スポーツ風土記 by 一豊

    第11回 「今年のスポーツを占う 〜女子ゴルフ編〜」

    第12回 「今年のスポーツ界を占う 〜女子陸上編〜」

    第13回 「今年のスポーツ界を占う 〜女子陸上編2〜」

    第14回 「2005・2・26 バスケットボール WJBLプレーオフセミファイナル観戦記」

    第15回 「2005年4月9日 四国六大学野球 春季リーグ観戦レポート」



     第11回 「今年のスポーツを占う 〜女子ゴルフ編〜」


     さて、前回は大相撲のお話をしましたが、残念ながら魁皇関が途中で休場ということになってしまいましたので、今回は気を取り直し、ここ1年急に華やかになってきた女子ゴルフの話をしていきましょう。

     昨シーズンは宮里藍や北田瑠衣、横峯さくらなどの若手プロゴルファーの台頭で、日本女子ゴルフ界は空前の人気を博しましたが、今シーズンも女子ゴルフの人気と注目度は、さらに大きくなるのではないのでしょうか。
     以前の女子ゴルフといえば、アメリカ女子ツアーでツアー優勝したり賞金女王にもなった岡本綾子や、中島常幸選手の妹である中島恵利華、あるいは美人プロとして知られ、日本女子プロ選手権も制した生駒佳代子などが活躍した1980年代後半にも人気を博しましたが、スポーツニュースにしばしば取り上げられるほど世間の関心が高かったにもかかわらず、そのことがトーナメントの観客動員につながるまでには到りませんでした。
     しかし、ツアールーキーの宮里が最終戦まで不動裕理と賞金女王争いを繰り広げた昨シーズンは、トーナメント中継の視聴率が上昇しただけでなく、これが大幅なギャラリーの増加を呼びました。しかもこれに加え、北田や古閑美保、馬場ゆかりなどの若手ゴルファーが次々とツアー優勝を果たし、賞金ランキングの上位に名を連ねたお陰で、空前の女子ゴルフ人気が生まれ、小中学生のジュニアゴルファーが増加してきたのです。このことは、いまの女子ゴルフブームが、将来にわたって長く続くものであることを予感させます。

     ちなみにこのブームの牽引役となっている宮里の実力ですが、早くも昨シーズン、賞金ランキング2位に入ったことから、1985年に全米女子アマチュア選手権優勝を果たし、1991年にプロテストをトップ合格した服部道子、あるいは全盛期の福嶋晃子を超えているのではないか、と私は感じています。
     彼女の強さの秘訣は、何といっても沖縄という地の利から来るものなのではないでしょうか。沖縄は、清元登子プロや坂田信弘プロが主宰するジュニアゴルフ塾が盛んな熊本県と共に、ジュニアゴルファーの育成が盛んな所としても知られています。それに加え、この県にあるゴルフ場の殆んどが、営業時間終了後に、小・中学生以下のゴルファーに対して無料でコースを開放していることがあるためなのか、今現在では、昨年日本女子アマを制した宮里美香や諸見里しのぶを輩出するなど、沖縄出身のジュニアゴルファーの数はトップクラスといえるほどに増えております。
     そんな素晴らしい環境で育った宮里藍のゴルフは、ドライバーで270ヤードを超える飛距離の有利さを活かし、積極果敢にバーディを狙ってくる、攻撃的なものです。そして彼女のゴルフは、これまで堅実と言われた女子プロゴルフの流れを大きく変えたのではないかと私は感じております。ドライバーの飛距離のことでいえば、前述の福嶋晃子も飛ばし屋として知られますが、平均スコアの面で言えば、昨シーズンの宮里は平均ストローク率(1ラウンドにつき72ストロークでイーブンパーが基準)で約70.6ストロークという成績を残し、日本の女子プロゴルフ選手全体でも不動裕里に続く2位に入っており、同3位に入っている福島のそれを上回っております。また、パーオン率(パー4なら2オンできた確率)も、その積極果敢さを裏付けており、女子プロゴルファー全体で4位の約69.3で(比較として、福島は約66.37、全体では14位)、このようにひとつのスタイルを確立している彼女は、早くもゴルファーとしては完成しているような気がします。これは、彼女が尊敬するアニカ・ソレンスタムが常に心がけているという「54ビジョン(全てのホールでバーディを狙う)」に倣った戦い方を身をもって実践した結果が、この数字につながったといえるのではないでしょうか。そしてこの数字は、彼女が海外ツアーに今挑戦したとしても充分順応出来るレベルあることを示しているのではないか、と私は考えています。
     彼女は20歳にして、全てのゴルフファンの共感を呼び、ライバルである若手ゴルファーにとっても大きな目標となるゴルファーに成長したのではないでしょうか。今年も賞金女王6連覇を狙う不動裕理を追う第1候補としての活躍をするでしょう。そして来年には、アメリカツアーに本格参戦してくれるものと思われます。

