ホットタイガース by じん

    第36回 甲子園への日帰りでのオープン戦観戦

    第37回 ナゴヤドームでの初観戦

    第38回 復刻ユニフォームとタイガースの応援

    第39回 いまそこにある、タイガースの一体感

    第40回 今年初の甲子園詣で



     第36回 甲子園への日帰りでのオープン戦観戦


     前から一度やってみたかった、日帰りの甲子園ツアー。3/13の対ジャイアンツのオープン戦で敢行しました。
     朝9時前の新横浜発の新幹線に乗り込み、一路甲子園へ!米原付近の雪の影響でやや遅れたものの、12時前には無事、甲子園に到着しました。
     すでに入手していたチケットはイエローシートです。入場門である3号門に向かって歩いていると、異常に目立つ車が1台止まっています。噂に聞いていた「タイガース・キャブ」、阪神タクシーの特別仕様車でした。とりあえず記念に1枚写真を撮りつつ、隣接するテントで売っていたチョロQを思わず買ってしまいました。
     それにしても、寒い!とりあえず腹ごしらえと思い、売店でそば飯を購入。で、飲み物、どうしようかなと思案したのですが、一杯くらいはビールを飲もうと買ってしまいましたが、う〜む、ビールを飲む気候ではなかった。小サイズにしておいて良かった。

     試合前の守備練習を見つつも食事を済ますと、しばらくして試合前のセレモニーが始まりました。新入団選手の紹介です。一軍にいる選手だけかなと思っていたのですが、新人、外国人、トレード選手と全ての選手の紹介がありました。もちろん、辻本くんも登場。一際声援が大きかったような。まだまだ先になるでしょうが、早く甲子園のマウンドに上がれるように頑張って欲しいですね。
     晴れてはいるものの、寒い中で試合が始まりました。タイガースは福原、ジャイアンツは桑田の先発です。両チームとも、ほぼベストオーダー。特にジャイアンツは、仁志、二岡から始まり、8番清水、9番阿部と、いつものことながら反則だよ、この打線・・・。
     福原は初回から快調です。仁志、二岡と連続三振。高橋由もファーストゴロで三者凡退・・・と思ったら、名手シーツ、ボールが手につかずにエラー。寒さは福原より野手に影響しちゃったんでしょうか?それでも、高橋の盗塁を野口が刺して、初回は無失点。
     攻撃の方は、いきなり赤星が魅せてくれました。初球を叩いた打球は右中間へ。もう打球を見た瞬間、期待してしまったのですが、その期待通り、赤星は2塁を蹴って3塁へ。余裕の三塁打でした。続く藤本はバットを折りながらも、二塁内野安打で、赤星は余裕のホームイン。先制です。
     この日の赤星は7回の攻撃でも魅せてくれました。先頭でヒットで出た後、藤本がセカンドゴロ。赤星はフェイントをかけて元木が一塁に投げる間に二塁へ進塁。そして、藤原のサードゴロ、川中が一塁へ送球するやいなや、赤星は三塁へ。得点には結びつきませんでしたが、一瞬の隙をつく走塁は、相手にイヤな印象を植え付けたはずです。

     さて、この日の試合は、やはり雪が最大のポイントでした。
     2回からちらついてきた雪がほとんど吹雪状態になってきた3回です。福原が打たれてしまいます。清水のヒット、阿部の二塁打で無死2,3塁。で、このピンチに仁志に見事にレフトオーバーの逆転のタイムリー二塁打を完璧に打たれてしまいました。
     雪が影響したのかな、ちょっとまずいかなと思ったのですが、ここはさすが福原というところ。ニ岡をセンターフライ、そして高橋由、清原を連続三振に斬ってとり、とりあえず踏ん張りました。
     しかし、雪の影響はまだまだ、こんなものではありませんでした。降ったりやんだりの状況だったのですが、3回裏一死、赤星の打席で2−3になったところで、なんと中断してしまいました。スタンドから見ていても、ボールが見えないくらいの凄い雪でした。中断は仕方がないところでしょう。それにしても、雪での中断・・・長い観戦歴の中で初めての経験した。
     この中断の間、結構周りの人たち(銀傘の下にいる人たち)が中で休憩しようと移動を始めたのですが、屋根のないアルプスや外野のファンは、ほとんど動かずに応援してるんですよね。何か逆ちゃうかと思ったのですが、みんな熱いですね。そういえば、この日は新ヒッティングマーチのお披露目日でした。雪にも負けず、応援にも熱が入ってました。

