スポーツ風土記 by 一豊

    第21回 「四国アイランドリーグ初年度終了&あれこれ」

    第22回 「2005・11・19 四国IL選抜VSオリックス戦 観戦レポート」

    第23回 「くろしお通信陸上部廃部」

    第24回 「大相撲初場所、久々に日本人力士が幕内最高優勝」

    第25回 



     第21回 「四国アイランドリーグ初年度終了&あれこれ」


     今年から始まった新しい独立リーグである四国アイランドリーグは、これに所属しながら日米プロ野球機構へのドラフト指名を目指す選手たちが技術と腕を磨きあいながら、半年間に渡る公式戦を行い、10月16日に全日程を終了しました。
     公式戦は4チームがそれぞれ90試合ずつ行い、優勝を争う事になっていましたが、愛媛マンダリンパイレーツと香川オリーブガイナーズの2チームは、日程上の都合により、1試合減でシーズンを終えました。そして、高知ファイティングドッグスが10月10日に優勝を確定、シーズン通算46勝31敗13分けという成績で栄えある初代王者の座についたほか、2位には徳島インディゴソックスが入り、香川OGが3位、愛媛MPが4位という結果に終わりました。
     また、MVPにはシーズン通じて打率.280、ホームラン5本、36打点という成績を残した宮本裕司捕手が選ばれました。

     このように、無事に初年度のシーズンを終えた四国アイランドリーグですが、経営的な面で見てみますと、全179試合で19万1164人の観衆は集めたものの、高知での主催試合だけに限れば、観客総動員数は3万283人で1試合平均が673人、と4チームのなかでワースト1の結果となりました。また、その中では入場料が無料という試合もいくつかあったため、有料入場者数で言えば半分にも満たない数字を計上してしまい、その結果、全体での初年度収支は、残念ながら赤字で終わる見通しになるとのことです。
     石毛宏典代表は、今回の赤字の理由を当日チケットや年間チケットの売上の伸び悩みを主な理由としていましたが、私としては、それ以上にリーグを盛り上げるための宣伝や広報活動が不足していたと思います。みなさまはメディアから流れてくるニュースに触れたり、あるいは実際に観戦されたりしたときに、どうお感じになったでしょうか?
     またメディア露出の話ですが、高知のメディアの例で言いますと、確かに地元のニュース番組では週に1回、高知FDについて取り上げる企画を放送していました。しかし、肝心の試合中継についていうと、四国全体では、地上波での放送が開幕戦の愛媛VS高知戦だけにとどまり、ケーブルテレビでの中継も10試合ほどだったのです。NHKでは試合のあった夜に地域向けのローカルニュースで試合結果を短く伝えていましたが、それでも観客動員につながる報道だったかといえば、私には疑問に感じられました。したがって今後は、観客動員数やファンの数を増やすために、定期的なファンの集いや、街頭に選手や首脳陣が出てきての地道な広報活動を根気強くやっていく必要があるのではないかと私は思います。

     これについては当たり前のことだと世間一般では思われがちかもしれませんが、これからリーグ全体を盛り上げて規模を大きくするためには、こういう活動にこれまで以上に積極的に取り組んでいく必要があるのではないかと思うし、また私自身、そういうことをやっていってもらいたいと思っています。
     これに加え、高知には、ナイター設備が無い事という深刻な問題があります。たとえば、私はたまたま観ることができなかったのですが、10月1日に高知市営球場で行なわれた高知VS徳島戦では、日没後にまで試合がもつれる展開となったため、日没を過ぎたころからボールが大変見えにくくなっただけでなく、ピッチャーもキャッチャーミットの位置が分からないほどに試合を進めるにのが難しかったのだそうです。
     現在高知では、ナイター設備を1日でも早く設置する為にファン有志の募金が企画されているそうですが、私としてはそれをやる前に、せめてどこかの球場に小規模でもいいので、ナイター設備を早急に付けられるよう、行政に対する働きかけをしてほしいなと思っています。

     ちなみに来年のリーグ戦は前期・後期の二期制で行なわれ、それぞれの優勝チームによって総合優勝チームを決める事になりました。私としては、来年についていえば、優勝チームがどのチームになるかということにも関心はありますが、それ以上に、来月行なわれる一般・大学生選手対象のドラフト会議で、四国アイランドリーグから何人の選手がめでたく指名され、プロの世界の門を叩くことができるか、そして、そのことが来シーズンにどのようないい影響を及ぼしてくれるかということを楽しみにしています。