     もう一人の注目選手は、横峯さくらです。横峯は昨年のプロテストで合格しながら、合格順位が2位だったため、トーナメントの出場機会に恵まれず、苦しい戦いになるものと思われました。しかしプロ3戦目で、過去のローエストアマチュア(ベストアマ)獲得者の資格で出場した日本女子オープンにて2位タイに入り、出場3戦で約1100万円を稼いだ結果、見事シード権を取得しました。この実績は実にすばらしく、実力的には宮里と遜色ないことを示しているのではないでしょうか。これまでの女子プロゴルフ史上、少ない出場試合数でシード権を確定させた選手といえば、1997年の不動裕理が8月の新キャタピラー三菱レディスと五洋建設レディースでベスト5に入るなどの活躍で、出場11戦目にして約1500万円を稼ぎ、賞金シードを確定させた事が話題になりましたが、昨年の横峯の成績は、その記録を大きく更新しました。
     横峯といえば、昨年までコーチ兼キャディーだった父親の良郎氏との親子二人三脚での奮闘振りがしばしば話題になっていますが、昨年ステップアップ・ツアーのトーナメントとJLPGA新人戦に優勝したことで、プロ1勝後に良郎氏のキャディー解任するという公約を果たすことになりました。そこで今後はプレーと同様、この親子関係も話題になることでしょう。良郎氏がキャディに未練たっぷりということもあり、『父親がいつ子離れするか』ということにも注目が集まりそうです。
     そして、彼女はその良郎氏と、1ラウンドでアンダーパー1つで10万円の賞金、オーバーパー1つで10万円の罰金と言うユニークな契約を結んでいることからもわかるように、ハングリー精神も旺盛で、早くも来月、男子トーナメントであるパールオープン(ハワイ)にも参戦するなど、型破りなプランで、積極的な進化を遂げようとしております。
     そんな彼女のゴルフの特徴は、宮里同様、ドライバーの飛距離を活かした積極的なゴルフです。しかし本人も再々インタビューなどで述べているように、グリーン周りなどのアプローチやパットに課題を残しておりますので、これを修正してはじめて、親友かつライバルでもある宮里と賞金女王を競り合える、面白い展開が期待できるのではないでしょうか。要注目です。

     またそのほかにも、宮里藍や横峯さくらを追う、諸見里しのぶや宮里美香、金田久美子などのアマチュアの女子ジュニアゴルファーが、どれだけアマチュア公式戦やプロのトーナメントで上位に入るかが楽しみです。特に諸見里や金田は昨シーズン、プロのトーナメントで再三上位に食い込んでいるわけですが、今年からプロ生活が始まる諸見里はプロ1年生としての初優勝、そして金田はアマチュアとしてのツアートーナメント優勝の期待が膨らみます。
     さらに賞金女王争いも、海外ツアーに対してそんなに欲がなく、平均ストロークを良くして優勝回数を増やそうとする不動と、日本女子オープンや日本女子プロ選手権などの優勝をきっかけに海外ツアーへのステップアップを図る若手女子ゴルファーたちとが、どういった名勝負を繰り広げるかが今から楽しみです。
     いずれにしても今年は、日本の女子プロゴルフ界にとって大きな世代交代が起きるシーズンになる事は間違いないものと考えられます。



     第12回 「今年のスポーツ界を占う 〜女子陸上編〜」


     昨年の日本陸上界は、8月に行なわれたアテネ五輪にて、投てき種目では室伏広治(以下、敬称略)が男子ハンマー投げで日本初の金メダルを獲得し、女子マラソンでは野口みずきが金メダルを獲得した上に、男子4×100Mリレーと4×400Mリレーでは4位入賞を果たすなど、目ざましい成果を挙げました。
     今年は8月にヘルシンキで世界選手権が行なわれる事もあり、更なる躍進が期待されます。特にトラック短距離の末続慎吾やベテランの朝原宣治、あるいはハードルの為末大、投てき種目では先程も名前が上がった室伏や、やり投げの村上幸史、跳躍種目では棒高跳びの沢野大地など、男子陸上陣の競技レベルは国際大会の決勝種目で上位に進出する選手が多くなった事から、年々上がってきているのではないのでしょうか?

