ICHILAUのスポーツ博物学 by ICHILAU

    第11回 リアル・ワールドシリーズへの途 〜後半〜

    第12回 私的NPBドラフト改革案<

    第13回 プロのピッチャーの球を体感しよう 〜その1〜

    第14回 プロのピッチャーの球を体感しよう 〜その2〜

    第15回 プロのピッチャーの球を体感しよう 〜その3〜



     第11回 リアル・ワールドシリーズへの途 〜後半〜


     皆さまこんにちは、ICHILAUです。
     前回に続いて今回も、「真のワールドシリーズ」についてのお話です。

     前回、「真のワールドシリーズ」はMLB王者と「その他の世界王者」の対戦が望ましい事を書きました。そして「その他の世界王者」を決める為には「世界クラブ選手権」を新設するのが良い、と書きましたが、今回はその「世界クラブ選手権」について書きたいと思います。

     まず「世界クラブ選手権」の開催時期が問題になるでしょう。
     それは、NPBなど極東3リーグは秋閉幕、カリブウィンターリーグは春閉幕なので、どちらに合わせても6ヶ月待つチームが出てしまうからですが、「世界クラブ選手権」の王者がMLB王者と「真のワールドシリーズ」を戦う事を想定すると、MLBのポストシーズンゲームと平行して10月に開催するのが妥当だと思います。

     次に開催地ですが、現状では野球の人気が高い極東とパン・カリブで持ち回りの開催が良いでしょう。

     さて出場チームの選出ですが、最初はシンプルに各国リーグの優勝チームに出場権を与えるやり方で良いと思います。現状ではドミニカ、プエルトリコ、ヴェネズエラ、メキシコ、キューバ、カナダ(2003年から開幕)、パナマ、ニカラグア、コロンビア、日本、韓国、台湾、中国、オーストラリアの各国リーグ優勝チームが「世界クラブ選手権」への出場権を得る様にするのが妥当ではないでしょうか。
     また欧州には「ヨーロッパ・チャンピオンカップ」と呼ばれる野球の国際大会があるので、その大会の上位2チームも「世界クラブ選手権」へ参加させるのが良いと思います。(ヨーロッパ・チャンピオンカップについては、こちらをご確認ください。)

     「パルマ」や「FCバルセロナ」などサッカーファンにも知られた名前を「世界クラブ選手権」で聞く事になるかも知れません。今後、野球の底辺が今より広がった時代が来た時には「世界クラブ選手権」への予選大会も整備する必要がありますが、現状では上記の16チームで「真のワールドシリーズ」への出場権を争うのが良いと思います。

     さて、ウィンターリーグに参加した選手は、当然ウィンターリーグ終了後に新たな所属チームを探す事となります。
     従って、ウィンターリーグのチームのメンバーはそれぞれの道を歩む事となり、ドミニカなどのチームを10月の「世界クラブ選手権」へ出場させるとなると、秋になった時に所属選手を呼び戻してチームを再結成しなければなりませんが、単純に事が運ばないケースも出てくるはずです。
     例えば、ウィンターリーグでの戦いを終えた選手は、MLB入りしたり、他のリーグに参加してそちらでも「世界クラブ選手権」への出場権を得るケースも出るでしょう。
     しかし、この様なケースに関してはMLBに協力を仰ぎ、『MLBでプレーオフの進出を逃したチームの選手は「世界クラブ選手権」へ招集できる』と言う規定を作る事で対処できるのではないでしょうか。
     また、選手を他球団に取られたチームは、やはりMLBのチームでプレーオフへの進出を逃した選手を補強選手としてチームに加えられる様にすれば良いと思います。
     これらのケースとは別に、MLBでプレーオフへの進出を逃したチームの選手が、故国のチームに補強選手として加わって「世界クラブ選手権」に参加出来れば、「世界クラブ選手権」の価値は大幅に高まる事でしょう。
     これを2002年シーズンに当てはめれば、S・ソーサ、I・ロドリゲス、F・ガルシア、朴贊浩、イチロー、野茂などが「世界クラブ選手権」に参加する事になります。
     また、例えば日本で巨人が優勝してMLBでヤンキースがプレーオフへ進出できなかった年には、「世界クラブ選手権」に限って、松井が巨人の一員としてプレーする事が可能になるわけです。
     日本野球界からのMLBへの選手の流出が問題になっている昨今ですが、MLBへ進出を果たした日本人選手がこの様な形でも日本野球界への還元を出来れば、日本の野球ファンにとっても素晴らしい事ではないでしょうか。

