャーを通り越して「戦意喪失」といった雰囲気を感じました。常に優勝をしなければならないと、世間的にも、またファンからも期待されているジャイアンツだからこその「脆さ」が出た試合だったんじゃないでしょうか。

     よく、今年のタイガースは「勢いが違う」という声を聞くのですが、このオールスター前のジャイアンツ戦では、明らかに「意識の差」が大きいと感じました。その「意識の差」をさらに加速させるのがマジックナンバーということになれば、これからの戦いも、どんどん楽しみになってきますね。



     第17回 2003シーズン、”死のロード”総括


     恒例の夏のロード、4勝11敗。まさに「死のロード」になってしまいました。

     ただ、ロード前から投打のリズムは崩れ気味でしたし、連敗がたまたまロードに重なっただけと捉えています。冷静に考えれば、どんなに強いチームでも、一年間のうちには必ずこういう時期があるはずです。
     さらに言えば、このロードの期間に、これだけ負け越してもマジックが12も減ったという事実。確かにタイガースもいま一番苦しい時期ですが、他のチームもそれ以上に苦しいということを如実に表している数字でしょう。
     そんな中、先週の土曜日の横浜スタジアムでの試合を観戦してきました。
     1ヶ月以上も前にチケットをゲットしていたので、その当時は「ひょっとしてXデー?」なんて期待もしていたのですが、さすがに甘かったですね。5連敗で迎える試合になるとは、思ってもいませんでした。

     試合はいきなり赤星のバントヒット、金本の2ランと、まさに今年のタイガースらしい先制点で、なかなかいいスタート。それでも、どうしても不安が払拭できない。先発の下柳のピッチングが気になります。
     7月31日、甲子園で見た試合が思い起こされました。今岡の初球先頭打者ホームランを皮切りに初回いきなり4点を先制したものの、先発下柳がメロメロ。あっさり逆転負けを喫した試合です。
     でも、この日の下柳は粘る、粘る!決して調子がいいとも思えず、鋭い打球を打たれるものの、ことごとく野手の正面をついたり、味方の好守に助けられたり。6回途中で降板しましたが、無失点で十分仕事を果たしてくれましたね。

     試合は広澤の追加点、アリアスのダメ押し打&ホームラン、そしてリガン、ウィリアムス、安藤の継投も決まり、久々の快勝!

     この試合で特筆すべきは、ジェット風船が上がらなかったこと。何かと物議を醸すタイガースファンのマナーなのですが、浜スタのジェット風船ほど情けない気持ちにさせてくれるものはなかっただけに、本当に良かったと思います。

     最初に浜スタでジェット風船が禁止になったのが5年前の6月。たまたま、この日の試合を見にいっていました。個人的に当時はもうジェット風船をあげることがなかったので、特に何も感じなかったのですが、やはり、あれをあげなければというファンも多いみたいですね。最初はさすがに申し訳程度であがっていた風船も、年を追うごとに増えていき、3年前くらいには、禁止のアナウンスなんか無視という感じでした。はっきり言って、周りに注意しても焼け石に水状態です。
     ベイスターズに快勝しても、この瞬間がある故に暗い気持ちになったりもしました。

     今回は星野監督の言葉に反応したファン以外にも、初めてスタンド内で係員にプラカードを持たせてジェット風船禁止を周知徹底させたスタジアム側の努力もありました。
     今後も、しっかりと定着していってくれれば、嬉しいことです。



     第18回 2003シーズン、阪神タイガースのセ・リーグ優勝!


     やりましたっ!遂に遂に・・・優勝です!
     18年前の優勝は、何度も何度もビデオが擦り切れるほど見たので、つい最近と錯覚することもあるのですが、よくよく考えれば、あの年に生まれた子供がもう高卒でプロに入ってくるんですからね。いやぁ、長かった。
     前回の優勝のとき、冗談で「次の優勝はまた20年後だ」とか言っていたら、本当にそれに近い間、勝ちから見放されてきました。もう冗談でもそんなことは言わないぞと決意しつつ、今年の優勝の味を噛み締めています。

     正直、マジックが1ケタになってからは、一体どういう形で優勝が決まるのか、ずっと気にしていました。まずは目の前で生で胴上げが見たい!
     中にはほとんど毎日のように球場に日参したファンも多かったようですが、さすがにそれはできなかったので、夏休み前に入手していた9月11日の神宮の試合に期待を寄せていました。マジックの推移に一喜一憂。ここまで独走しておきながら、他チームの結果がここまで気になる状況になるとは思ってもいませんでした。
     そうこうしているうちに、この9月11日の試合に胴上げのチャンスが出てくると、本当に気が気ではありませんでした。結果的にこの日の試合では決まりませんでしたが、カウントダウンの試合を見れたことは、本当に思い出になると思います。