     しかしそれとは逆に、女子の方に目を転じてみますと、マラソン種目のレベルが世界でも最高峰の位置にある反面、トラック&フィールドでいえば世界レベルで活躍する選手が少なく、何か物足りないような気がするのです。そこで今回は女子陸上界を応援する意味を込めまして、今シーズンの日本女子陸上界を占ってみたいと思います。



     「トラック短距離&中距離種目」

     昨年12月末現在、100M種目にて世界選手権参加標準タイム(A標準11秒30以内、B標準は11秒40以内)をクリアしている日本選手は、11秒39をマークした小島初佳ただ一人だけです。とはいえ、昨年のアテネ五輪における優勝タイムは10秒93であり、しかも11秒31以内で走らないと準決勝レースには進出できないことから、11秒39のベストタイムを持ち、この種目の第一人者で日本選手権7連覇中の小島であっても、現状では、世界レベルの中での個人種目での活躍は難しいと思います。
     しかしそんな中でも、4×100Mリレーは、日本チームが国際大会での活躍が期待できる数少ない種目だと思います。事実、昨シーズンの日本チームは、5月の国際グランプリ大阪大会で43秒77の日本新記録をマークし、6月の日本選手権でも小島と坂上香織(昨シーズン限りで引退)が11秒39で同着優勝。更にリレーメンバーの石田智子と鈴木亜弓が同大会で11秒45の好タイムを出すなどの活躍で、この種目での五輪出場が目前でしたが、7月のアジアサーキットシリーズの大会におけるリレーメンバーの故障もあり、タイムが振るわなかった結果、あらかじめ指定された大会での平均タイムでは世界ランク16位以内に入れず、五輪出場は叶いませんでした。
     ですが、今シーズンは小島、石田、鈴木の3人がリレーメンバーに残り、更に昨年の日本選手権の200Mで23秒33の日本記録をマークして優勝した信岡沙希重や、若手で成長が著しい瀬戸口渚が100Mの自己ベストタイムを11秒58に伸ばした事から、この春に行なわれる国際GPレースやアジアサーキットなどで44秒を切るタイムを常に残す事が出来れば、世界選手権に出場する事は充分可能だと思います。

     また中距離種目から見てみますと、800Mで昨年2分0秒46の日本新記録をマークし、五輪出場を果たした杉森美保に私は注目しています。
     杉森のレースは先行逃げ切りを勝ちパターンとするレースで、6月の日本選手権のときも、前半から充分にスピードを維持して逃げ切るレースでした。そして、そんな彼女の今後における大きな課題は、スタミナ切れの克服です。この日本選手権のときは600Mまで1分28秒5で走りながら、最後の200Mで32秒0と失速。更にアテネ五輪の1次予選で2分2秒82の海外日本人最高タイムを出した時は、前半58秒台で走りながら、速いペースがたたり、後半失速をして落選するなど、後半のスタミナ切れが目立っています。今後、日本女子初の2分の壁を破るタイムをマークするためには、バテる終盤の200Mでひとふんばりして30秒台のラップを記録する事が必要ですし、またこのことが同時に、更なる記録更新を狙うため、あるいは世界の舞台で戦うための課題でも、あります。


     「フィールド種目」

     まずは投てき種目ですが、この中では昨年のアテネ五輪で初参加を果たしたハンマー投げの室伏由佳に、私は特に注目しています。

     彼女については読者の皆さんもおそらくご存知だと思いますが、アテネ五輪男子ハンマー投げ金メダリストである、室伏広治の妹です。いままでは兄の影に隠れてあまり目立っておりませんでしたが、昨シーズンの彼女は、最高のシーズンを送ったといえるのではないでしょうか?
     2004シーズンの室伏由佳は、5月の水戸国際で63M00の自己ベストを更新して2位に入ると、翌月の日本選手権では、自己ベスト記録を更に更新する66M12で優勝。そしてその2週間後に行なわれた競技会で66M68の日本新記録を出すと、アテネ五輪直前の8月1日の競技会では67M77をマークする快挙を見せ、何とたった1シーズンの間に、これまでの自己ベスト62M24から5M以上も上回る自己記録更新を果たしました。今後は、更なる日本記録の更新と、世界選手権への参加標準A記録である69M50をマークできるかどうかが続く目標となりますが、去年1年間の著しい成長ぶりを考えれば、彼女はこれを当然のように達成するどころか、近い将来は70Mを超える記録をマークできるものと私は確信しています。