     最後に、先日おこなわれた日本シリーズの高知における放送事情についても触れておきます。

     2005年度のプロ野球日本シリーズはパ・リーグ覇者の千葉ロッテッマリーンズとセ・リーグ覇者の阪神タイガースとの対戦になりましたが、結果はパ・リーグ覇者のマリーンズが4連勝し、31年ぶりに日本一の座につきました。
     しかし非常に残念なことに、日本一を決める日本シリーズの地上波テレビでの生中継が、高知では第4戦しかなかったのです。ケーブルテレビを引いているごく一部の地域では試合の模様を全て生中継で観戦できたところもあったのですが、高知県内の大半の地域は、日本シリーズの中継を満足に見ることが出来なかったのです。
     今年の日本シリーズの放送権は第1、3戦はテレビ朝日系列、第2戦はテレビ東京系列、第4戦はTBS系列が獲得しましたが、残念なことに高知にはテレビ朝日とテレビ東京の系列局がなかったため、こういった状態になってしまいました。ちなみにNHKの衛星第1テレビでは第2戦の模様が放送されましたが、たとえそれがあったとしても、私はこのことを大いに不満に感じています。
     日本シリーズというイベントはプロ野球ファンの大半の人たちにとっては最も関心があるものであり、全試合をテレビ観戦することを楽しみにしていた方も多くいたはずです。しかし今回の場合は、系列局がどちらかといえば少ないテレビ朝日やテレビ東京が放送権を獲得した為に高知では放送されず、試合の結果をニュースやラジオで初めて知った方も多数いました。

     もし日本シリーズが昔のように全てデーゲームで行なわれた場合は、今年のように大きな騒ぎにならなかったと思われます。というのも、その時間帯の番組変更なら、容易に行うことができるからです。しかし現在のように、全ての試合がナイターにて行なわれるということになると、テレビ局のゴールデンタイムにかち合ってしまうため、地元の放送局にとしてはキー局の束縛があるため、泣く泣く放送できない状態に陥ってしまいます。したがってその結果、私の地元では、テレビ局に対してかなりの苦情が来たそうです。
     ですが、このことについては、事前にそういったことが起きないように、日本プロ野球機構(以下、NPB機構)やテレビ局などが申し合わせて、複数のテレビ局が同じ試合の中継を行なえるようにするための工夫が出来たはずだと思うのです。私はこのことについて、大いなる怒りの念を禁じえません。

     ちなみにこのことについては、高知FDの藤城監督も10月15日の高知新聞の取材のなかで、「国民的行事が放映されない地域があるとは不思議で仕方がない。こうした状況を改善しない日本プロ野球機構にこそ問題があるのではないか。」というコメントを残しておりましたが、今回の日本シリーズの問題にしても今年のパ・リーグのプレーオフ中継にしても、優勝のかかった大事な試合については、日本全国何処でもテレビで見られるような体制を早急に作ることが大事ではないかと私は考えています。



     第22回 「2005・11・19 四国IL選抜VSオリックス戦 観戦レポート」


     日米プロ野球機構所属球団へのドラフト指名を目指して選手たちが技術と腕を磨きあうことを目的として、今年からスタートした四国アイランドリーグ。この選抜チームが11月19日、高知市に秋季キャンプの為に訪れているオリックスバファローズの若手選手チームに胸を借りるため、オリックスのキャンプ地である高知市の東部球場にて交流試合を行いました。

     今回の試合が行なわれた高知市東部球場は、両翼が94M、センターが120Mというまずまずの広さを持つ球場。内野スタンドは背もたれのないベンチシートですが、外野席は芝生席で、スタンドには木々も多く植えられており、チョットしたピクニック気分で野球観戦が出来るようになっています。また球場の入り口付近には売店があり、ジュースや温かいうどん、おでん、おにぎりなどを販売しておりました。
     今回は四国アイランドリーグ側の主催ゲームで、大人1000円、子供500円のチケットを払って観戦する有料の試合となりましたが、地元メディアのニュースや口コミで試合を知った高知県内の熱心な野球ファンや、1年間四国アイランドリーグを熱心に応援してきたファンを中心に、約1400人が寒い中、球場に駆けつけたのです。