     5分ほどの中断の後、雪も小降りになって試合再開。
     それでも雪や寒さは、確実に福原と桑田のピッチングに影響を及ぼします。
     まずは福原。ローズ、小久保と恐いところを討ち取った後、キャプラー、清水、阿部に三者連続四球を与えてしまいました。この寒さ、やはり細かいコントロールをつけるには厳しいですよ。見ているこっちも辛いんだもの。
     しかしこの場面、福原はまたも踏ん張ります。仁志を今度はライトフライに討ち取って無失点。粘ります。でも、このライトフライ、スペンサーの守備がちょっと危なっかしかった。捕球してくれてスタンド全体がホッとしたのが、よくわかりました。

     4回裏、今度はタイガースの攻撃で全く同じ状況が生まれます。シーツ三振の一死後、今度は桑田が金本、片岡、スペンサーに三者連続四球です。アウトカウントは違いますが、全く同じような展開。ジャイアンツの攻撃と対照的だったのは、ここからです。この満塁のチャンスに桧山がバッターボックス。去年の前半ならイヤなイメージがある場面ですが、この場面はきっちりとレフトオーバー走者一掃の二塁打です。スタンドに入ったかと思ったけど、あと少しの完璧な当たりでした。で、興奮冷めやらぬ間に野口もタイムリー二塁打で、この回、計4点。同じようなピンチを招きながら、踏ん張った福原と、踏ん張りきれなかった桑田の明暗が分かれたイニングでした。

     5回からは両チームとも投手交代。タイガースはルーキーの橋本です。彼のピッチングを生で見たのは初めてだったのですが、なかなかいいですね。タイガースには、「ドラフト4位は活躍する」というジンクスがありますが、今年もそのジンクスは生きていて欲しいし、やってくれそうです。

     7回からは中村泰の登板。競争の激しいタイガース投手陣の中でも今年のオープン戦では一味違ったところを見せてくれている選手の一人だったのですが、先頭の仁志のショートゴロを鳥谷が待って処理してしまったためにランナーとして出してしまったので、ちょっとリズムが崩れてしまいましたね。ニ岡にヒット、そして高橋には悪い癖が出てしまい、ストライクが入りません。四球を出してしまって無死満塁の大ピンチになってしまいました。
     中村泰はストライクが入らなくなると、本当に入らないんですよね。後藤のセカンドゴロでダブルプレーを取れなかったのも不運。流れが非常に悪く、矢野にも四球でまた満塁。川中は三振に取って一息ついたものの、亀井には押し出しの四球で、結局2失点です。ちょっと可哀想な登板になってしまいましたが、やはり四球はダメですね。特に中村泰には去年のストライクが入らない悪いイメージがあるので、やっぱり今年も?みたいな感じになってしまいます。でも、とりあえず、この状況で2点に抑えたのは成長かな。
     続く8回には三者凡退に抑えて、いい形での降板になったのは良かったです。

     6−4で迎えた最終回は、今季ストッパーを期待されている久保田の登場。今年の久保田は、本当に安心感があります。と言うか、何か不思議な雰囲気があるんですよ。先頭の江藤に詰まった当たりでヒットを打たれましたが、全く不安はありませんでした。関本のファインプレーもありましたが、後続をきっちり抑えてゲームセットです。
     オープン戦ながら、やっぱりジャイアンツに勝つのは気持ちがいい!