     「跳躍種目」

     跳躍種目についてですが、私は走り幅跳びの池田久美子に注目したいです。

     4年前、池田が世界選手権の同種目出場した時、このテレビ中継のキャスターを務めた俳優の織田裕二が「日本にこんな選手がいたなんて知らなかった。」とのたまっていましたが、池田は福島大学陸上部に在籍していた時から、この種目の日本ジュニア記録をマークしたり、6M78の自己ベスト記録をマークするなど、陸上通の人達から期待をされてきた選手です。そして昨シーズンは、ライバルの花岡麻帆と毎試合のように勝ったり負けたりのデッドヒートを展開し、実績を上げてきました。
     アテネ五輪出場を賭けた日本選手権では、6M64の五輪標準B記録をマークしながら、池田に3センチ差をつけて優勝した花岡に五輪出場を譲りましたが、彼女もまだ24歳で、これから競技者として円熟期を迎えるだけに、更なる記録アップが期待されます。


     次回はこの続きで、トラック長距離部門です。



     第13回 「今年のスポーツ界を占う 〜女子陸上編2〜」


     読者のみなさまこんばんは。今回は前回に続き、今年の女子陸上、中でも長距離についての展望を述べてみたいと思います。


     「トラック長距離部門」

     長距離陣については前回の冒頭でも申しましたとおり、日本はマラソンで世界トップクラスの実力を持っているだけでなく、その下にあたる5000M、10000Mでも、実力者が多くいるにもかかわらず、国際大会で8位入賞すら果たせない状況が続いています。かつては97年の世界選手権10000Mで千葉真子が銅メダルを獲得したのですが、ここ数年は彼女のような世界に通用するスピードランナーが出ていない、というのが私の見方です。

     2005年現在、この種目については、大きな駅伝レースで何度も区間賞をマークする活躍を見せている、福士加代子の名前が真っ先に挙がります。
     福士は昨シーズン4月の兵庫リレーカーニバルで国内日本人最高の31分5秒68をマークしただけでなく、日本選手権でも5000Mで15分5秒07、10000Mで31分32秒09の五輪参加標準A記録のタイムを出し、長距離2冠を制しました。しかし本番のアテネ五輪では、10000Mには出場したものの、以前に故障した左ひざが悪かった事もあり、先頭から2周遅れの33分48秒06のタイムで、26位に終わりました。
     また、同じレースに出場した弘山晴美と田中めぐみ(現姓・大島)については、終盤に先頭集団から離され、惨敗という結果に終わりました。折角、10000Mを31分台のタイムで走ることが出来る選手が多くいるのに、なぜ五輪や世界選手権などの国際大会では活躍できないのか?そこで私は、その理由について考えてみました。

     まず第一に、国際大会レベルの大会での経験が、日本選手には足りません。例えばロシアやルーマニアといった東欧勢や、ケニア、エチオピアといったアフリカ勢の強豪国は、国際グランプリレースや賞金レースなどで他国の選手と走る機会を多く設け、選手に大きなレースの経験を積ませながら、レースを組み立てさせるようにしています。
     しかし日本の場合は、昔ながらの実業団チームやクラブチーム単位で練習するケースが大半を占めているために、なかなか海外合宿などを行なう機会を設けることができません。それに日本国内での大きな国際大会といえば、5月の国際GP大阪大会と9月のスーパー陸上横浜大会ぐらいしかなく、海外で腕を磨くという機会があまりない現状では、外国の強豪選手と走るチャンスが圧倒的に少なくなってしまうのです。他にはせいぜい千葉駅伝や横浜女子駅伝のような国際駅伝ぐらいしか、外国勢と競り合う機会がありません。そのために、たとえばアテネ五輪の10000Mのレースのときは、7000Mあたりまでは先頭集団が400Mを73〜74秒くらいで走るペースで展開しながら、終盤の勝負どころで前の集団が70秒くらいのペースに上げてしまうと、日本勢は先頭集団に付いて行けなくなってしまいました。日本で行なわれる国際駅伝やロードレースでは外国勢相手に勝負強さを遺憾なく発揮しているのに、トラックレースだと駅伝のように簡単にはいかない。それだけ大きなトラックレースでの勝負の駆け引きに慣れていないという事なのでしょう。