     現在MLBのポストシーズンを勝ち抜くには、最長19試合ですから、「世界クラブ選手権」がMLBのポストシーズンと歩調を合わせる為には、「世界クラブ選手権」の大会方式は、19試合以下で決着する方法が良いと思います。
     2組に分けて1組8チームでの2回戦総当たり+1位同士の5戦3先勝シリーズ(計17試合〜19試合)或いは16チームで1回戦総当たりの計15試合という方法が妥当でしょう。

     そして、この話題を終わる前に、「真のワールドシリーズ」についても触れたいと思います。

     「真のワールドシリーズ」の大会方式ですが、最初は開催地をMLBのフランチャイズ都市に固定して、MLBの現行のワールドシリーズの後に7戦4先勝シリーズで行うのが良いと思います。
     「世界クラブ選手権」から勝ち上がったチームは、その国に縁の深い都市(日本のチームならばシアトルやロス・アンジェルス)の球場を借りて、そこでホームゲームを戦えば、移動などの負担も増えず、良い方法なのではないでしょうか。

     最後に「世界クラブ選手権」及び「真のワールドシリーズ」の存在意義ですが、国内リーグの国際的な上位大会を続ける事で、中国やオーストラリア、イタリアのチームにも、アイデンティティーを与える事ができるのではないでしょうか。
     また、それらの野球後進国のチームが国際的に活躍すれば、大きな関心を集める事にもなるでしょう。
     NPBは日程が現在より過密になりますが、MLB以外での最高のリーグとして世界一への戦いに加わる事で、NPBの国際的な地位は上がっていくと思います。



     第12回 私的NPBドラフト改革案


     皆さんいかがお過ごしでしょうか。
     NPBの開幕は明日にせまり、松井選手のMLBデビューもいよいよ目前ですから、野球ファンのみなさまにとっては胸の躍る季節となっているのではないでしょうか。
     ただ今回はNFLネタを仕入れましたので、唐突で季節はずれですが、比較としてNPBのドラフトについてのお話をしたいと思います。

     読者のみなさまご存知の通り、NPBの現在のドラフト制度は多くの不評をあつめています。
     まず、制度が度々変わる点。と同時に制度自体が複雑で判りづらい点。そして「一部の選手と球団が得をする不公平な制度である」という批判もあります。
     また、高校生にはその権利を与えず、クジに運命を託すのは不公平である上に、高校生以外のアマチュア選手には、自由に球団を選ぶ権利を与える事は、戦力拮抗というドラフトの目的に反する事です。
     そのため、ドラフトの改善案として、MLBなどで行われている完全ウェーバードラフトの、NPBへの導入を提案する人もいます。完全ウェーバードラフトとは、前年度のシーズンで下位になったチームから、選手を指名できる方式なので、弱いチームに良い選手が入る可能性が、高くなりますが、この方法の場合、アマチュア選手は、自分からプロチームを選ぶ事が一切できません。基本的人権の中の「職業選択の自由」も、認められているはずの人間が、野球やバスケットボールを職業に選んだ場合に、自ら就職先を選べないのは不思議な話ですが、これは、リーグを形成するチームには、共同体としての一面があるためです。

     このトピックに関しては、「baseball wind プロ野球の論理学」の第4回ならびに第5回にて詳しく扱われております。

     以下は引用です。

     「プロ野球やJリーグの球団(クラブ)は,歴とした株式会社という法人企業です。法人企業であるからには,何か商品を生産し,販売しているはずです。ところが,これらの企業は単独では何も商品を生産することができません。プロスポーツにとって商品はゲームになりますが,このゲーム,一球団(企業)では成り立たないのです。これは,スポーツの世界では当然の話ですが,経済の世界では奇妙なことなのです。」

     このように、一見すると別々の存在にみえる各球団も、実は互いの協力が不可欠であり、戦力の偏りを防ぐために、ドラフトのような制度で選手を分配するのも、リーグの発展のためには、必要な事です。一部の選手が自由に球団を選択でき、そのために、一部の球団が利する現在のNPBのドラフト制度に非難が集まる理由も、ここにあります。
     しかし、このような、リーグを共同体として捉える考え方には、一つ問題があります。それは、「リーグを構成するチームが独立した存在である」との認識が一般的である点です。
     例えば、熱狂的な阪神ファンの有望選手に、上記の共同体の原理を話して巨人入りを強要しても、本人が納得する事はできないでしょう。そして注目すべき点は、完全ウェーバードラフトを採用しているため、NPBの模範として上げられる事も多いMLBやNFL(アメリカンフットボール)でも、大物選手がドラフト上位指名権を持ったチームへの入団を拒否する場合があることです。
     しかし、これらMLBやNFLがNPBの場合と違う点は、ドラフト上位指名権を持っていなチームが、上位指名濃厚の大物選手を獲得するには、リスクを負わなければならない、という点です。