     神宮で決まらず、胴上げはナゴヤに持ち越し。ここで気になったのは、やはりマジック対象のカープとスワローズの動向。特にこのとき、スワローズがナイターになっていたので、下手をすれば球場での胴上げがないという「最悪の事態」も想定されました。
     とにかく、9月13日からの3連休は結局テレビにかじりつきでした。

     結局ナゴヤでも決まらず甲子園での優勝になったわけで、最後の最後にヤキモキさせられましたが、結果的にはこれで良かったんじゃないかなと思います。
     優勝が決まったあの日、試合はサヨナラ勝ちという劇的な勝利で、マジック1ながら、もう気分は胴上げ決定という感じ。甲子園もそういう雰囲気だったとモニターを通じて感じられました。本当に長い1日でしたが、タイガースファンにとっては至福の1日でもありました。
     2時間遅れて始まったスワローズの結果待ちも、感動の一瞬を味わうための心の準備を整えるための時間になりました。この日の試合が甲子園だったからこそ、他球場の結果待ちという、ある意味気が抜けてしまうような状況であっても、ファンが球場で待ち、そして、その満員のファンの目の前で、まさにスタンドグラウンドが一体となった胴上げが実現しました。それは、他球場の結果待ちでの優勝でありながら、あらゆる可能性の中で最も恵まれたシチュエーションでしたし、本当に感動的かつ記憶に残る胴上げシーンになりました。

     優勝決定までの数日間、「勝った瞬間の胴上げ」という形にちょっとこだわって結果に一喜一憂していたのですが、これはこれで、また味があるし、「タイガースらしい優勝」と言っても過言ではないでしょう。特番やニュースで、何度も何度もこの胴上げシーンが流されていますが、本当に何度見てもいいものですねぇ。
     いましばらくは、余韻に浸っていると思います。17年間の辛い日々をも思い出しながら・・・・。



     第19回 2003シーズン、日本シリーズ総括


     日本シリーズ、終わってしまいました。
     タイガースは残念ながら日本一を逃してしまいましたが、本当に、本当に面白い日本シリーズだったと思います。この10日間、本当に楽しませてもらいました。
     勝敗は紙一重。惜しむらくは、このシリーズでは特に、攻撃面でタイガースらしさをイマイチ出すことなく終わってしまったのですが、それでもなおホークスと互角のシリーズを戦うことができたことは、本当に感慨深いものがありました。
     正直言えば、シーズン終盤、リズムに乗り切れない試合が続いたので、その流れで日本シリーズに入るのは不安の方が大きかったです。具体的には打線の繋がり。やはり優勝が決まる前後くらいから、本来の打線を組むことができなかったというのが大きいです。今岡が本来の調子に戻っているかがわからなかったし、タイトル絡みでアリアスが1番を打っていたのも、シリーズを睨んだ部分では従来の型ではありませんでした。今岡の怪我の状態、タイトル狙いとの絡みという意味で、ある程度仕方のない部分ではありましたが。
     また、打線の繋がりという意味では指名打者の起用方法もポイントの1つだと思っていました。打者が1人入ることで、普段以上に繋がりの出ると考えやすいですが、逆に普段のリズムとは違う部分も出てきてしまうんですよね。
     実際にシリーズを通じて、全体的に打線の調子は上がってきませんでした。すっきりしない打線は、今年のタイガースの特徴である打線の繋がりを発揮することなく終わってしまった感があります。

     そうした中で、福岡の連敗の後の甲子園での3連勝。
     打線の調子が上がらない中でのこの連勝は、タイガースのもう1つの型で乗り切りました。投手を中心に守り抜くという形が「甲子園」という舞台で見事にハマりました。もちろん、繋ぎの攻撃も随所に復活したことが、勝ちに繋がったのは事実なのですが、それでもなお、贅沢を言えば物足りなさがありました。
     逆に、ホークスはやっぱり打線も投手陣も良かったし、シーズン通りの姿を発揮できていたように思います。また、それがより指名打者制を含めた「福岡ドームの野球」にハマっていたように思います。

     結果的に今年は「内弁慶シリーズ」になってしまったわけですが、結局、それがいい悪いではなく、両チームのパフォーマンスがより発揮できる場所がそれぞれ本拠地だったんじゃないでしょうか。そして、自分たちの野球をすることで、お互いに相手の型を作らせなかったことがこの結果に繋がっていったような気がしました。