     もう一つの要因として考えられるのは、選手の育成の仕方の違いです。東欧やアフリカなどの強豪国は、クロスカントリーから始まり、トラックからハーフマラソン、そしてフルマラソンと段階を踏んで育てているのに対し、日本の場合はクロスカントリーの大きなレースが全国中学駅伝や滋賀での日本選手権、それに千葉、福岡で行なわれる国際クロスカントリーレースに限られ、あとは都道府県単位で細々と行なわれているくらいです。そういった現状を考えても今後は若手有望選手を一人でも多く育成するために、もっとクロスカントリーの大会を多く行なうべきだと私は思います。折角有望な選手がいながらトラックで活躍した後、脚作りが充分でないうちに駅伝やロードレースで無理な走りをして故障してしまう。そういったことを少なくするためにも、芝生や土の道を走り、トラックやロードレースよりも脚の負担が少ないクロスカントリーのレースを行なうことは脚作りや選手育成の為にも重要な位置にあるのではないかと思います。
     ちなみにここでいうクロスカントリーとは、日本出身の荻原兄弟が活躍した、キング・オヴ・スキーとして有名なスキー複合種目でいうクロスカントリーのスキーのことではありません。一般的に2〜3キロ前後の周回コースを丘陵地にて走るレースのことで、トラックレースやロードレースと違い、芝生や舗装されていない道を走ったり、さらにコースの中にある置き木を飛び越えたり階段道もあるため、長距離ランナーやマラソンランナーの脚作りやスピードアップにも効果があって、選手の育成にはもってこいの競技なのです。先日の千葉の昭和の森公園で行われた千葉国際クロスカントリーはNHK-BS1でも中継がありましたし、単発で中継があることもありますので、次の月に福岡の海の中道公園周回コースで開かれる福岡国際クロスカントリーの中継は、よかったらチェックしてみてください。通常の長距離種目と違い、モーターレースのF1を観ているようなスリルがあります。女子は、19歳以下を対象としたジュニア種目は4キロ前後のレース、20歳以上のシニア種目は4キロ前後のコースを走るショートレースと6〜8キロのロングレースが主流となっております。

     現在の世界の流れでは、日本国内の強豪ランナーは、少なくとも世界選手権参加標準A記録である31分40秒前後で走れば上位とされていますが、世界に目を向けると、ケニアのローラ・キプラガトやルーシー・ワゴイ、デラルツ・ツル、更にマラソン世界記録保持者でもあるイギリスのポーラ・ラドクリフといった強豪は、少なくとも30分台のタイムで走ることがあるくらい、各国の競技レベルが年々上がっています。ちなみにアテネ五輪の10000Mでの日本勢の最速タイムは田中の31分42秒28で、先頭からは実に1分20秒近い差でした。したがってこの現状を考えると、今後はスタミナ面だけでなく、世界にも通用するようなスピードと瞬発力をもったランナーが多く出てくることを私は願ってやみません。

     以上、2週間前より3部門に分けて展望を述べてまいりましたが、今シーズンは、2年後に大阪で行なわれる世界選手権や3年後の北京五輪へと大きくつながっていく日本選手の活躍がたくさん見られる事を期待しています。



     第14回 「2005・2・26 バスケットボール WJBLプレーオフセミファイナル観戦記」


     2月26日に私が住んでいる高知で、バスケットボールWJBL(日本女子リーグ)の2004〜2005年シーズンの王者を決める、プレーオフのセミファイナル第1戦が行なわれました。
     高知では4年前にもこのリーグの公式戦が行なわれたのですが、この時はレギュラーシーズンの試合だったため、あまり注目はされませんでした。しかし今回の試合は優勝をかけたプレーオフという事で、バスケットファンの注目も浴びる試合となりました。
     今シーズンのWJBLは、10チームがまずレギュラーシーズンで3回戦制の総当りリーグ戦を行ない、上位4チームがプレーオフに進出。レギュラーシーズンの1位チームと4位チーム、2位チームと3位チームとでそれぞれ対戦し、先に2勝を挙げたチームがファイナルに進出、先に3勝を挙げたチームが今シーズンのチャンピオンとなるのです。そしてこの日は、リーグ戦1位のシャンソン化粧品と4位のJOMO(ジャパンエナジー)が対戦する第1戦が行なわれました。