     近年起きた実例として、2001年にヴァージニア工科大学からドラフト1順目1位でアトランタ・ファルコンズへと入団したQB(クォーターバック)、マイケル・ヴィックのケースが挙げられます。
     その身体能力の高さから、大学2年の時点ですでに「数十年に一人の逸材」との評価を受けていたヴィックは、、2001年にプロ入りする事を決断すると、まずその年のドラフト1順目1位の指名権を持っていたサンディエゴ・チャージャーズと交渉(注:アメリカでは大学生選手でも代理人を立てているので、当然交渉は代理人の仕事)をしましたが、ヴィック側の要求が余りにも高く、また低迷中だったチャージャーズにはヴィックの様な大物QB1人を獲得する事が重要ではなかった事もあり、チャージャーズとの交渉は不調に終わりました。
     その後ヴィックは、ファルコンズと6年6200万ドルという超破格の契約合意に達する事になります。
     しかしファルコンズは、その年のドラフトでは5番目の指名権しか持っていなかったため、他のチームから横槍を入れられる可能性もあったわけですが、ここでファルコンズは、チャージャーズと、名レシーバー、ティム・ドワイト+ファルコンズが持つ上位3順目までのドラフト指名権と、チャージャーズが持つ1順目1位のドラフト指名権を交換するトレードを成立させ、ヴィック獲得への準備を整えました。
     そして結果的に、ファルコンズ入りしたヴィックは、1年目は控えとしてNFLでのプレーを学び、2年目の昨シーズンに先発に昇格して大活躍を見せたと同時に、チャージャーズがファルコンズから得た指名権で獲得した選手達も活躍したので、双方にとって成功した取引だったといえます。
     このようにNFLの場合は、選手が共同体の意識を持っておらず、ドラフト上位指名権を持ったチームへの入団を拒否した場合でも、ドラフト上位指名権を持ったチームがメリットを得る事ができるのです。
     そして私が考えるに、仮にドラフト指名権の譲渡を制度化しないまま完全ウェーバードラフトだけを導入すれば、有望選手が意中ではない球団から強行指名を受けたためにプロ入りを延期せざるを得なくなったり、逆に上位指名権を持ったチームが有望選手の指名を断念するといった、完全ウェーバードラフトの意味が無くなってしまうようなケースが出てくるのではないでしょうか。これでは、江川事件や元木事件、あるいは小池事件といったドラフトにまつわるトラブルをはじめとする過去と、同じ歴史が繰り返されることとなります。

     また、NPBが完全ウェーバードラフトを導入するのなら、私はドラフト指名権の譲渡制度の導入も必要と考えていますが、それに加えてNPBには、NFLの様なドラフト指名権のトレードが実行しにくい事情があります。それは、シーズン終了からドラフトまでの期間がNFLと比べて短い点です。
     NFLの場合、1月にシーズンが終わってから4月下旬のドラフトまでは時間があるので、チームにも選手にも交渉を重ねる時間がありますが、NPBでは大体十月にシーズンが終わった後、11月下旬にはドラフトが行われるので、NFLのようにドラフト指名権が関係した大型トレードが実現するのは、困難でしょう。
     したがって、ドラフト指名権のトレードの代案が必要になると思われますが、私がその代案の1つを示したいと思います。

     まず私が参考にしたのは、「NPBのフリーエージェント制度(以下FA)には選手による補償が存在する」という条項です。

     【野球協約第205条2項より一部抜粋】

     選手による補償は、当該FA宣言選手と選手契約した球団が保有する支配下選手のうち、外国人選手および同球団が任意に定めた30名を除いた選手名簿から旧球団が当該FA宣言選手1名につき各1名を選び、獲得することができる。

     この制度を元に、ドラフト指名権譲渡の補償制度を作るのが良いでしょう。下位でシーズンを終えたチームがドラフト1順目の指名権を手放すのは大きなリスクですから、FAの補償以上に、指名権を受け取るチームにもリスクを負わせるのがいいのではないでしょうか。

