スポーツというおしごと by らい

    第11回 セフィコフィールドチームストア店員 〜その3〜

    第12回 番外編:就職活動 〜その1〜

    第13回 番外編:就職活動 〜その2〜

    第14回 番外編:就職活動 〜その3〜

    第15回 インターン編 〜その1〜



     第11回 セフィコフィールドチームストア店員 〜その3〜


     チームストアでの日々は楽しかったのですが、唯一の問題は8時間近く立ちっ放しになるので、仕事が終わり家に帰ってくる頃には、足がパンパンに膨らんでいるのです。
     毎日やっていると疲れが貯まってくるので、当時住んでいたホストファミリーに相談すると、「FOOT BATH」という足だけをマッサージしてくれるマシンを貸してくれました。
     これはマシンの中にお湯を入れるスペースがあり、そこに足を入れ、スイッチを押すとマッサージ器がぐるぐると足をマッサージしてくれるという優れものでした。
     これを毎日寝る前にやると、次の日は多少なりとも疲れは取れているんですね。サービス業で立ちっ放しになる人には、こういうグッズがホント大事だなと思います。

     ただ、どんなにやっても慣れなかったのは、例えば土曜日夜の試合に働いて日曜日昼の試合も働くということで、これは大変疲れました。土曜日は大抵夕方7時に始まることが多いので、大体試合終了すると10時で、店は更に一時間近く開けているので、11時位まで働いて、その後掃除をして家に帰るころには、大体12時超えることが多かったのです。そして次の日、昼12時半とかの試合になったりすると、店は朝10時に開けることになるので、少なくても9時前には起きてないとダメなんです。これは結構体にきますね。
     僕の場合、契約は、試合がある日ほとんど出勤になっているので、十何連戦とかですと、二週間近くぶっ通しでやることもありました。これは学校との約束で決めた時間数だけこなしてリポートを送らないとダメだし、更に期間は二ヶ月しかなかったので、最後のほうは試合が無い日でも出勤して時間を稼いでいました。
     試合がある日は、大抵シフトが二つあります。店は朝10時から夕方5時までのシフト1から夕方3時から試合終了(大体11時)のシフト2です。たまに試合が夕方三時半とかの試合になると、昼の12時半に出勤とか試合開始三時間前に出勤するようにとマネージャーから言われていました。

     ESPNというスポーツ専門テレビ局があるのですが、そこが日曜夜に一試合だけ放送する「SUNDAY NIGHT BASEBALL」という番組があるんです。そこに選ばれると、試合開始が夕方5時に変更になるんです(東海岸の場合時間は夕方8時になる)。これはESPNがMLBと契約をしているもので、ESPNが放送したいと言えばそれに合わせないといけないのですが、前売りのチケットが12時半になっているような場合、お客さんから文句がくるんですよ。「なんで時間が違うんだ?」って...。
     そこで僕は、ESPNとMLBが決めたことで、マリナーズが決めれる問題じゃないんだ、ということを説明するんです。

     僕が働いていた間はチームが好調ということもあり、二回「SUNDAY NIGHT BASEBALL」に選ばれたこともあり、日曜日の夜も働いていました。

     というわけで、チームストアで働くということは、グッズ以外の事も沢山知ることになったのです。

    (終)



     第12回 番外編:就職活動 〜その1〜


     さて、今回は自分の今の状態、つまり就職活動はどうなっているのか?ということをお送りしたいと思います。

     昨年の11月頃から、頻繁に、履歴書とカバーレターと言われる、『なぜ自分がこの仕事をしたいのか?』ということを書いた紙を作成し、カナダにある球団を除いたメジャー28球団に送ったことから、僕は自分の就職活動を始めました。
     ちなみに僕の場合は、インターンといわれる研修生を採用しているところを中心に探していました。大学のメジャーの性質上、(スポーツマネジメント)四年生最後のセメスター(セメスターは学期のシステムの一つで一年を二回に割っている)ではインターンをしなければならない。つまりそれは、最後に12単位を取る事になっていて、一週間に40時間でそれを12週、つまり480時間をこなし、更に毎週提出するウィークリーリポートと、最後の、サイトリポートと言われるインターンの仕事や球団のある都市、この仕事のいい点悪い点などを採点したものを提出して、晴れて卒業となるのです。
     しかしセメスターの間中に時間を終わらすことができても、野球のシーズンは長く、4月から9月まであるので、とても480時間では間に合わないということで、結局自分がカバーレターに書いたのは、インターンが例え終わってもこの球団でひき続き働きたいという事でした。

