幸せ!?メジャー観戦記 by Set East

    第31回 04年12月16日 @ニューヨーク想い出編

    特別編 04年4月16日 阪神タイガース@明治神宮球場 by MB Da Kidd




     第31回 04年12月16日 @ニューヨーク想い出編


    〜I'LL LIVE FOR THIS!?〜の巻
    04年12月16日
    @ニューヨーク想い出編

     こちらに来てから早4年。SE(Set East)もついに凱旋帰国となったわけだ。感慨深いものは多少はある。もう「オラSE。いっちょ行ってみっか!」などと言って気軽に観戦に行く事はできなくなるのかと考えると、涙がちょちょぎれてくる。まさにいなかっぺ大将である。それにしても、走馬灯のようにいろいろな事が頭に浮かぶ。

     初めての観戦は、シェイスタジアムだった。あれは確か5月だったと思う。その時はまだ、ニューヨークのこの時期は気をつけないと風邪引くぞ、という事を知らないほどSEはナイーブだった。初体験の時は、誰でも失敗するものである。だが、そんなまだまだそれの楽しみ方も知らないSEにメジャー観戦の喜びを教えてくれた存在がいた。新庄である。

     シェイはヤンキースタジアムと違って、試合前の練習中、最前列まで突っ込めば、特定の選手に、ほぼ彼の目線で罵詈雑言を浴びせる事ができる。そんな中、古今東西例に漏れず、サインをおねだりする子供と、愛娘のためなら例え火の中、水の中、とばかりにハッスルするお父さん、という構図がSEの隣にすっかりできあがっていた。彼女の求愛の対象は、遅れて来たのか定かではないが、他の選手よりもちょっと遅めのアップをしていた新庄だった。

     そそくさとキャッチボールをし始める新庄。その小さい右手でボールを差し出し、溢れんばかりに目を輝かせながら彼を見つめる愛娘。「シィンジョー、サインくれよー。Little Kidが欲しがってるんだよ〜。」と必死に訴える愛娘のお父さん。そして、このシーンを目の当たりにし、すっかりお涙を頂戴してしまったSE。何とかこの愛娘にサインを・・・そう祈る愛娘。のメンバーたちに対し、新庄はすっかり無視を決め込んでいる。

     するとどうだ、なんとなんと、SEの隣に陣取っていたこの愛娘、ついに泣き出してしまったではないか。「このやろ〜、女の子を泣かす奴は許さない!」そんな衝動がほとばしったSEは、いきり立ちながら最終手段に出た。「新庄さーん、子供たちがサイン欲しいって泣いてますよー。」これにはさすがに良心の呵責が起きたのか、「オッケー、後で」と言って、にっこり笑ってこちらに向かって反応したではないか!愛娘ファミリーの期待を一身に背負ったSEは、我の手柄なり!とばかりに満面の笑顔で、彼らに新庄語を伝える。SEの言葉に、これまた満面の笑みで「サンキュー」と答える愛娘。

     しか〜し、現実はそんなに甘くなかった。一仕事終えたとばかりに、新庄の言葉に安心しきっていたSE。が、次第次第にキャッチボールの距離が広がっていくではないか。そして、しまいには外野に向かって走っていったではないか!「あの野郎〜」と思うと同時に、横からの視線が気になるSEは、愛娘ファミリーの方をチラ見してみる。予想通り、あれ、あれれ、あれれ〜、といった表情でこちらを見ているメンバーが数人。これでは忍び足で逃げ切る事もできそうにない、そう感じたSEは、本当に申し訳なさそうに(当社比2倍)みえるほど、気持ちを込めて、「後でって確かに言ったんだけどね・・・Sorry」と意を決して彼らに伝えてみる。すると、泣きべそかいている愛娘を余所に、ファミリーは「ううん、こういう事もあるよ、Thank You」と言ってにっこりと微笑む。

     今思うと、中々味のある初体験だった。これからもずっと、こんな誰も知らないストーリーが球場のどこかで生まれるんだろうな、そう思いながら、引越しの準備に励むSEであった。



     特別編 04年4月16日 阪神タイガース@明治神宮球場 by MB Da Kidd


    〜オイオイ、ここは甲子園か?〜の巻
    04年4月16日
    阪神タイガース@明治神宮球場

     さて、今月は当観戦記の執筆者であるSet Eastさんがさる事情によって忙しく、本当は私と一緒に行った巨人戦のことを書くはずだったのですが、その日彼は上記の理由の関係で試合の途中からやってきて、このコラムのネタとなるはずの木佐貫投手のピッチングを見逃してしまったため、ワタクシがピンチヒッターとして登場することにいたしました。
     まるで、藤村富美男さんの『代打、ワシ!』を彷彿とさせるような展開(汗)

     えー、ところが、このような前フリをしておいて、実は、今日のネタは巨人戦じゃないんです。昨日神宮にて観戦してきた試合、ホヤホヤの感動(?)をお届けしようという次第です。本当は巨人戦レポートにしようかと思ったのですが、それを覆すような驚きがあったのです。