     たとえばMLBのエクスパンションドラフトのように、最重要選手15名をプロテクトリストに入れ、続く重要選手15名の選手を準プロテクトリストに入れた上で、これらのリストをリーグに提出して準備をしておき、ドラフト指名権を他チームに譲渡したチームは「相手のチームの選手の中から、準プロテクトリストの選手1名か、あるいはリスト外の選手5名を獲得できる」とすれば良いのではないかと思うのです。
     この方法なら、ドラフトで大物選手を獲得するチームに大きなリスクを負わせる事で、ドラフトを原因とした戦力不均衡はだいぶ緩和されるだけでなく、人材の流動化も起こりやすくなって、選手自身にとっても出場機会が増え、球界の活性化が期待できます。
     このように、NPBがNPBに相応しい形で成熟していくことを、私は願っています。

    【参考サイト】

    Baseball Wind プロ野球の論理学
    日本プロ野球選手会公式サイト



     第13回 プロのピッチャーの球を体感しよう 〜その1〜


     読者の皆さまこんにちは。
     日本では野球の本格的なシーズンが到来して、プロ野球では連日熱戦が繰り広げられていますが、海の向こうでも、ヤンキースでデビューを果たした松井選手がリーグの打点ランキングの上位に入り、野茂投手も通算100勝を達成するなど、我々野球ファンを楽しませてくれています。
     しかし今回のお話は、この様な我々から遙か遠い超一流のフィールドではなく、我々が実際に野球をプレーする時に関係のあるお話です。

     皆さまは、投手が投げた球がどの位の時間で打者のところに到達するのか、ご存知でしょうか?
     すでに皆さまご存知の通り、野球の正規のフィールドでは、ピッチャーズプレートからホームベースまでの距離は18.45メートルですが、実際に投手がボールを投げるときには、足を大きく踏み出してからボールをリリースするので、ボールが空中を進む距離は18.45メートルよりも短くなります。
     投手がボールをリリースする位置には個人差がありますが、大体ピッチャーズプレートから2メートルほどホームベース寄りとなります。それと同時にボールをリリースする位置は、ターゲットとなるストライクゾーンより1メートル強高くなっている事も考慮しなければなりません。
     したがって三角関数を用いる事で、投手がボールをリリースする位置からホームベースまでの大まかな距離を求める事ができ、この大まかな距離と球速を用いれば、ボールが打者に到達するまでのタイムを割り出す事ができますが、こうしてボールが打者に到達するまでのタイムを調べると、いろいろ面白い事ができます。

     一流のプロ選手の投げる球がホームに到達するまでのタイムは、大体0.4秒から0.5秒の間となっており、球がホームへ到達するのにかかったタイムが0.4秒だった場合の球速は約150km/hですが、それが少し遅く0.5秒となると、球速は約120km/hになってしまいますから、打者が「タイミングを外された」と言うような場合でも、僅か0.1秒以内の微妙な違いしかありません。
     それを考えると、バッティングがいかに難しく、微妙なものであるかがわかります。

     さて、球速と球がホームに到達するまでのタイムの関係を把握していれば、スピードガンを使わなくても、球がホームへ到達するのにかかるタイムを計る事で、球速を割り出す事が出来ます。
     もちろん、ストップウォッチを用いて手動でタイムを計測するのなら、多少の誤差はでますが、何度も計測を繰り返せば、投手の大まかな球速を把握する事が出来るでしょう。
     ただ、この方法が実行できるのは、ピッチングが正規のフィールドと同じ18.45メートルで行われた場合に限ります。つまり、投手と打者との間隔が18.45メートル未満だった場合では、投球のタイムが0.4秒だとしても打者には150キロに感じられますが、投球が実際に150キロに達しているわけではありません。
     しかし、この事が大変重要な点なのです。
     球がホームに到達するまでのタイムを把握していれば、打者に150キロを体感させられる球を読者の皆さんでも投げる事ができるのです。
     かつて、大投手沢村に2度までもノーヒットノーランを喫した大阪タイガース(現阪神)が投手を打者に1メートル近づけて打撃練習を行い、沢村攻略に成功したという話は有名ですが、それと同じ事を我々が遊びや趣味で野球をプレーするときにも再現できるわけです。
     野球を行う時に、個々の投手の最速の球が0.4秒を少し切る程度のタイムで打者に到達する距離を特定して、その位置でピッチングをすれば、「誰もがロジャー・クレメンスと対戦できる」と言えるかも知れません。
     これで、もし最速の球のタイムが0.3秒半ばに達する様だと、170キロの球を打つに相当する反射神経が必要になり、もはや野球の領分を出てしまっていると言えますが、そのような超豪速球に挑戦するのも一興でしょうか。
     ちなみに私自身は、163キロ相当の球を打ち返した事があります。
     皆さまも是非この方法をお試し下さい。
     我々にとって遥かに遠い超一流のフィールドに近づく事が出来るかも知れません。
    (注意 : 投手を打者に近づけると、投手が打球に脅かされる危険が増えるので、安全の為の対策が必要になります。実際に行う時は、打撃練習用の柵を用意したり、あるいは反発力の低いバットか、硬くない球を使用して下さい。)