     それにしても、本当に寒い1日でした。結局、雪は降ったり止んだりだったのですが、降るときは吹雪、止めば太陽が顔を出すという極端な3時間でした。生涯初の雪での中断も経験できましたし、オープン戦ですが、ちょっと忘れることができない試合になったと思います。
     今年初の「勝利の六甲おろし」を満喫して、帰りは気持ちよく新幹線で祝杯!充実した日帰り旅行となりました。



     第37回 ナゴヤドームでの初観戦


     開幕から約1ヶ月。この間に調子の波、個々の選手の好不調はありましたが、タイガースは順調に滑り出すことができたと言ってもいいでしょう。チームとしての戦い方も、野手陣のコンバートや投手陣の再編成を含め、徐々に形になり始めたという印象です。
     ここまで、4/16のナゴヤドームのドラゴンズ戦、4/19の東京ドームのジャイアンツ戦、4/23、24の横浜スタジアムのベイスターズ戦と、4試合を生観戦することができました。全て勝ち試合、個人的にも、これ以上ない滑り出しになりました。
     特に、生まれて初めてのナゴヤドームの試合は、忘れることができない試合になりました。とにかく、この日の試合までナゴヤドームで12連敗という信じられない相性の悪さ。対ドラゴンズに関しては、甲子園では結構打ち合いになる印象があるのですが、ナゴヤでは本当に打てないのがこの球場での連敗のパターンです。
     開幕直後の「9点打線」のイメージがあったのですが、ちょうど、このドラゴンズ戦の前のカード、甲子園のジャイアンツ戦の2戦目辺りから、各打者が極端に打てなくなって、得点も2点、1点。そして、前日のナゴヤドーム12連敗目の試合こそ、最終回に5点取って形にはしましたが、実際にはルーキーの中田に完封ペースで投げられています。決して調子がいいとは言えない打線でのナゴヤドーム。またまた打てない試合になる雰囲気いっぱいでした。
     ただ、同率での首位攻防という試合。タイガースは安藤に連敗ストップを託します。打線も、なかなか持ち味を発揮できない藤本に代えて、今季初めて関本を先発で起用、打線のテコ入れで安藤を援護したいところです。

     安藤は毎回ランナーを背負う苦しい内容でしたが、去年までのセットアッパー時代に培った精神力はさすがです。簡単に点を与えることがありませんでした。
     一方の打線の方も、山井の前に沈黙。やっぱり、1点を争う「ナゴヤドーム恒例の試合展開」になってきました。

     それにしても、バックスクリーンに打者の成績が表示されるのを見て、ドラゴンズのクリーンアップのあまりにもの成績の悪さに、逆の意味で愕然でした。とにかく、打率、打点ともに酷いのですが、それでもタイガースと同率首位で戦っています。やはり、今年もドラゴンズ侮り難しを痛感しました。
     踏ん張っていた安藤が失点したのは4回。アレックスの暴走で助かったと思ったドラゴンズの攻撃だったのですが、谷繁にタイムリー二塁打を打たれて、遂に失点。それでも、この1点で止めたのは、さすがです。

     山井の前に金本の内野安打1本に抑えられていたタイガース打線がようやく反撃できたのは、6回でした。一死から矢野がサードゴロを打ったときは、さすがに、ここまで抑え込まれるのはマズイなぁと思ったところでしたが、立浪の送球が乱れてエラーになってくれました。ここで、早くも安藤に代えて桧山をピンチヒッターに送ります。その桧山に、山井はストライクが入らず四球で一死1,2塁。
     ここで赤星だったのですが、どうも赤星の調子は下降気味で、空振りの三振です。先週辺りにようやく調子が戻ってきた赤星ですが、この試合の頃は本当に最悪の状態でしたね。この日は全くバットに当たる雰囲気がありませんでした。
     チャンス潰えたかと思われたこの場面でやってくれたのは、今季初スタメンの関本です。今季初ヒットは同点タイムリーになりました。関本らしい、うまく右に打ち返したバッティングでした。これで関本も開幕です。

