ホットタイガース by じん

    第26回 井川と鳥谷の壁

    第27回 東京ドームレフトスタンドでの観戦

    第28回 2004年夏、甲子園にまで行ってきました

    第29回 2004シーズン、死のロード

    第30回 選手会のストライキ



     第26回 井川と鳥谷の壁


     5月半ばの東京ドームでの対ジャイアンツ3連戦。勝った試合も第1戦は前半、第3戦は終盤に劣勢の場面がありましたが、見事に逆転勝ちで、なんとか今回も勝ち越すことができましたね。まぁ、第2戦は別にして、第3戦は完全に勝ちパターンだっただけに、負けていればダメージは大きかった(逆にジャイアンツを乗せてしまいかねない試合)だけに、よく勝ってくれたというところです。
     5/11の試合にしても、大きくリードされながらも、一気に5点を取り返すなど、打つ方では最後の最後まで諦めないという気持ちが見ていても感じられますから、それで負けても仕方がないと思えるし、どこのチームも抜け出せる感じがしないので、今の姿勢がなくならない限りは、タイガースは大丈夫でしょう。

     ただ、雰囲気的には混戦を抜け出せそうな感じがするのですが、なかなかうまくいきません。
     負ける試合は、先発が大きく崩れる試合が多いですね。その中で、やはり井川の復調が今後のポイントでしょう。

     井川の不調については技術的な不調、蓄積疲労などが言われていますが、個人的にはより高いレベルに上がるための壁にぶつかっていると思いたいですね。正直、井川は腰痛を抱えてプロ入りしてから、それを克服して二軍で投げられるようになり、コントロールの悪さを下半身の強化である程度克服。一軍レベルで「投げられる」ようになってからは、一年間ローテーションの中で経験を重ね、そして勝てる投手になってきた・・・という感じで、一つ一つ順調に階段を上って、1年単位でステップアップしてきました。もちろん、プロの壁にもぶつかったでしょうが、それを難なく乗り越えてきたという印象があります。それだけに、期待感はありますし、今年のピッチングに対するファンの落胆も大きいのは当然でしょう。これまでの井川のステップアップの様子を見ていれば、当然、一昨年より去年、去年より今年と進化していくはずという目で見られてますから。
     ただ、やはりレベルが高くなればなるほど、当然、期待されるものも高度になってくるし、乗り越えるべき壁の高さも高くなってくるものです。今年の井川は、その壁に、ようやくぶち当たることができたと思うのです。ここを克服したとき、まさに「真のエース」になってくれるのでは・・・そういう期待が、去年以上に強くなってきました。
     少なくとも、いつかはこういう状況になることは、どの選手も必ずと言っていいくらいあるはずです。井川にとって、それが今年だったかどうかは、今後数年のピッチング内容でようやくわかることですが・・・。

     プロの壁という意味では、鳥谷にも言えます。もちろん、こちらは井川のレベルとは比べるべくもないですが。
     鳥谷の場合は、プロの一軍レベルの壁ですね。二軍レベルでどうかは実際にはわかりませんが、期待されるものに対して、その選手ごとに壁は立ちはだかります。第一の壁をすんなり乗り越える選手もいれば、そこで苦しんで苦しんで、乗り越えてより高いレベルに上がっていくという選手もいます。鳥谷の場合も、いまは打てなくても、一軍レベルの投手にどんどんぶつかっていって、その中で、今日のタイムリーのように徐々に結果を出していけば、おのずとチャンスも増えてくるでしょう。将来的には、絶対に欠かせない選手ですから、そのときのために、今のうちに苦しめばいいのです。
     少なくとも、これまで見てきたタイガースの若手有望選手は、怪我でチャンスも、そして鍛錬の機会も潰してきたという歴史があります。濱中しかり、関本しかり。井川にせよ、鳥谷にせよ、今のところ、怪我で挫折という心配がないからこその期待です。身体が丈夫であれば、純粋に壁を乗り越えるのは、技術的、精神的なレベルアップに専心すればいいのですから。果たしていつその壁を乗り越えてくれるでしょうか。