     それから仕事を見つけることについては、僕は、ほとんど球団の公式サイトをチェックしながら、自分の履歴書とカバーレターを出していきました。ただ、メジャーにもマイナーにも一辺に公募することはせず、一つでてきては出してみて、その次には又同じことを繰り返す、ということをやっていたために、やたらと時間がかかったのです。自分としては、この時点で、12月のウィンターミーティング(就職説明会)には行かないことにしていましたので(コストがかかりすぎる)、だったらそのウィンターミーティングの前にどんどんチームに声をかけていこう、例えチームで公募をしていなくても、ということで応募を始めました。

     さてメジャーに出したはいいのですが、なんの反応も戻ってこないので、やはりダメだったのか?と思われた矢先、西側にある某球団から、希望したポジションではないのだが、広報のインターンに応募してみないか?ときたので、そのまま広報のインターンの応募に変更してもらいました。しかしその球団については、それから何回電話をかけてもインタビューの予定などの話はでず、結局その仕事はオファーされなかったのです。
     そこで球団数を増やす為に、カナダにある球団を抜かしたAAAレベル27球団に出願しました。これもオファーされていようがされてなかろうが、関係無く出してみました。
     そして、いざ履歴書とカバーレターを出してみると、次の日には、なんとマイナーの1球団から声をかけてもらいました。それは西側に所属する球団で、そこではスタジアムオペレーションというセクションで、インターンを募集していたのです。早速担当の方から電話を貰い、インタビューをしました。すると向こうは、色々と僕に聞いているうちに、よかったらうちにこないか?と声をかけてくれました。その次の週がウインターミーティングだったので、そのウィンターミーティングのある週の間に決めて欲しい、ということだったのです。正式な仕事のオファーでした。ただこのオファーが出た時点での問題は、全球団に履歴書とカヴァーレターを出したばかりで、ほとんど返答が帰って来ていなかったことだったのです。

    (続)



     第13回 番外編:就職活動 〜その2〜


     さて前回も書いたとおり、AAAのあるチームから連絡が来て、仕事のオファーがされました。ただ問題だったのは、全球団の反応が返ってこないうちにオファーがきた事でした。ウィンターミーティングもすぐそこまで来ていたのであまり猶予はないようです。そこで電話で担当の方と話して、なんとかウィンターミーティングの期間中まで延ばせないだろうか?という話をしてそれまでの間にメジャーのチームからの反応を待つことにしました。

     しかしメジャーに電話をかけてみたりメールを送ったりしても反応が無いのは悲しいですね。結局時間が来てしまいました。担当者はどうしてもウィンターミーティングまでに決めて欲しいということで決断をしなければなりませんでした。自分としては、すべての球団からの反応を待ちたかったのですが、一度は行くという決心をして、担当の方の携帯電話に、自分は一月からチームで働くということを伝えたのです。
     担当の方はすごく喜んでくださったのですが、僕としては、電話を置いてから、自分の中でなにかが足りないという気持ちでした。仕事が決まったのに全然うれしくないんです。その日、自分のサイトや他の遊びに行くサイトに自分の仕事が決まったという報告をしていきましたが、自分で何かが違うと思いながら書いていたのです。
     結局夜中になってから、これは間違っているという結論に達しました。自分は今この仕事を受けるべきではない。他の球団からの反応を待つまでに今決めると、絶対後で後悔するだろうという結論でした。断るなら早い方がいいだろうということで、夜中ですが、担当の方の球団の留守番電話に、行けないというメッセージを残しておきました。電話を置いた後、理由をしっかり書こうと思い、今度はメールに、なぜ行けないのか?という理由を書き、送っておきました。そのチームには日本人の方も働いており、電話面接の時に話す機会があり、もし何かあったらこちらにも連絡して欲しいということでしたので、彼にも電話にもメッセージを残し、メールにも理由を書いておきました。
     次の日、担当の方から電話がやってきて、「突然どうしたのだ?」という事を聞かれたのです。 自分が安易に決めてしまって申し訳ない、これはすべて自分の非であるということを認めて、このオファーされたポジションを断ったのです。 素直に言ったのがよかったのか、向こうも判ってくれたみたいです。 今でも思い出すのですが、担当の方と話すまでというのが、一番気持ちがブルーになっていました。 なぜなら、自分の非であるということが自分自身、一番判っていたので・・・。
     自分のワガママを許してくれた担当者とチームに感謝したいと思います。ただ今でも思うのですが、もしその時点で決めていたら、一生悔いが残るだろうと思っていたので、この判断は間違っていなかったと思います。断った日の昼には気持ちが晴れていました。