     いちおうこのワタクシ、じんさんほどの筋金入りではないし、巨人も嫌いじゃないという極めて異端なとらきちなのですが、いちおう1981年以降ですから、とらきちになってはや23年。今年、ついに24年目に突入いたしました。したがって今日の試合、当然ながら、阪神の応援に回ったわけですが、実に驚くべき光景を目にすることになったのでした。

     さて、昨日の同行者は4人。豪州の6つの国代表のチームのひとつ、シドニー・ベースボールチーム監督のジョー・ヒルズと、アメリカ野球学会の好田さん、そしてこの2人のそれぞれの友人と私メという構成でありました。つまり、この5人のうち、4人までがとらきち。好田さんはワタクシよりもちょっと年上で関西出身の生まれたときからのとらきち、その友人の方も同様で、ジョーはさらにそれより上手の、1956年大阪に来て以来という大先輩のとらきちだったのでした。
     ということでこの私メ、実に頼もしい?諸先輩方とともに神宮に足を運んだわけです。

     だが、頼もしい方々は、何も私メの諸先輩方だけではなかったのでした。昨日の夕方、神宮に着いてまず思ったこと。

     『あれ?何だか黄色いメガホンが多い???』

     スタジアムのゲートの入り口にはラインバックのユニフォームシャツや岡田現監督の現役時代の16番のユニフォームシャツまでをも着ている猛者がちらほら見受けられ、へなちょこなとらきちを自認している自分としては、思わずたじたじとなってしまったのです。スワローズファンのトレードマークであるビニール傘なぞは一切見かけない。
     ワタクシ、この頼もしい方々を見たとき、おそらく神宮の観客席のうちの半分は、とらきちの御同胞なのであろうと予測したのですが、そこはワタクシの考えが甘かった。

     我ら一行の席は、バックネット裏の2階席。何ごとにも卒がなく、すばらしい段取り能力で我々を助けてくださる好田さんは、球場全体を見渡せる非常にいい席を用意してくれていたのですが、そこから眺めた光景は、まさに黄色いメガホンの海、海、海。何とライトスタンドから1塁側内野席に至るまで、黄色いメガホンに覆いつくされていたのでした。そして、センターバックスクリーンのスワローズ応援ビジョンとは関係なく鳴り響く六甲おろしの大合唱。ワタクシは思わず甲子園に来たのかと見まがうほどでありました。

     ちなみに試合の方は、今岡選手の先頭打者アーチのこともあって、初回にいきなり4点を先制、ピッチャーもエースの井川、6回までは4−2のスコアで、いい緊張感の中での勝ちムード。4連敗の脱出も見えてきたところで、何だか6回裏の攻撃から、周りが騒がしい。ジェット風船を膨らましている人がいっぱいいたのです。そして、スワローズの攻撃が終わると、一泊置いて、六甲おろしの大合唱。するとグラウンド整備員の方々が突然グラウンドに登場し、ライト側スタンドを中心に整列。

     『ぷしゅ〜ぅぅぅぅぅぅぅ♪』

     六甲おろしの合唱が終わると、耳をつんざくような激しい音とともに、いっせいにジェット風船が舞い上がり、その、青と白のユニフォームを着たグラウンド整備員の方々が、グラウンドに落ちた風船の回収をはじめたのでした。
     いやあ、数多の風船の舞い上がる様の壮観なこと。私はそこで、何となくジェット風船の騒音の世界の中へと危ないトリップをしておりました。思わず見とれてしまったのです。

     すると、MLBの試合を観にいったときに流れる、『タラリラッタラ〜♪』というオルガンの音のあとに観客が叫ぶ『Chaaaaaaaaaaaaaaaarge!』という掛け声からよりも数倍気合が入ったのか、阪神打線はスワローズの先発の石川投手をつるべ打ち。杉本投手に交代するまで、2点を奪って楽勝ムード。この時点でスコアは6−2。

     ところが7回裏に1点を奪われたあと、9回の裏に井川投手は稲葉選手に2ランを浴びて1点差。そこで、次の城石選手にヒットを打たれたところで降板。安藤投手にスイッチ。

     しかし、この安藤投手が乱調。ワンナウトはとったものの、フォアボールを連発してツーアウトフルベースという大ピンチに。同郷の士、ジェフ・ウィリアムスの兄貴分でもあるジョーはおかんむりで、とても日本語には訳せないきちゃない言葉でもって野次を飛ばし、早くジェフを出しやがれと悪態を突く始末。う〜ん、今日は波乱か?と思った矢先、ジェフが出てきて、マウンドに上がり、岩村選手に対してフルカウントと苦しみながらも、最後は内角低めにズバッと投じて、

     『ストライク!バッターアウト!』

     となり、ようやくジョーの機嫌は直ったのでした。

     ちなみに試合後の神宮球場周辺。あちこちから六甲おろしが聞こえてきたことはいうまでもありません。とらきちのみなさんの神経を逆なでするような内容の試合にならなくてよかった。そう思ってほっと胸をなでおろした昨日の夜のワタクシなのでありました。


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