     ちなみにこのリーグは昨シーズンまで10シーズン以上もの間、シャンソンとJOMOの2強時代が続いたのですが、今シーズンは今年1月に行なわれた全日本選手権で日本航空が優勝し、リーグ戦でも2位に入ったこともあって久しぶりに激戦のリーグになったと思います。
     そんな中、シャンソンは今シーズン418得点を決め、206本の*1リバウンドを獲得して、得点王、リバウンド王になったフォワードの永田睦子と*2ブロックショットの多さに定評があり、今シーズン日本に帰化した韓国出身のハン・オンジュが軸となり、今シーズン全21戦中、日本航空に2敗したものの残る試合を全勝して、19勝2敗の1位でプレーオフ進出を果たしました。

    *1 リバウンド:シュートしたボールが外れて跳ね返ったボールをとること。
    *2 ブロックショット:守備側が攻撃側のシュートの際にボールを叩き落し阻止するプレーのこと。

     一方のJOMOは昨シーズンまでリーグ戦4連覇中だったのですが、今シーズンは昨年のアテネ五輪の日本代表だった大山妙子、楠田香穂里、浜口典子の3人の主力選手が引退するなど新旧交代が進む中、ポイントガード(主にフォワードにボールを渡す役割のポジション)の大神(おおが)雄子やポイントゲッターでフォワードの矢野良子、そして今シーズンスティール(守備側がドリブル中、相手のパスボールなどを奪う事。)ランク2位の59個をマークした立川真紗美の3人がよく働き、11勝10敗の成績で何とかプレーオフに進んでいます。

     この日の高知県民体育館は高知県内のバスケットファンが全て集まったかというくらいの、超満員の観衆。しかも殆んどの席は自由席という事で、早くも1,2階とも前の席から座席が埋まっていました。
     ゲーム前の練習時、私は1階席の前のほうで練習を見ていましたが、シャンソンの練習の際、ハン・オンジュの動きがやはり気になりました。というのも、ハンは身長2メートルで、リーグナンバー1の身長の持ち主だからです。それだけに、近くで見ていて風格を感じてしまいました。またシャンソン、JOMOの両応援団が2階席を陣取り、試合前から、軽快な音楽に乗って応援合戦を行なっていました。

     さて、試合です。私は試合前まで1階の席にいましたが、試合になってからは、全体の動きが分かりやすい2階席で観戦しました。
     第1クォーターはこの試合ホームゲーム扱いのシャンソンが幸先よく先制点を取りましたが、再三パスを相手にスティールされたり、シュートが決まらなかったりして、終始JOMOに主導権を握られる苦しい状況でした。しかもハンがフリースローを2つ続けて外したり、ポイントゲッターの永田がなかなか決められなかったりする状況で、最初のクォーターだけでいえば永田は5得点、ハンにいたっては得点無し、しかも、チーム自体13点しか取れない、シャンソンらしからぬ失態だったと思います。
     一方のJOMOは序盤から大神のボール運びと矢野のシュートが上手く決まり、前半はこの2人の活躍でチームのムードもかなり盛り上がったと思います。この2人に引っ張られた事もあって他の選手のシュートも決まり、一時は35−16と大量19点のリードを得て、前半の2クォーターを37−31と6点リードした形で折り返しました。

     前後半の間のハーフタイムでは、JOMOのチアガールのみなさんが華麗なダンスとパフォーマンスを披露して、会場を大いに盛り上げてくれました。今回の試合はTV放送されなかった事もありますが、両チームの応援団ともチームの攻撃の際、ビートの聴いた音楽をそれぞれ鳴らして、試合を大いに盛り上げようと努力していたと思います。ただ、私が観ていて思ったのですが、試合をじっと見たい人たちにとっては、こういった過剰な鳴り物の応援はかえって耳障りだったのではないでしょうか。私は選手たちが華麗なプレーをみせることによって試合が盛り上がるのが一番いいと思っているので、こういった音楽で盛り立てるのは如何なものかと思います。