     同点に追いついて、タイガースは藤川を起用。4月を振り返って、やはり藤川の働きは大きかった。見ていても安心感がありますし、試合をきっちり作ってくれています。ちょっと登板過多かもしれませんが、この日のようにビジターで1点も譲れないで終盤というケースでは、やはり頼りになります。
     ビジターでこういう展開になると結構サヨナラ負けに遭遇することが多く、ちょっとヒヤヒヤものだったのですが、藤川の後もウィリアムス、久保田と惜しげもなく投入してドラゴンズ打線を抑えていきます。とにかく点が欲しい!
     10回表、脇役陣が舞台を整えます。矢野三振の後、守備から入っていた中村豊がライト前ヒットでチャンスメイク。前の打席では送りバントを失敗しているだけに、名誉挽回の一打でした。赤星はこの回も三振に終わりましたが、スタメン落ちしていた藤本が繋ぎます。そして、この脇役陣が作ったチャンスに、シーツがライト前タイムリーを打ち、待望の勝ち越し点!
     早めの継投が、この日は当たりました。10回裏は当然9回に引き続き久保田が続投で、ドラゴンズクリーンアップを抑えて、ついにナゴヤでの連敗ストップ!
     とにかく、1年近く勝てなかったナゴヤドームでの初観戦で辛勝ながらも勝てるなんて、本当にラッキーでした。ナゴヤでの勝利の六甲おろしは、また格別でした。日帰りでの遠征でちょっと疲れましたが、それも吹き飛ぶ勝利でした。

     とにかくタイガースが優勝するためには、苦手の克服がポイントです。このナゴヤもそうなのですが、ベイスターズの三浦やドラゴンズの山本昌、今年もきっちり抑え込まれています。今年は交流戦があるのでしばらく対戦はないのですが、やはり夏場以降の勝負どころでは、この日のナゴヤでの試合のように何とか克服して欲しいですね。



     第38回 復刻ユニフォームとタイガースの応援


     先月末の甲子園でのドラゴンズ戦での大逆転負けから神宮3連戦と、非常に重苦しい試合が続きました。やはり、7点差を終盤で逆転された試合の後遺症なのか、どうしても選手一人一人が「何とかしなければ」と、肩に力が入っているのが、傍目でもわかりました。明らかにリズムが崩れていました。この神宮の3連戦、連日応援に行っていたのですが、例えば、全く打てないわけではなく、ヒットや四球での出塁はあっても、きっちりダブルプレーに取られたり、また、その後でヒットが出たり。典型的な悪循環でした。本当に見ていても、重苦しかったです。
     続く、甲子園でのカープ戦。この3連戦も応援に行きました。正直、連夜の敗戦で滅入ってしまいましたが、この連敗は精神的なものが大きいと感じていただけに、甲子園に帰れば・・・という思いはありましたね。初戦は福原と黒田の投げ合い。まだまだ、連敗の重い雰囲気を引きづった試合でした。最終回、1点ビハインドの場面で出た、町田の「幻の」逆転サヨナラホームラン。結果的に、判定が覆ることなく、1点差での敗戦で5連敗となってしまいましたが、町田の一打が、何となく重苦しさを打破してくれたような気もしました。一瞬でも盛り上がりましたからね。あの感覚、神宮のときとは全く違うイメージを持つことができました。
     とにかく、チャンスに一打が出れば、イヤな雰囲気は一掃されるはず。そう信じて迎えた2戦目。初回に出た今岡の満塁一掃の二塁打が、タイガースを蘇らせてくれました。一年の戦いの中で、ターニングポイントになる一打になるかもしれません。
     結局、この試合、そして3戦目も快勝して、本当にスッキリした気分で交流戦に突入することができました。