     第27回 東京ドームレフトスタンドでの観戦


     先日の19日、20日の東京ドームでのジャイアンツ戦。急遽、チケットを譲ってもらえることになり、応援に行ってきました。
     ここ数年は「内野でマッタリ応援」派だったのですが、今回譲ってもらった席は、外野のビジター応援席です。これはもう完全応援モードで行かざるを得ないでしょう!実際に、席も応援団のすぐ後ろという応援するにはもってこいの場所。自然と声も出てしまいました。

     19日の試合は、福原−上原の素晴らしい投手戦。
     とは言え、タイガースの方は先月下旬から見られた「チャンスで凡打」を序盤に炸裂させて、上原を完全に乗せてしまった感じでした。一方の福原は全く危なげのない投球です。4回と6回には、いずれも二死から1,3塁というピンチを背負いますが、こういうピンチを抑えきってしまうのが、今年の福原の真骨頂!7回の二死2,3塁という、さらに危ないピンチも抑えてマウンドを降りました。
     タイガースにとっては、7回の攻撃がポイントだったように思います。一死から今岡が出塁して、バッター金本。金本の打球は痛烈な当たりでセンターに抜ける!・・・と思ったのですが、ここは仁志がファインプレー。横っ飛びで捕球してバックトスでセカンドフォースアウト。あの打球が抜けていれば、この試合どうなったか、わからなかったでしょう。流れをつかみきれませんでした。
     タイガースは福原の後をウィリアムス、ジャイアンツは上原が9回までを抑えきり、なんと0−0で延長へ。そして、迎えた11回のタイガースの攻撃で、また流れをつかみそこなうプレーが。先頭沖原が四球で歩いて、絶好の得点チャンス。まずは赤星が送りバント失敗、これが流れを断ち切る第一弾。そして、その後の藤本のセカンドゴロで沖原がセカンドへ進塁!・・・ところが、このプレーが終わった後に守備妨害が取られてしまいました。当然、岡田監督の抗議があったわけですが、現場で見ていると逆に走塁妨害にも見えた微妙なプレーでした。ただ、最悪なのは、審判の対応です。判定を覆したのはもちろんなのですが、抗議の途中の説明も「お待ちください」と意味不明、沖原と赤星の名前をてんぱって間違えるわで、せっかくの好ゲームもしらけてしまいました。結局、このプレーでタイガースは力尽きたって感じでしたね。11回裏、安藤が押し出しでサヨナラ負け。
     ちょっと釈然としないシーンもありましたが、全体的にはいい試合でした。久しぶりに大声だして応援できたし、負けたけど楽しかったです。

     明けて20日の試合、連夜の零封を受けてタイガースは今季2度目とも言える打線の大幅組み替えです。1番に今岡を戻し、矢野−藤本の去年の7,8番の並びを復活させました。基本的には今シーズン当初の形に限りなく「戻した」というところで、打開策を打ってきました。
     結果的に、この打線変更が功を奏しました。ジャイアンツ先発のランデルも調子が悪かったのは確かなのですが、なかなか点が取れなかったここ数試合のタイガース打線にしては、初回にいきなり先制!これもダブルプレー崩れとしょぼいものでしたが、とにかくトラウマになりそうなくらい得点できなかった満塁のチャンスで点を取れたということで、何か憑き物が落ちたかのように2回、3回と加点。久しぶりの登板だった井川も絶好調で、ほとんど安心して最後まで応援することができました。7−3の快勝で、レフトスタンドはほとんど盛り上がりっ放しでした。
     2日間、本当に久しぶりに外野スタンドで応援したわけですが、本当に楽しかったです。たまには、こういうのもいいですね。