     話を試合に戻しましょう。後半の第3クォーターはJOMOが前半の勢いをそのまま持続して、一時は46−36と10点差に差を広げたのですが、ここからのシャンソンの踏ん張りが本当に素晴らしかった。前半不調だった永田がこのクォーターで3ポイントシュートを2本決めたり、ハンがリバウンドを何本も獲るなど攻撃の歯車が噛み合って、レギュラーシーズントップの意地を見せてくれました。
     そして56−51とJOMOが5点リードして迎えた最終クォーターでは、逃げるJOMOが途中出場の立川が確実に得点を重ねる一方、シャンソンもキャプテンの三木聖美とこのクォーターで3ポイントシュートを連続成功させた相澤優子を中心に追い上げを見せ、焦ったJOMOの度重なるファールにも救われたこともあって一時は72−76と追い上げたのですが、大事な終盤の2分間でファールを重ねてしまい、そのスキに矢野と立川によるダメ押しとなるシュートを決めたJOMOが、85−75で試合を制しました。

     この日、JOMOは矢野と立川がそれぞれ24得点をマーク。しかも矢野は2ポイントシュートを7回中6回、フリースローを7回中6回成功させる活躍。立川も3ポイントを4回成功するなどシュートの安定度がとても高く、大神はリバウンドを9本取る活躍をみせてくれました。
     一方のシャンソンは、永田が僅か13得点しか取れませんでした。この試合の勝敗を分けたのは、永田と矢野の両エースの出来だったのではないかと私は考えています。

     その後、両チームの対戦は第2戦、第3戦とシャンソンが連勝し、ファイナルに進出すると同時に、JOMOのリーグ5連覇を阻止しました。
     そしてもう1試合の日本航空(リーグ2位)とトヨタ自動車(リーグ3位)の対戦は日本航空が2勝1敗で順当に勝ち進み、レギュラーシーズンの順位どおりにファイナルで激突する事となりました。

     今回の試合は優勝をかけたポストシーズンの試合であることもありましたが、対戦した2チームがアテネ五輪の代表選手を多く輩出したチーム同士の対戦であっただけに、見ていて本当に楽しめた試合だったと思います。こういったレベルの高い試合を生で観戦する事が出来て本当に良かったです。こういった試合がまたいつか観戦できる事があれば、また観にいきたいと思っています。

     「いや〜 バスケットって本当にいいものですね〜。(笑)」



     第15回 「2005年4月9日 四国六大学野球 春季リーグ観戦レポート」


     早慶戦や長嶋茂雄の台頭で有名なのは東京六大学野球リーグ、現在広島カープで活躍する野村謙二郎ををはじめ、数々の名選手を輩出しているのは東都大学リーグですが、四国にも四国六大学リーグというものがあります。そして4月9日のこの日、四国六大学野球の春季1部リーグ戦の開幕戦である高知大学VS松山大学の1回戦が、土佐山田スタジアムにて行なわれました。
     四国六大学リーグは東都大学リーグと同様、1部リーグと2部リーグに分かれており、その中でも現在1部リーグに所属しているのは、昨年秋のリーグ戦の優勝校である松山大学をはじめ、高知大学、四国学院大学、愛媛大学、香川大学、徳島大学の6校。公式戦では指名打者制度が適用されています。リーグの実力レベルは、前述の東京六大学や東都大学リーグ、関西学生リーグと比べると残念ながら決して高いものとは言えないのですが、そういった中でも、もともと甲子園の強豪校が四国に多いことや、四国学院大学出身の天野浩一投手が当リーグ出身選手としては初めて2001年のプロ野球ドラフト会議で広島に10巡目に指名され、現在セットアッパーとして活躍していること、あるいは、今年から始まる独立プロリーグの四国アイランドリーグではリーグ出身選手が多く在籍していることから、今現在、次第に注目を集めつつあります。
     そこで私は、昨年秋季リーグ優勝の松山大学と2位の高知大学との開幕戦シリーズを観に行ってまいりました。