     四国アイランドリーグ(以下IBLJ)選抜の先発メンバーは今シーズン、リーグMVPに選ばれた高知ファイティングドッグス(以下FD)の宮本裕司捕手や同チームでホームラン・打点の2冠王に選ばれた山本健士内野手など、タイトルホルダー、ベストナインを中心とした布陣で、先発投手は今シーズン12勝を挙げた香川オリーブガイナーズ(以下OG)のエースである伊藤秀範投手。そして今シーズンの優勝監督となった藤城和明監督が選抜チームの監督を務めました。
     一方のオリックスは若手選手を中心とした布陣で、今シーズン公式戦3試合に登板した阿部健太投手が先発、ドラフト会議の為、キャンプを離れた中村勝広監督に代わり、新井宏昌打撃コーチが監督代行を務めました。
     さて試合です。両チームの先発、伊藤、阿部共に1回は3者凡退と無難な立ち上がりでしたが、先制したのはIBLJ選抜。2回裏、徳島インディゴソックス(以下IS)の金谷が2アウトからレフト前ヒットで出塁、宮本がフォアボールで続いたあと、8番バッターで高知FDのムードメーカー・杭田が阿部の初球を叩き、これがライト前へのタイムリーヒットとなって金谷が生還。すると1塁側スタンドのIBLJ選抜の応援団は大歓声。場内の盛り上がりも大きかったです。

     しかし3回表のオリックスの攻撃では、逆にチャンスを作られ、2アウト2,3塁から2番の坂口にセンター前ヒットを打たれ、2−1と逆転。続くバッター大西のときにランナー坂口に2盗を決められたあと、ノ−スリーからレフト前へタイムリーヒットを打たれ、さらにリードを広げられました。
     そこでその裏、IBLJ選抜はこの回先頭で徳島ISの1番グレアムがライトの頭上を越える3ベースヒットを放つと、続く高知FDの2番梶田がレフト前にタイムリーヒットを放ち、1点差に詰め寄って3−2。なおもノーアウト1塁から愛媛マンダリンパイレーツ(以下MP)の3番で、今季リーグの首位打者となった林が右中間を越える2ベースヒットを放つと、ノーアウト2,3塁というビッグイニングをつくれるチャンスになりました。しかしその後、4番山本はピッチャーゴロ、5番愛媛MP中谷は見逃しの三振。そして6番の金谷はショートゴロに終わり、阿部をノックアウトできなかったのです。

     その後、4回、5回は両チームとも無得点に終わり、前半の5回を終えて2−3と、オリックスが僅か1点リード。ここまではIBLJ選抜チームも健闘したのではないでしょうか。
     また、試合中は各チームの応援団がスタンドに集結し、それぞれのチームの選手が打席に立つと、大きな声で声援し、トランペットや太鼓の音が心地よく球場内に響いていました。そして、5回終了後のグランド整備の間のハーフタイムでは、高知FD所属選手と観戦に訪れた子供たちとのアトラクションが行なわれ、ラケットで風船を一生懸命運ぶ参加者に対して温かい声援が飛んでいました。

     ゲームが後半戦に入ると、徐々に両者の実力差が出てきました。まずオリックスは6回、4回から登板した高知FDの2番手・上里田(あがりた)に襲いかかります。サード林のエラーで出したランナーを足がかりに2アウト3塁と攻め、8番田中がレフト前にタイムリーヒットを打ち、4−2。続く7回には、3番手ピッチャーの高知FD・岸がこの回先頭の1番代打横山をデッドボールで出すと、続く坂口に送りバントを決められ、1アウト2塁。ここで藤城監督が4番手ピッチャーの高知FD相原にピッチャーを代えると、3番牧田がレフト前ヒットを打ち、1,3塁。続く4番の迎がライトに大きな犠牲フライを打ち、5−2とIBLJ選抜を突き放しました。
     一方のIBLJ選抜は後半になると焦りがあるのか、早打ちが目立ったり、狙いすぎて大振りになって三振するなど、勿体無い攻撃が目立ちました。しかしそれでも、投げるほうでは、いいピッチャーをドンドン投入させ、5番手で出てきた愛媛MPの西山投手が8回から2イニングを投げ、1点こそ失ったものの、ボールの走りやコントロールも良く、今季10勝を挙げたエースらしい実力を見せてくれました。