     さて、その交流戦です。とりあえず、一巡しましたね。
     個人的には交流戦否定派なのですが、そもそも交流戦を否定するのは、その試合数の多さ。やはり各チームとの3試合×2は多いです。シーズンの25%を占めるわけですし、パ・リーグのプレーオフなみに日本シリーズの意味を無くしかねません。ただ、それもやってみて初めて違う面白さが出てくるかもしれないので、交流戦が終わった後、実際にオールスターや日本シリーズがどういう形で楽しめるかで判断したいなと思っています。

     交流戦前半を終わり、思いもかけずドラゴンズが失速したのは交流戦ならではの意外性でしたが、タイガースに関してはまずまず順当な戦いぶりではないでしょうか。あと一巡、この調子で乗り切って、またセ・リーグ各球団との対戦に向かって勢いを増していって欲しいところです。

     交流戦の話題としては、ホームゲームで着用している復刻ユニフォームですね。なかなか好評みたいで、いい企画だったと思います。
     実は、この黄色が目立つユニフォームが最初に採用されたとき、正直言って「なんじゃこれ?」と思った記憶があります。特に帽子のツバの黄色がベンチに並んでいる図を見たときに、小鳥の集団に見えたんですよね。今でこそあの黄色はタイガースのチームカラーとして認識されていますが、やはり当時のユニフォームの概念からすれば、かなり奇抜でした。
     ただ今回、改めて復刻という形で着用されたユニフォームを見ると、ちょっとかっこいいんですよ。懐かしさと新鮮さが混在した妙なイメージなのですが、多少リニューアルされていて、いい感じです。並べて比較したわけではないのですが、印象としては、黄色も若干抑えめにデザインされているような気がします。

     ゴールデンウィークに甲子園に行ったときに、この復刻ユニフォームのレプリカが売られていました。
     タイガースの応援に球場に来ているファンの人たちを見ていると、一人一人がいろいろな法被やジャージを身に纏っているのに気づかれるかと思います。特に最近は、本当にいろいろな種類のユニフォームが出てきました。この種類の多さは他球団に類を見ないんじゃないでしょうか。公式ファンクラブの特典のイエロージャージ、女性用のピンクのものから、各時代の復刻版。戦前の「阪神」ロゴのものまで登場してます。もちろん、現在の白黒ベースのユニフォームもあります。かくいう私は、たまにビジターユニフォームベースで「Tigers」ロゴのものを着用していたりします。
     甲子園のタイガースの応援は、4万もの人たちがみんな揃って応援しているというイメージで語られることが多いのですが、着用しているユニフォームをとってみても、実際は一人一人が自分勝手に応援しているという側面があります。もちろん基本となる応援パターンはあるので、マクロで見れば揃った応援なのでしょうが、ミクロで見ちゃうと本当にバラバラ。ユニフォームを揃えているわけではないですし、数で圧倒しようという意識もなく、個々人がとにかく好きなスタイルで応援しています。でもそれが集まって大きなエネルギーを生んでチームを後押しする。それがタイガースの応援のいいところだと思うし、凄いところだと思います。
     特にパ・リーグのファンの人たちには、この機会に、ステレオタイプで語られるタイガースの応援というイメージ以外にそういう部分にも注目してもらえると、また違った印象を持ってもらえるんじゃないかと思います。



     第39回 いまそこにある、タイガースの一体感


     長かった交流戦も終わり、リーグ戦が再開しました。タイガースにとっての交流戦は、なかなかいい結果が残りました。リーグ戦に戻っても調子の波は衰えず、と言うより、何か戦い方に安定感、力強さが出てきたように感じます。交流戦と通じて選手個々はもちろんのこと、チーム全体として大きくレベルアップしたような感じがします。
     この感覚は何だろうと思って考えたのですが、何より、全員で戦う姿勢がより一層出てきた点が一番に挙げられると思います。もちろん、開幕当初にそれがなかったわけではありません。しかし、開幕からの積み重ねの中で、投手陣の中での連帯感、打線の繋がり、投打の信頼感が徐々に熟成されてきて、それが交流戦の中で特に目立ってきたような気がするんですよね。