     久々の外野応援で感じたのは、以前に比べて雰囲気が非常に良くなっていたことです。個人的には、関東の球場で幅を利かせていた悪名高き「黒法被軍団」が一掃されていたのが大きいと思った次第です。何しろ彼らの存在が、私に「外野応援引退」を決意させたキッカケですし、彼らがいなくなったことで外野のファンの一体感がより増したように感じたのは、偽らざる感想です。



     第28回 2004年夏、甲子園にまで行ってきました


     今月は一週連載を延ばしていただきました。というのも、今週は、甲子園遠征にきているので、その様子を書きたかったからなのです。予定では、連勝街道驀進、首位ドラゴンズにも肉薄・・・という予定だったのですが、残念ながら逆に連敗地獄に陥ってしまったようです。

     今年の甲子園遠征は、7/25(日)のスワローズ戦から7/31(土)のジャイアンツ戦までの計6試合。去年のこの時期の遠征では優勝に向けて絶好調だったせいか、前売りが全く買えずに朝から当日券のために苦労して並んでチケットゲットをしたのですが、今年は販売方法が変わり、ジャイアンツ戦以外はシーズン前に全席前売りという形になりました。前売りが残れば当日券に回るということだったのですが、夏休みということもあり、全席完売になるのは目に見えていましたし、実際に全く当日券はありませんでした。
     ただ、シーズン当初はいざ知らず、この時期ならシーズン前に手配すればとりあえず何とかなるということで、イエローシートのかなりいい席を入手することができました。確実にここで観に行くということであれば、逆に入手しやすかったですね。
     問題はジャイアンツ戦だったのですが、これもファンクラブ先行抽選販売で1枚当たり(関東にいるとファンクラブの恩恵はほとんどないのです。この日のために入ったといっても過言ではありません)、あとはネットで何とか3塁側を確保。かくして1週間の甲子園遠征が可能となりました。

     日曜のスワローズ戦、そしてドラゴンズ3連戦、いずれも先発陣の不調、守備の乱れで序盤から苦しい展開でした。それでも、全ての試合が見どころ満載で、最後まで席を立てない面白い試合でした。
     最初のスワローズ戦では、頼みの福原が3回に撃沈、いきなり5点のビハインドを追うことになります。甲子園に戻ってから貧打で1点ずつしか取れなかった打線のことを考えると、この時点でかなり絶望的な点差でしたが、この日のタイガース打線は終盤に持ち前の繋ぎが復活。7回、8回で6点をあげて最後まで期待を持たせてくれました。結局、中盤の失点も響いて負けてしまいましたが、スタンドは十分に沸かせてくれました。
     ドラゴンズ戦は決して負けられない試合となりましたが、初戦の初回にまたも4失点。ただ、4点取られた後で焼け石に水だったとは言え、トリプルプレーなんていう滅多に見ることができないプレーを見せてくれました。かなりの試合を観戦しているのですが、実はこれが初なま三重殺でした。藤川球児の復活登板も嬉しい場面でした。一軍復帰したことを知らなかったのでいきなりの登板にびっくりしましたが、故障前と変わらぬ(それ以上?)の内容を見せてくれて、今後(もちろん来季以降も含めて)に期待を持たせてくれました。