     3勝3敗で迎えた最終戦、負けてしまいましたが、不思議と悔しさみたいなものはありませんでした。なにか終わってホッとしたという感じ。ずっと調子が出なかった中で、本当によくホークスに食らいついていってくれたと思いますし、星野監督の言っていた「歴史に残るシリーズ」を我々に見せてくれたと思います。結果だけではなく、お互いのチームのいいところが存分に出たシリーズでした。
     タイガースにとっては、また来年の宿題をもらった、そう考えればいいだろうし、ホークスと戦った経験はきっと大きな財産になって来年以降に繋がるんじゃないかと期待しています。

     今年は3月28日からの開幕戦から日本シリーズまでの147試合、本当に楽しませてくれました。タイガースの選手の皆さん、ありがとう。
     何よりも、星野監督、お疲れ様でした。そして本当にありがとうございました。



     第20回 2003年末、シーズンオフ


     日本シリーズも終わり、約1ヶ月。今年は、最後の最後まで楽しませてもらっただけに、ちょっと気が抜けたシーズンオフです。しかし、チームの方はトレード、ドラフトそして新外国人の獲得など、来季に向けての準備が始まっています。
     補強に関して、野村監督招聘から始まった5年間の動きは本当に「激動」と言ってもおかしくありませんでした。しかし、これも長い間の低迷を払拭するためには致し方なかったものと考えています。チームを立て直すためには、それこそ自力で立ち直っていくのが理想なのでしょうが、それにしてはあまりにも低迷が長すぎました。一旦、チームをぶち壊すくらいのことをやらないと、どうしようもなかったところまで追い込まれていましたが、今年の優勝という結果で、選手の意識を含めて、ようやくチームが生まれ変わることができたんだと思います。だからこそ、来年からが、本当にタイガースというチームが成長していくための期間、新たな伝統を構築できるかどうかの分岐点ということになるでしょう。
     そういう意味でこのシーズンオフの補強は、ここ数年の派手さはないものの非常に堅実で、なかなかいい感じだなと思います。優勝したチームを基本として考えているのももちろんですが、かと言って決して守りに走っていない。今年のようにぶっちぎりで独走できるということは、それこそ有り得ないでしょうが、そこそこに「いいチーム」になってきたなと感じています。

     しかし、動きに派手さがない分、マスコミ的には大弱りってとこでしょうか。ほんのささいなことでも大袈裟な見出しをつけて(決して記事ではありません!)、相変わらずファンを煽っています。
     個人的にもうマスコミの記事は全く信用していないので、「またこんなこと書いてるよ」と逆に楽しむことができるようになってしまったのですが、まだまだ鵜呑みにする人が多いのは確かですからね。いい加減にしてもらいたいというのが正直なところです。

     例えば、伊良部と下柳のFAの件。FA宣言した途端に流出「危機」ですか。もちろん、FA宣言すればチームから出て行く「可能性」はありますが、2人のニュアンスからいきなり「危機」という単語を出してきてファンの不安を煽るような感覚が信じられませんし、「正確な記事」とは思えません。このFAは、2人にとって移籍前提ではなく、タイガースが1つの選択肢になったというだけのこと。ましてや、タイガースはFAした選手を引きとめないというチームではありません。これから交渉が始まるというだけに過ぎないし、その結果としてタイガースに残ってくれるか他のチームに行くかは、選手と球団の交渉にのみ委ねられるわけです。ファンにとって重要なのはその結果だけであって、野球の試合じゃないわけですから、途中経過はあまり関係ないと思うわけです。当然、交渉の中でいろいろと情勢は変化するので、その過程でヤキモキするのも無駄な行為ですし、正しい内容ならともかく、憶測も入り混じったワケのわからないことをわざわざ記事にして教えてくれなくてもいいのにね、なんて思ってしまうのです。

     他の選手に関しても同じことです。まだ交渉も始まっていない時点で「暗礁に乗り上げている」とか、記事中に数字の根拠が全く示されていないにも関らず見出しにトンでもない金額を載せてしまう。そもそも、誰がいくら(しかも推定!)で更改したとか決裂したとか、そんな記事に意味があるとは思えません。
     要は、来年、契約してくれた選手がやってくれるかどうか、どれだけ楽しませてくれるか、ということだけなんですけどね。

     ちなみに、今年は優勝したにも関らず、スポーツ紙は優勝翌日に買い漁ったくらいで、全く買うことはありませんでした。突っ込みを入れるくらいの記事は、Webでほとんど読めますし、だからこそ各紙の記事を比較できます。煽り記事を信じ込んで大騒ぎすることより、何が正しくて、何が間違っているかを見極めることがファンにも必要なんじゃないでしょうか。


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