     その後試合は9回、ノーアウト3塁になると、オリックスは明徳義塾高校出身の筧を打席に送りました。すると筧はライトへ大きなタイムリー2ベースヒットを打ち、オリックスはダメ押しの1点を入れることに成功。ピッチングについては、結局5回まで阿部を引っ張ったあと、山本(省)〜宮本〜吉川の投手リレーで凌いで、6−2でオリックスが貫禄勝ちしました。

     今回の試合を私が見た限りでは、IBLJの選手たちの実力とオリックスの若手選手との実力の差には、まだまだ大きな差があります。しかしながら、IBLJ初年度としては、リーグが始まった時と比べると選手個人の実力も腕も数倍上達しているように感じましたし、特にピッチャーでは、今回先発したものの3回3失点で降板した伊藤や、5番手で投げた西山のリーグでの実力は、頭一歩抜けていますし、シーズンを通して、12球団にドラフト指名されてもおかしくない活躍を見せたのいではないかと思います。
     今年のドラフト会議では残念ながらIBLJからのドラフト指名選手は出ませんでしたが、選手たちが更に心技体ともにレベルアップして、来年こそはドラフトに指名される選手が1人でも多く誕生する事を心より願っています。
     IBLJの選手、そしてスタッフの皆さん、1年間本当にお疲れ様でした!!



     第23回 「くろしお通信陸上部廃部」


     いよいよ冬たけなわとなり、テレビ中継でもマラソンが多くなってきましたが、読者のみなさまはいかがおすごしでしょうか。

     いまの時期は毎年、日本各地で駅伝やマラソンなどの大規模なロードレースが毎週のように行なわれていますが、そんな中、高知県内では大変残念なニュースが飛び込んできました。
     それは高知県内唯一の本格的な実業団チームである、くろしお通信男子陸上部が本社の業績不振のあおりを受け、来年3月を目途に廃部する事が決定したことです。

     くろしお通信陸上部は1997年に発足し、これまで高知国体や国内外の駅伝大会やハーフマラソンで素晴らしい実績を残しており、2004年には全日本実業団駅伝(ニューイヤー駅伝)に初出場を果たしました。また2005年の世界選手権では男子10,000メートルの代表に選ばれ、毎年1月に行なわれる都道府県対抗男子駅伝でも2004年大会から2年連続で区間賞を獲得した大森輝和選手や、2005年の世界選手権女子マラソン日本代表にも選ばれた大島めぐみ選手のご主人で、自身も2003年のハーフマラソン世界選手権の代表に選ばれた大島健太選手など、世界にも充分通用できるランナーを多く輩出してきています。
     しかし、親会社の本業である携帯電話の販売が不振だったこともあり、2003年以降、新人選手の入部受け入れをしなかった事から、やむなく今回の結果に至ってしまいました。
     会社側は、クラブチームとして独自に活動する事も視野に入れていたそうですが、国藤隆志社長は、

     「今後わが社の業績が飛躍的に上がる事が難しく、選手のことを考えても廃部はやむを得ない。しかし支援先が見つかって部が存続できるなら、できる範囲の支援をしたい。」

     という談話を残していましたが、私としては、四国で数少ない実業団陸上チームが会社の事情によりわずか9年で廃部するのは、高知県内の陸上競技のレベルアップの面、特に長距離界の強化でいえば極めて大きなマイナスになると思います。
     事実ここ最近の都道府県対抗男子駅伝では、大学・実業団区間での大森、大島両選手の活躍のお陰で、昨年は15位、今年は高校生区間で苦戦したものの30位、と健闘を見せていました。しかし陸上部の受け入れ先が県外の実業団チームに決まった場合、大島選手は高知出身ですから代表チームには残りますが、大森選手は香川出身であるため、代表チームから抜けてしまいます。するとチームの戦力は著しくダウンするので、折角いままで着実に実績を伸ばすことでつくってきたいい流れが、切れてしまうかもしれないのです。
     また、くろしお通信は高知県が運営している春野運動公園の指定管理者となったばかりでもあり、今回の廃部によって管理業と会社の事業と両立させることは難しくなったため、会社にとっては大きな影響が出ることも予想されています。
     チームを指揮する松浦忠明監督は、「県内企業でチームを抱えてくれる所があれば一番ありがたい。」とコメントをしていますが、私も高知県内で受け入れが出来るチームがあれば、高知県の陸上競技界のレベルアップのことを考えれば一番望ましい事ですし、また、四国の実業団チームからでも充分世界を目指すことが出来る、というモデルケースをつくることで、地方レベルの競技団体の方々の励みにもなると思っています。としては思うのです。
     したがって監督や選手の皆さんには、この陸上部の廃部ということにめげることなく、今シーズンのロードレースで充分な実績を残してもらいたいと思っていますし、チームとしては1日でも早く、新しい受け入れ先が見つかることを願っています。そして大森、大島といった世界で活躍する選手が、こういったことで高知から去っていってほしくはない、と私としては思うのです。