     本当にいいチームになってきたなぁと実感し始めたのは、交流戦後半のバファローズの試合でのことです。この試合、3点リードの後半、当然のように今年の必勝パターン、藤川の登板ということになったのですが、不運なエラーから始まり、珍しく連打で同点にされてしまいました。でも、こういう嫌な雰囲気の試合でもすぐに今岡の満塁ホームランが出て、きっちり勝利を納めました。
     今季のタイガースの勝ち方に、藤川を代表とする中継ぎ陣の踏ん張りが大きく貢献していることは疑いようがありません。必勝パターンで、7回という重要なイニングを藤川以降の投手がきっちり抑えていくことで、試合の流れを呼び込むという試合が何試合あったことか。もちろんこの日のように、そのパターンが崩れることが長いシーズンの中では何度かあるでしょう。それでも、そこで他の選手がカバーしていくことで、チーム全体の雰囲気も盛り上がるし、意識も高まっていきます。そういうところが際立ってきたところに、チームの力強さを感じる部分に繋がっているのかなと感じます。

     象徴的なのは、各選手のコメント。例えば、藤川が打たれた試合のヒーロー今岡は、「いつも頑張ってる球児がたまたまああいうふうになった。浜ちゃんのホームランもあって、勝つのと負けるのでは全然違うから…」。そして翌日、完封の福原が「ずっと中継ぎの連投が続いていたので、今日は始めから一人で投げるつもりだった」とコメントしています。
     藤川はじめ中継ぎ陣の奮闘は全員がわかっていることだし、一度失敗したからと言って信頼感は揺るぎません。そして、その失敗はみんなでカバーする。目標に向かって気持ちが一つになっているということが、よくわかるコメントだと思います。

     もちろんこの2人だけではなく、毎日の首脳陣、選手のコメントを見ていると、自分が前に出るわけではなく、必ず他の選手への気遣いが感じる一言が含まれています。なぁなぁの仲良しクラブではなく、他の選手に対してリスペクトを持って一つの方向に向かっているのが、本当に感じられるんですよね。ちょっと褒めすぎかもしれませんが、数年前の低迷期には決して感じられなかったチームの一体感が気持ちいいですし、本当にこころ強い。

     また、こういうチームの中で打線の方の象徴は、交流戦で一軍復帰した濱中です。
     濱中は交流戦がなければ、まだ一軍でやるという段階には至っていなかったでしょう。代打しか出番がなければ、少ない出場枠を「守れない」選手であり、リハビリ途上の選手に一つ使うことは、ベンチワーク的にも躊躇するところであることは想像できます。それでも「指名打者」というポジションがあるということが、キッカケにはなったでしょう。もちろん打つだけなら出来そうだという判断があったと思いますが、交流戦というキッカケが濱中を一軍に上げた一番の理由だろうし、また、そこでうまく機能できたことで、今後も濱中を出場枠の一つに入れるという判断が成り立ったと思うのです。
     もし交流戦がなければ、濱中はまず代打で確実に結果を残すことが求められるだろうし、そうなると、完全復帰への道はかなり厳しいものになっていたはず。濱中にとって、交流戦によってこうした復帰のステップを一つ繰り上げることができたと言う点では、これからの「完全復活」に向けて視界が開けてきたと思うし、当然持っている力からすれば、タイガースにとっても大きなプラスになるはずです。
     またこうした選手が活躍すると、本当に盛り上がりますからね。人気のある選手ですから、ファンが盛り上がるのはもちろんなのですが、選手たちもリハビリの苦しさを良く知っていますから、一気に一体感が出てくるんですよね。

    > 今年の公式戦もはや半分を消化しました。これから夏場にかけて厳しい局面は何度もあるでしょうが、この一体感がチーム全体にある限り、簡単には挫けることはないはずです。