     今回の試合が行なわれた土佐山田スタジアムは、プロ野球ファームの秋季教育リーグであるよさこいリーグの試合が行なわれたことがあり、両翼が99M、センターが122Mもあるとても広い球場で、高知県内唯一の全面人工芝の球場として知られています。
     この球場で少し変わっているのは、人工芝の上に砂をまいているという事です。元々この球場は3年前に行なわれた高知国体のフィールドホッケー種目のために建てられたものなのですが、人工芝だとボールの転がりが悪いので、これを良くする為に砂をまいたのではないかと思われます。
     それから、球場施設についていえば、内野スタンドは1つずつの独立した椅子席になっております。しかし、一般的にはこういう席だとゆったりしていって観戦しやすいと思われがちなのですが、実際は、バックネットから内野にかけて大きくネットが張られているがために、それが試合を非常に観づらくさせています。そして売店は無く、自動販売機もエントランスに4機しかない質素なものですが、男性用トイレは本当に綺麗で何と洋式の便器も2台ありました。また、障害を持つ方が野球を気軽に観戦出来るようにスロープもちゃんと設置されており、バリアフリー対応も万全の施設といえるでしょう。

     さて試合です。この日の松山大学の先発は松山商業出身の3年生であるエースの稲垣旭瞳(あきひと)。一方高知大学の先発は江津高校出身の2年生の西谷紳吾でした。

    ● スターティングメンバー

     松山大学        高知大学

    1 高橋   (2B)  1 小橋  (CF)
    2 藤田(大)(RF)  2 吉野  (SS)
    3 中野   (1B)  3 石村  (3B)
    4 小池   (DH)  4 室谷  (C)
    5 近藤   (LF)  5 本島  (RF)
    6 稲垣(力)(CF)  6 松田  (1B)
    7 曽我部  (C)   7 平尾  (LF)
    8 清水   (3B)  8 清家  (DH)
    9 藤田(佳)(SS)  9 西田  (2B)
    P 稲垣(旭)      P 西谷

     1回から3回までは両先発が譲らずに無得点でしたが、試合が動いたのは4回裏。この回、高知大学先頭の3番、石村哲也(川之江・4年)がライト前ヒットで塁に出ると、続くキャプテンの室谷明夫(天王寺・4年)がキッチリと送り、1アウト2塁。2アウト後、6番の松田慎吾(福知山成美・3年)がライト前にクリーンヒットを放ち、まずは高知大学が先制点を挙げました。
     更に6回には、ヒットとフィルダースチョイスでノーアウト1,3塁としたあとに5番の本島秀隆が(東稜・4年)がレフトへ犠牲フライを打ち、追加点。デッドボールで1アウト1,2塁にした後、8番の清家賢(志布志・4年)がライトへの2点タイムリー3塁打を放ち、稲垣をノックアウトし、この回で計3点を挙げると、7回にも1点を追加し、5−0と松山大を大きく突き放しました。
     投げては先発の西谷が、何と7回までフォアボールのランナーを2人許しただけというノーヒットピッチングを展開。ひょっとすると、生で初めてノーヒットノーランを見届ける事ができるのではないかと私に淡い期待を抱かせるほどの出来でした。
     ところが、なかなかそういう期待は実現しないもので、8回表に1アウトから6番の稲垣力哉(松山商業・3年)にライトへ大きな3塁打を打たれ、ノーヒットノーランの夢を断たれると、西谷は気落ちしたのか、代打・松田秀一(新田・3年)にも続けてライトへの2塁打を打たれ、1失点。その後、セカンドゴロの間にももう1点を取られ、2−5に追い上げられました。しかし9回には立ち直りを見せ、最終的には3安打2失点の好投で2−5で完投勝利をマークし、地元の高知大学が今季初戦を飾りました。
     結果的には少ないチャンスをシッカリとモノにした高知大学に今回は凱歌が上がりましたが、松山大学も前シーズンの優勝チームですので、今後きっちりと調整を行い、優勝争いにからんでくるものと思われます。

     四国の大学野球は全国レベルでいうと、ほかの強豪リーグと比べ、まだまだ発展途上だとは思いますが、もともと甲子園の強豪校が多い地域ですし、数々の名選手を排出してきた伝統もあるので、四国アイランドリーグの設立によるいい影響が出て、これから実力が更にレベルアップしていくことを、地元にいる私としては、非常に楽しみにしている次第なのです。


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