    【参考web】
    高知新聞ニュースサイト



     第24回 「大相撲初場所、久々に日本人力士が幕内最高優勝」


     読者の皆さんこんにちは。一豊です。2006年もまた、どうか宜しくお願い申し上げます。

     先日まで東京の両国国技館で15日間にわたって行なわれてきた大相撲初場所は、玉ノ井部屋の大関・栃東が14勝1敗という優秀な成績で見事3度目の幕内最高優勝を果たすと同時に、8場所ぶりに日本人幕内力士の優勝という素晴らしい結果を残してくれました。

     今場所は昨年、横綱・朝青龍が6場所全てで幕内優勝を果たしたことから、日本人幕内力士の全員が、危機感をもって臨んだ場所だったのではないかと私は思っています。
     中でも今場所優勝した栃東は、持ち味の出足の早さが戻り、9日目にこそ雅山に不覚を取ったものの、小気味の良い相撲で白星を重ね、14勝という一場所での自己最高成績を残したのは見事だったと思います。

     また今場所は、敢闘賞を獲得した北勝力や技能賞を獲得したベテランの時津海がそれぞれ12勝をマークしたり、再入幕の北桜が序盤戦を盛り上げる相撲を見せてくれたことなど、平幕力士の健闘が目立った場所といえるのではないでしょうか?
     ただ、北勝力について述べさせてもらいますと、場所中の立会いの悪さが目立ち、終盤の大事なところで星を落とす時があり、そのクセを治す事が出来れば千秋楽まで優勝争いを持ち越すことが出来たのではないかと私は思っているので、少々もったいないような気がします。

     そして今場所最大の焦点は、何といっても新大関・琴欧州の活躍でした。琴欧州は、初日こそ緊張したか露鵬に敗れ、終盤の3日間にも3連敗するなど、らしくない所もありましたが、そんなプレッシャーの中で10勝5敗という成績を残した事は、新大関の場所としては及第点をあげてもいいのではないでしょうか?
     今年の大相撲は先程も申しましたように、昨年、朝青龍が年間6場所完全制覇を果たしたことから、全ての力士が「ストップ・ザ・朝青龍」という目標を掲げて臨む1年になると私は見ています。そして私は、琴欧州や黒海などのヨーロッパ勢の活躍にも期待しているのですが、それ以上に日本人若手力士が昨年以上に奮起してくれる事を期待したいです。

     ちなみに、その若手力士の中で私が特に注目しているのは、現在、幕下上位にいる境川部屋の澤井や、今場所、新十両となった錣山(しころやま)部屋の豊真将、そして幕内で20才の新鋭の稀勢の里です。特に澤井は埼玉栄高校の3年生だった一昨年、インターハイで個人優勝を果たし、アマチュア相撲の全日本選手権で3位に入る健闘を見せ、翌年初場所にてプロデビューして以来、圧倒的な相撲センスを発揮し、負け越し知らずで初場所には幕下上位まで番付を上げてきました。初場所ではプロの壁に泣き、残念ながら初めての負け越しを経験しましたが、それでも私は、澤井は少なくとも今年中には十両に上がってくるものと思っています。澤井は右四つの体勢になれば万全な力を持っており、その潜在能力は幕下にして既に三役級と言われていることから、今年は澤井が日本人力士として一番伸びる力士になるのではないでしょうか。