     そして、極めつけの試合が5時間37分の試合となった水曜の試合でした。この日もエラーをキッカケに先制されてしまいますが、苦手の山本昌を攻略して、すぐに追いつきます。さらにホームラン攻勢で点差を広げられても、必死で食いついていくタイガース打線。5回終了時点で、すでに3時間が経過するという長い試合でしたが、そんなことは全く感じさせない試合展開でした。タイガースファンからすれば、タイガース投手陣、ピリッとせんなぁという感じでしたが、それを攻撃陣が忘れさせてくれました。2点を追う9回も、これまた天敵の岩瀬から桧山が同点の2点内野安打を打ちます。まさに執念といった感じの打球でファーストの渡辺のミットをはじきました。
     延長11回、またまたミスから安藤が失点してしまいます。さすがにこの時点で終電も危うくなる時間でした。流れとしてもあと2,3点取られてもおかしくない展開だっただけに、あと1点取られたら帰ろうと思ったところで、安藤負傷退場を受けての緊急登板の藤川が前日以上の素晴らしいピッチングを見せてくれました。無死1,3塁から3者連続三振。もう終電を無視して、最後まで見届けてやろうと腰を据えました。最後の攻撃も、結局力及びませんでしたが、二死から一打同点のチャンスを作り出すなど、最後の最後まで頑張ってくれたと思います。もちろん、負けたことは残念(こういう試合こそ勝っておきたかった)なのですが、それ以上に選手の頑張りに感動しました。最後はさすがに空席も目立ちましたが、1塁アルプスやライトスタンドはほとんど帰っていなかったんじゃないでしょうか。最後の最後まで席を立つことができない熱戦だったと思います。

     そして連夜の延長戦となった木曜の試合。逆転されても、決して諦めず、この日は逆にサヨナラ勝ちという結果につながりました。特に、この延長戦2試合は、グラウンドもスタンドも本当に熱い試合でした。こんな試合ができる限り、まだまだタイガースは終わらないと体感できたと思います。

     さて、甲子園の試合のない7/26(月)。これもまた毎年恒例なのですが、マンデー・パ・リーグ、ヤフーBBスタジアムでのブルーウェーブ×マリーンズ戦も観戦しました。ちょっとびっくりしたのが、最寄の総合運動公園前駅を降りた途端に、今年は長蛇の列があったことです。去年はほとんど人がいない状況だったことを考えれば、これは予想の範囲外でした。超満員ということではなかったのですが、それでも1塁側の内野自由席はいっぱいでした。合併問題のこともあるのでしょうが、ファンの熱気は例年以上と感じました。
     正直、場外の問題もあって、純粋に試合観戦を楽しめない状況もあるのですが、やはり選手の頑張り、スタンドの熱気はそういうことを一時忘れさせてくれるというのは、まぎれもない事実だということを実感しています。



     第29回 2004シーズン、死のロード


     夏のロード、今年も苦しい試合が続きました。日程的には中盤と最後に大阪ドームでの連戦があったので、実質的にはシーズンによくある遠征と同じ感覚だったのですが、何より「死のロード」という言霊の呪縛、そして去年のあの独走状態でも大きく負け越したという事実で、心配の種はつきませんでした。
     最初の広島での3連戦に3連勝とこれ以上ないスタートを切ったときは、「今年のロードはいけるかも?」とも思ったのですが、途中で悪夢の6連敗。何より痛かったのは、首位をいくドラゴンズに3タテをくらってしまったということでしょう。
     試合展開としては、やはり安藤、ウィリアムスの穴が継投に無理を生じさせるという形になり、大量失点で負けるという試合が目立ちました。

     安藤やウィリアムスがオリンピックで抜けることはわかっていたことだけに、春先から若手の適正をテストしたり、外人投手を補強したりしてきました。しかし結果として、それが間に合わなかった。藤川や久保田が怪我から復帰したことによって何とか形は作れましたが、当初期待していた吉野がなかなか復調しないとか、外人投手が力を発揮していないとかを含めて、やはり駒不足は否めませんでしたね。

     6連敗という泥沼にハマッた状態の中、8/21(土)と8/22(日)の神宮へ応援に行ってきました。
     はっきり言って6連敗中の試合展開を見ていると、果たして「勝つ可能性」があるのか?というかなり辛い気分での観戦だったのですが、ここまでくれば成る様に成るしかない!勝敗は別にして面白い試合、そして何よりも昨年のチャンピオンチームとしての意地を見せてくれることを期待しての観戦でした。