     しばらくしてからメジャーの球団からの反応が始まりました。

     セントラル地区の某球団 ― うちはインターンを募集していないんです。
     ウエスト地区の某球団 ― あなたよりもっといい候補者がいたので・・・。
     イースト地区の某球団 ― あなたに合うポジションがあったらお知らせします。

     全滅でした。 そんな時、ある知り合いの方からメールが来たのです。

    (続)



     第14回 番外編:就職活動 〜その3〜


     前回、さまざまないきさつがあったことはすでに書きました。そしてそのあと、ある知り合いから、メジャーに知っている人がいるので応募してみないか?というメールがきたので、インタビューのチャンスがあるならどこでもかまわないということで、すぐにメールを出したのです。すると、しばらくして電話がきて、インタビューをするチャンスに恵まれることになりました。そこで、インタビューに聞かれるであろうことを色々紙に書いておいて、いざとなっても慌てないように用意をしておきました。

     それから後日、電話を向こうにかけて、インタビューが始まりました。ところが、話をしているのにもかかわらず、どこかインタビューを受けているという感じがしないのです。普通、インタビューが成功している場合は具体的な話になっていくのですが、いつまで経っても、その具体的な話にならない。前回のAAAのチームであったような事が、出てこないのです。
     そして結局、「それじゃあ仕事を依頼することになったら又電話をするから・・・」という話で終わり、自分としては、この時点であやしいなあと感じていたのです。普通、気に入られると電話インタビュー1回でオファーされると思っていたので・・・。そこで、すぐに「Thank You Letter」という感謝の手紙を担当者に出しておきました。ですが結局、そこからは何の反応も無いままその話は消えてしまい、球団もレベルも関係なくレジメを出す日々が始まったのです。

     それからの日々は、AAからAからどんどんレジメを出していきました。そして、ようやく具体的な話がくるころには、応募した数は200球団を突破していました。ところが、具体的な話がくると、そのほとんどは、お金はでないし部屋もないけど、それでもいいなら、という内容だったので、自分としては、そういうオファーを受けることはできなかったのです。というのも、お金がほとんど無い自分としては、どちらかが無い場合は、インターンをやる期間も生き残れないだろう思っていたからです。そして、段々と焦りがでてきましたが、このときはレジメを出し続けるしかなかったのです。
     結局、独立リーグなど残った球団も出し続けて応募した数は、240近くになりました。フロッピーディスクにレジメは全部キープしてあるのですが、その数はなんと三枚を突破してしまい、学校のディレクターと会うたびに、今日は何球団までいったと言われるくらいになりました。そして最終的には、240球団近く出して、6球団くらいからオファーがきたのです。
     そのうちの一つはあるウェブで見つけたあるメジャーチームのフロリダオペレーションでのインターンでした。ここは部屋があるというので、結構人気が集まったようです。ここにインタビューしてもらったときは、二次インタビューには進めませんでした。というのも、スペイン語できますか?と言われ、自分の弱点だなあと思っていた所を突かれたのです。スペイン語はやっておこうと思いながら結局やることが無かったクラスの一つです。マイナーの1/4近くをしめるラテン系の国からの選手がいる球団の場合は、やはり職員にスペイン語をしゃべれる人を求めているのでしょう。結局ここも無理でした。
     残りのほとんどの球団も、お金は出せないが、ただでいいならという内容でした。