     また豊真将も、師匠である錣山親方仕込みの思い切りのいい、前に出る相撲で今場所新十両で10勝の成績を残したのは見事でして、この力士も将来力を付けてきたら、幕内でも充分通用できる力士になるのではないかと見ています。

     そして稀勢の里ですが、今場所は平幕下位で千秋楽でやっと勝ち越しを決めるという苦労を味わいましたが、まだ弱冠20才ということであることから、昨年の名古屋場所で12勝をマークしたときの力のある突き押し相撲を発揮できれば、今年中には三役昇進を果たし、大関候補に名乗りを挙げる力士になるのではないかと私は期待しています。

     来場所は初場所で優勝した栃東の3度目の綱獲り挑戦、そして13勝を挙げた関脇・白鵬の大関獲り挑戦という楽しみな材料のある場所となりますが、初場所後の横綱審議委員会の石橋義夫委員長も北の湖理事長も、栃東について、

     「日本人横綱誕生への期待は、みんな持っている。来場所13勝以上を挙げて、連続優勝またはそれに準ずる成績なら当然(横綱昇進を)諮問されるだろう。」

     というコメントを残し、久しぶりの日本人横綱の誕生にファン共々期待しているのです。

     ここしばらくは、朝青龍の一人横綱状態、独走状態が続いているのですが、今年はその朝青龍を脅かす強い力士が一人でも多く出てきて、大相撲界が昨年以上に活気付く事を大いに期待しています。
     そして私としては、何が何でも栃東や琴欧州といった大関陣の中から、早く新しい横綱が誕生してほしいと心より思っているのです。



     第25回 「高知より短信 2006年2月」


     2006年も2月に入り、12球団のキャンプインとともに、いよいよ野球のシーズンが始まりました。また、マラソンや陸上などのロードレースも、いまがシーズンたけなわとなっております。
     そこで今月は、高知の陸上界と球界の方で共に大きな動きがありましたので、これらについて触れていきましょう。


     最初に球界のニュースですが、今年でスタート2年目を迎えるプロ野球独立リーグ「四国アイランドリーグ」の今シーズンの日程が、2月16日に発表されました。
     まず、4月1日に高知市営球場にて高知ファイティングドッグス(以下FD)VS徳島インディゴソックス(以下IS)戦、香川オリーブスタジアムにて香川オリーブガイナーズ(以下OG)VS愛媛マンダリンパイレーツ(以下MP)の開幕2試合が行なわれることになっております。
     今シーズンは前・後期の2期制度を採用、前・後期異なるチームがそれぞれ優勝を果たした場合は、10月7日から行なわれる3勝先取制の優勝決定シリーズによって年間優勝チームを決めることとなりました。
     また公式戦は各チーム、前・後期ともに45試合ずつを戦い、中学・高校野球の大会が行なわれる7、8月を除いて、原則金曜〜日曜日の三連戦で試合を消化
    することになっております。そして今年は、四国外で初めての公式戦が8月20日、県営岡山球場にて、高知VS香川の組み合わせでナイトゲームによって行な
    われますが、これは高知FDのみならず四国アイランドリーグにとっても、大きな意味合いのある試合になるのではないかと私は考えています。
     というのも、私がこの連載の中で過去に何回か触れたように、高知県にはナイター設備がある硬式野球場が一つもなく、高知FDの昨年度の主催試合は全てデーゲームで行なわれていたため、特に7、8月に行なわれる試合においては、選手や観客の猛暑対策、ならびに観客動員の面で、これが大きなネックになっていたからです。
     しかし四国外とはいえ、8月に高知主催のナイトゲームが行われる事は、選手ならびに観客の猛暑対策にとって大いなる助けになるのはもちろんのこと、昨シーズン平均観客動員数が4球団のなかでワースト1だった高知FDにとっては、夏場のナイターで多くの観客動員を見込める希望が出てきたことで、この不名誉な状況を改善できる可能性が出てきたということです。しかも試合が行なわれる球場が、これまで阪神タイガースや広島東洋カープの主催ゲームが数多く行なわれた伝統ある球場であることや、かつ四国外で行なわれることを考えると、今後四国アイランドリーグが四国地方以外のファンを獲得できたり、そこまで行かなくても、四国以外の地域の野球ファンに知名度を高めることができる、大きなチャンスであると私は思うのです。
     今シーズンも各チームのホームスタジアム以外での試合が数多く予定されておりますが、普段生で野球を観戦する機会の少ない野球ファンのみなさんにとっては観戦するチャンスが増えますし、アイランドリーグにとっては、昨年以上に地域の町おこしに大きく貢献できるきっかけになるのではないでしょうか。