     土曜の試合の先発ホッジスは、正直言って「相変わらず」でしたね。いきなり3点を取られたときは暗澹たる気分にもなりましたが、実はそのあとは、とりあえず真中のホームランによる1点に抑えていたんですよね。まぁ、先発で5回4失点は微妙なところですが、最初の3点で切れずに、悪いなりにも試合をまとめたというところがまず良かったんじゃないでしょうか。
     ラッキーなことに打線も6回に追いついてくれました。とりあえず、反撃意欲の残る範囲内で抑えたという点で、この日のホッジスはギリギリ合格点としましょう。(ただ、この内容では正直不満、来季は・・・)
     で、やはりその後の久保田の力投が勝利を大きく引き寄せたと言えます。この日の久保田は本当に良かった。安心して見ていられる。こういうピッチングはここ数試合のタイガース投手陣の中ではピカイチの内容でしょう。本当なら、久保田が投げている間に勝ち越し点を奪い、久保田で締めるというのが今のチーム状況では必要な試合展開だったと思うのですが、残念ながら、連敗中のチームにそこまで理想的に試合を進めるという力はありませんでした。

     延長11回、鳥谷の2ランで遂に勝ち越した時点で、4イニングを投げきった久保田は交代。そして、最後にモレルに詰めを任せることになるのですが・・・。正直、「札幌のマイヤーズ」の影がタイガースファンの心に強くトラウマとして残っていました。マウンドにいるのはマイヤーズではなく、モレルだったのですが・・・。
     そんなみんなのマイナス思考がグラウンドにも伝播したのでしょうか?案の定、モレルは四球、ヒット・・・で、簡単に同点に追いつかれてしまいます。・・・脱力。
     この投手継投、かなり批判はされていますが、やはり駒不足が祟っています。本来なら(残った投手陣の面子を眺めれば)藤川で締めるというところなのでしょうが、なにせ前日の試合で藤川は滅多打ちを食らっています。打たれても、重要な場面に出すという安藤、ウィリアムスに匹敵するほどの信頼感はまだ藤川にはありませんからね。結果的にモレルの残した「サヨナラ負けのピンチ」は、藤川が抑えましたが、それはあくまで結果論ですからねぇ。モレルの交代期が遅れたのは事実ですが、じゃあ、誰に後を託すかというのは、あの試合に関しては実はわからないんですよね。
     まぁ結局、藤川がこの後を抑え、12回に出た秀太の「値千金のカウンターパンチ」で勝利を手にしたということで、苦労はしましたが、とにかく連敗を脱出できました。

     そして、日曜の試合。先発はプロ入り初先発の三東でした。谷間ですし、不安でしたが、とにかく、前日の勝利を意味あるものとするためには、三東に頑張ってもらわなければいけません。

     その三東が、本当にやってくれましたよね。ピッチングだけではなくバッティングも。初回に岩村にホームランを打たれたときはおいおいと思いましたが、終わってみれば、本当に久々の「楽勝」。本当にいい形で「大阪」に帰ることができました。

     そしてこの2試合をきっかけにして、大阪ドームではここまで分の悪かったベイスターズ相手に3連勝!数字の上では、この夏のロードを五分の星で終えることができました。

     やはり、野球はまず投手力ですね。かつてのタイガースのように全く打てないということはないのですから、投手がしっかりすれば、今のような成績で終わるはずがないチームなのです。そして最後の5連勝に関して言えば、久保田や藤川、そして三東、桟原という若い投手陣が頑張って結果を出し、勢いをつけたということが大きいですね。
     彼らはまだまだ失敗もするでしょうが、ひとつひとつの登板で経験し、結果を出し、そしてタイガースになくてはならない戦力として成長していってもらいたい。残り試合も少なくなってきましたが、こういう若い力、そして昨年のV戦士、それぞれが自分の力を出し切って「チャンピオンチームの意地」を他球団相手に見せつけてくれることを期待したいです。



     第30回 選手会のストライキ


     9月のタイガースは週末土日に浜スタ、神宮、東京ドームと3週連続で関東での試合が予定されていました。関東在住のタイガースファンとしてはこれはもう行くしかないということで、全てのゲームのチケットを頑張って購入しました。
     しかし、まさにその試合全てがストの対象試合に・・・・!