     最後になり、二つの独立リーグのチームから、お金を出せるという返事を貰いました。一つは、部屋とお金が出せるというのもあるのですが、そこのオーナー自ら積極的に電話をしてくれたりして、好意を感じたのです。もう一つの球団は、お金はだせると言われたのですが、部屋は出せないと言われたので、最初の球団に行くことに決めました。
     その球団が独立リーグの一つ、Central League所属のAlexandria Acesでした。ルイジアナ州にあるこのチームが、自分に取ってのインターン先となったのです。



     第15回 インターン編 〜その1〜


     アレクサンドリアでのインターンの日々が始まりました。

     着いて次の日にいきなり仕事でした。州の高校野球のトーナメント決勝が球場であるので、そこのConcessionと言われる食事を売る売店でのサポートです。

     Alexandria Acesは独立リーグCentral Leagueで10球団ある中の東地区に所属しています。昔はTexas-Louisiana Leagueと言っていたのですが、チームがミズーリ、ミシシッピなどにもできたために名前の変更となりました。ちなみに所属チームは、東地区がAlexandria Aces(ルイジアナ州Alexandria市)、Fort Worth Cats(テキサス州Fort Worth市)、Jackson Senators(ミシシッピ州Jackson市)、Shreveport Sports(ルイジアナ州Shreveport市)、Springfield/Ozark Mountain Ducks(ミズーリ州Ozark市)。西地区は、Amarillo Dilla(テキサス州Amarillo市)、Coastal Bend Aviators(テキサス州Robstown市)、Edinburg Roadrunners(テキサス州Edinburg市)、Rio Grande Valley White Wings(テキサス州Harlingen市)、San Angelo Colts(テキサス州San Angelo市)。
     Acesは、このリーグが誕生した10年前からあるチームで、オーナーが代わり、今年から新しいオーナーの下、シーズンが始まりました。ただ、観客動員数では苦労しており、今はリーグ最下位の、一試合平均830人という状況です(6/8現在)。
     家は、球団提供の家で快適に暮らしています。ですが、自分が持ってきた荷物はほとんど開けていないまま、はやくも一ヶ月が過ぎようとしています。試合がある日はほとんど朝から夜中近くまで球場にいるので、家に帰るのは、ほんとに寝に帰るだけです。試合が無い日でも、球団事務所は平日なら開いているので、事務所で仕事の日々です。いつの間にか気がついてみると、労働時間は週60時間越えるのが当たり前で、二週間前には週70時間を越えてしまいました。やはり、普通のアメリカの会社のように週40時間という訳にもいかない理由は、夜から試合を行う為なのだと思います。夜に試合があるから朝は事務所を閉める、というわけにもいかず、ビジネスの電話は、朝から鳴るのです。

     ちなみにチームのGMは女性で、僕ら職員の間では敬愛の意味を込めて、General Motherと呼んでいます。GMは必ず僕に飯を食ったかどうかを確認します。この業界では長時間労働が当たり前で、体が資本となってくる為に、きちんと一日三食取るようにGMから言われます。そしてこのように、職員一人一人に気を使ってくれるのも彼女がGeneral Motherと言われる理由なのでしょう。
     普段、職員はオーナーの下、コンサルタント、GM、Director Of Media Relations/Play By Play Announcer、Business Managerと、僕を含めたインターンの二人が中心となって運営しています。その他に、Director Of Stadium Operation/Head Ground KeeperからなるGround Keeperの人たち、Home TeamとRoad Teamの二人のClub House Managers、もう一人のPlay By Play Announcer、Score Board Operator、PA Announcer、Concession、ゴミ広いをしてくれる人たち、チケットオフィスで働くパートタイムの人達などで構成されており、40人から50人近くの人数で、ゲームがある日を支えています。

     現場のほうは監督の下、一人のコーチ、二人のトレーナー、22人の選手で構成されています。前に働いていたマリナーズのように、チームストアだけで20人近くもいるような大型の組織とは違い、ほんとに少ない人数で動かしています。大きい組織と違うのは、色んな人と話すチャンスがあるということでしょうか?マリナーズのチームストア時代はチームストア以外で働いている人と会うチャンスはあまり無かったですね。

     さて次回は、具体的な仕事の内容です。


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