     また、各チームの収益を増やすためには何といっても入場券収入が軸となるのですが、今シーズンからは新しく回数券チケットが発売されることになりました。これは非常にオトクなチケットで、1セット5000円にてアイランドリーグの公式戦7試合が観戦できるのです。果たしてこれによってどれだけ観客動員数増加が見込めるかはわかりませんが、より多くのファンの方々に来ていただけるきっかけになればいいわけです。
     今シーズンは上記のとおり、前・後期制の採用によって昨年以上に白熱した優勝争いが行われる事が期待されますが、熱のあるゲームを見せることでリーグを応援するファンが昨年以上に増え、選手同士がより懸命に切磋琢磨することでリーグ全体としてのレベルが上がり、またリーグで活躍する選手達の中から日米プロ野球のドラフト会議で正式に指名される選手が1人でも多く誕生する事が一番大事なのではないかと私は考えております。


     もう一つは、くろしお通信陸上部の活動に関する続報です。
     くろしお通信陸上部は昨年(2005年)12月に自社の携帯電話販売事業の営業不振により、コスト削減のための廃部が検討されるといったゴタゴタが続いたため、その関係上、3月に、昨年の世界陸上男子1万メートル代表の大森輝和選手、1月に広島で行なわれた都道府県男子駅伝で高知チームの一員として3区を走った宿毛工業高校出身の東卓弥選手、それに松浦忠明監督の3人が、香川県高松市に本社がある四国電力男子陸上部に移籍することとなりました。
     ただ、3人とも高松市の本社ではなく、高知市の高知支店に契約社員として入社するため、活動の拠点はこれまで通り高知県、全日本実業団駅伝の予選・本戦では本社のチームと一緒に戦う、という形になっています。
     ちなみに四国電力の陸上部は、男女共に部員を四国出身選手に限定してはいますが、今シーズン行なわれた男女の全日本実業団駅伝には、揃って出場を果たしている強豪チームです。今回松浦監督が男子陸上部の新監督に就任し、大森・東両選手が加入したことで、チームのこれまで以上のレベルアップが期待できますし、特に長距離区間での活躍が期待される大森選手は、今後は国体や日本選手権の個人種目ではもちろん、駅伝でも重要区間として四国電力チーム、高知県チームの中核として大いに奮闘してくれることでしょう。
     一方、くろしお通信陸上部自身の方は松浦忠明監督に代わり、仲野明コーチが新監督に就任し、今後は2人の選手と共に陸上部の規模を縮小して、活動を続けていくことになりました。しかし残念なことに、主力選手の一人であった大島健太選手は、妻の大島めぐみ選手が活動の拠点としている関東地区の実業団チームとの移籍交渉をしているということで同陸上部のさらなるパワーダウンは避けられないため、今後この陸上部が再び全日本実業団駅伝の舞台に立つことができるのは、少し先のことになりそうです。
     ただし大島選手は、今後も、都道府県男子駅伝では「ふるさと選手」制度で高知チームのメンバーとして出場することができるので、関東のチームに移籍したからといって、完全に高知との縁が切れるわけではありません。また、部に残った2人の選手には、これに負けることなく力を付けて実績を残してほしいですし、大森選手に次いで高知を代表するトップランナーに成長してほしいと私は願っています。


     このように、今回のくろしお通信陸上部の廃部騒動は、結局、陸上部の規模縮小と有力選手の移籍という形で決着しました。しかし部自体が残り、移籍した選手もこれまで通り高知で活動するということで、私はいい形で決着がついて本当に良かったと思いました。
     今年の都道府県男子駅伝で高知チームは過去最高の10位という成績を残しましたが、大森、大島といった有力選手が底上げをしてくれたお陰で中学・高校生のランナーの実力が上がっていますので、今後もあらゆるレースで高知の選手が活躍することを楽しみに待ちたいと思います。そして来年こそは都道府県男子駅伝で、悲願の初入賞を実現してくれる事を祈っています。


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