     (第40回)今年初の甲子園詣で


     先月末、毎年恒例の甲子園詣でに行ってきました。ただ、今年は日程が変則で、夏の長期遠征前の甲子園が1カードだけでした。というわけで、その前の東京ドームの3連戦も含めて、5連戦で応援に行ってきました。ジャイアンツ戦は勝ち越したものの、甲子園でのスワローズ戦では初戦の快勝の後の2戦目、今季最悪の大敗を喫してしまいましたね。結局この3連戦は翌日も負けてしまい、15カードぶりの負け越しになってしまいました。
     オールスター前、かなり打線の調子が低調になってきていたときを思えば多少はマシになってきたとはいえ、決してチーム状態がいいとは言えない中でなんとか踏ん張っているといったところだったのですが、一方でドラゴンズが連勝で追い上げてきて、近来まれにみる、しびれた展開になってきました。
     一時期は独走?とも思いましたが、さすがにそんなに甘いものではないということですね。一昨年の独走優勝のようなことはそう何度もあるわけではないですし、むしろ、そういう形ではない経験を積むことが若い選手も多いタイガースにとっては非常に貴重な財産になるはずなんですよね。本当にワクワクしてきます。

     タイガースにとって大きな試金石になるのは、やはり夏の長期ロード。気分的にも体力的にもキツイ試合が続きます。ただ今シーズンは、長期ロード前のスワローズ戦の連敗で悪い流れで突入した割にはほぼ五分の流れでスタートしました。決していい状態ではないですが、まずまずのスタートでしょうか。
     この期間のロード、優勝した一昨年でさえ大きく負け越したということがクローズアップして報道されてしまうのですが、何故か去年は五分で乗り切ったということはスルーされています。この時期頑張れるかどうかは、やはり実力とモチベーションの問題だと思うんですよね。
     一昨年の優勝までは、やはり実力が伴っていませんでした。「死のロード」で勝てないと言っても、年間通じて勝てなかったチームに何を言っているんだって感じですね。優勝の前年、星野監督になってチームとしては夏場まで健闘しましたが、やはりチームとしての体力はありませんでしたね。
     優勝した年の負け越しは、完全にモチベーションの問題だったように思います。優勝という目標はあったにせよすでにマジックが点灯していた状態で、ロード中、負けても2位以下が潰しあいをして、順調にマジックは減っていきました。もちろん気を抜いたということはないでしょうが、ロードの負のイメージが勝つことよりも大きかったというのは、気分的になかったとは言えないでしょう。

     そういう意味では、今年はそんなことは言っていられない状況です。例えば、マラソンでも独走して、ただ記録だけを狙うというレースはランナーとしてもキツイですが、競ったレースの場合は、相乗効果でお互いに好記録が出ることが多々あります。実力の差がなければないほど、この効果は計り知れないものがあります。
     野球で言えば、直接対決でなければ、相手チームが負けなければ、絶対に負けられないということで、予想以上のプレーが出るということ。まだ、時期的にそこまで来ていない感じなのですが、今週の直接対決以降にそういう形が出てくるのではないでしょうか。そうなれば当然、「死のロード」のことより「首位争い」に話題はシフトするだろうし、選手も1試合1試合の集中力が増してくることが期待できますね。だからこそ、今年のロードは例年と違うタイガースが見れるのではないかという予感、期待があるんですよね。

     先週迎えたドラゴンズとの直接対決は、約1ヶ月ぶりの対戦でした。思いもかけない展開の試合が続きましたね。タイガースにとっては、初戦の落とし方はダメージの残りそうな展開でしたが、すかさず2戦目、3戦目とリベンジできました。両チームとも今後は、おそらく一進一退を繰り返していくでしょう。実際に、タイガースはジャイアンツ戦で2試合連続のサヨナラ負け。それでも最後はきっちりモノにして、ズルズルいきそうなところを踏ん張りました。ドラゴンズも簡単には負けてくれませんね。競り合いの優勝争いはファンから見ればヤキモキするものですが、こういう経験は滅多にできるものではありません。この緊張感、92年、スワローズとの優勝争い以来でしょうか。残り40試合弱、タフな試合の連続になるでしょうが、こういう状況を楽しみながら応援できるのは本当に幸せですね。


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