     個人的にはもちろん選手会支持。ですからストライキ実施も仕方ないというスタンスだったのですが、それとは別に、せっかくチケットを持っているので試合は見たいという、ちょっと複雑な気持ちで推移を見守っていました。
     そして私がそんな心境でいる中、9月10日、最初の週のストライキは回避されました。

     ストライキ延期の是非やその効果についてはいろいろと議論のあるところでしょうが、野球が見れるという喜びはこの週の球場で観戦したファンみんなが体感したところだと思います。
     11日、12日のタイガースは浜スタでの試合でした。久しぶりのデーゲームということで、子供の姿が目につきましたね。そんな子供たちの笑顔を見ていると、本当に試合ができて良かったと思いました。大人のファンはストで試合がなくても、なんだかんだと理由を見つけて理解できるのですが、子供にはそんなことは関係ありませんからね。

     今年のチケット購入時に、どうしても忘れられない出来事がありました。東京ドームのチケットを買うために、ドームに朝から並びに行ったときのことです。ドームの購入システムは、7時半までに並べば全員に整理券が渡され、チケット購入のためのくじ引きができます。ですから、家族全員で並びに来ている人も意外と多いです。子供でも並んでいれば1回くじ引きができるわけです。
     たまたま列で一緒になったのが親子3人の家族の方でした。話を聞くと関西から引っ越してこられたそうで、お子さんも大のタイガースファン。お互いに「くじ引き」の健闘を誓いました。結果は・・・その家族はお父さんとお子さんは残念ながらはずれてしまったのですが、お母さんは当たったようです。お子さんの「お母さん、ありがとう!」という声が、今でも頭から離れません。

     ストが回避された横浜の試合でのタイガースは、それこそ去年のタイガースが戻ってきたかのような攻走守、全てにおいて非常にバランスのいい内容の試合で、ベイスターズを連破しました。特に、日曜の試合は、序盤から打線が面白いように繋がりました。タイガースファンで埋まったレフトスタンド、3塁側スタンドは本当にお祭り騒ぎでした。

     本当なら翌週もストライキが回避されれば、球場に歓声を轟かせたかったのですが、残念ながらその思いは叶いませんでした。ただ、ストライキ延期が決まった1週間前の団体交渉以降の一部経営陣の発言を聞いていると、ストライキもやむなしかなとは思っていたので、ショックはありませんでしたが・・・。
     ただし、この週は月曜が祝日ということもあって、土日月の3連戦。20日のスト明け初試合は、しっかりと神宮へ行って声援を送りました。
     この日私が球場入りしたときには、ちょうど古田がグラウンドに入ってきたところらしく、球場全体から古田コール!レフトスタンドからも当然大きな声援が起こっていました。もちろん、選手会の役員の皆さんはみんな頑張っているのですが、古田はいまやその「象徴的存在」ですからね。この声援は、当然のものだったと思います。

     試合の方はちょっと消化不良の展開で、チャンスを作ってはことごとく桧山、アリアスでそのチャンスを潰すというイヤな流れでした。案の定、5回裏に岩村のポールに当たる2ランで逆転されたまま終わってしまいました。最終回に五十嵐相手に二死満塁まで攻め込みましたが、矢野に対しての3球連続の158キロを投げ込まれては万事休す。それでも、野球が見れるという喜びを満喫した1日でもありました。
     そして、今週末のストライキ回避も正式に決定しました。いろいろとありましたし、そしてまだ課題も山積みではありますが、今後よりよい方向にプロ野球が進んでいってくれることを願いたいです。
     ファンとしては、いまはただ選手を精一杯応援するのみ。今週末は東京ドームで何の気兼ねもなく声援したいと思います。


     第31回〜はこちら


現連載

過去の連載

リンク