     タイムと球速の関係を示したチャートを載せておきます。
     是非、打ち出してストップウォッチと一緒にご利用下さい。

    0.33 秒 183 q
    0.34 秒 178 q
    0.35 秒 173 q
    0.36 秒 168 q
    0.37 秒 163 q
    0.38 秒 159 q
    0.39 秒 155 q
    0.40 秒 151 q
    0.41 秒 147 q
    0.42 秒 144 q
    0.43 秒 141 q
    0.44 秒 137 q
    0.45 秒 134 q
    0.46 秒 131 q
    0.47 秒 129 q
    0.48 秒 126 q
    0.49 秒 123 q
    0.50 秒 121 q
    0.51 秒 119 q
    0.52 秒 116 q
    0.53 秒 114 q
    0.54 秒 112 q
    0.55 秒 110 q
    0.56 秒 108 q
    0.57 秒 106 q
    0.58 秒 104 q
    0.59 秒 102 q
    0.60 秒 101 q
    0.61 秒 99 q
    0.62 秒 98 q
    0.63 秒 96 q
    0.64 秒 95 q
    0.65 秒 93 q
    0.66 秒 92 q
    0.67 秒 90 q
    0.68 秒 89 q
    0.69 秒 87 q
    0.70 秒 86 q
    0.71 秒 85 q
    0.72 秒 84 q
    0.73 秒 83 q
    0.74 秒 82 q
    0.75 秒 81 q
    0.76 秒 80 q
    0.77 秒 79 q
    0.78 秒 78 q
    0.79 秒 77 q
    0.80 秒 76 q
    0.81 秒 75 q
    0.82 秒 74 q
    0.83 秒 73 q
    0.84 秒 72 q
    0.85 秒 71 q
    0.86 秒 70 q
    0.87 秒 70 q
    0.88 秒 69 q
    0.89 秒 68 q
    0.90 秒 67 q
    0.91 秒 67 q
    0.92 秒 66 q
    0.93 秒 65 q
    0.94 秒 64 q
    0.95 秒 64 q
    0.96 秒 63 q
    0.97 秒 62 q
    0.98 秒 62 q
    0.99 秒 61 q
    1.00 秒 61 q
    1.01 秒 60 q
    1.02 秒 59 q
    1.03 秒 59 q
    1.04 秒 58 q
    1.05 秒 58 q
    1.06 秒 57 q
    1.07 秒 57 q
    1.08 秒 56 q
    1.09 秒 56 q
    1.10 秒 55 q
    1.11 秒 55 q
    1.12 秒 54 q
    1.13 秒 54 q
    1.14 秒 53 q
    1.15 秒 53 q
    1.16 秒 52 q
    1.17 秒 52 q
    1.18 秒 51 q
    1.19 秒 51 q
    1.20 秒 50 q
    1.21 秒 50 q

    【参考文献】

     「人生はワールドシリーズ」   トム・ボズウェル 著
     「プロ野球全記録1992年版」 宇佐美徹也 監修



     第14回 プロのピッチャーの球を体感しよう 〜その2〜


     皆さまこんにちは、ICHILAUです。
     前回に引き続いて、今回も読者の皆さんが実際に挑戦できる、野球の楽しみ方についてご案内したいと思います。

     今回は、手元にあれば便利な道具がいくつかありますので、以下に示す物をご用意頂ければと思います。
     まず硬球ですが、縫い目状の模様があるボールなら、軟球でもテニスボールなどでもかまいません。

     次に中型のビーチボールです。空気をパンパンに入れず、片手で掴める程度の気圧にして下さい。片手でつかんで投げられる程度なら丁度良いでしょう。
     もしあれば、地球儀もご用意下さい。これで準備が整います。

     【ストレート】

     最初は、基本的な球種からはじめましょう。
     地球儀をお持ちの方は、右手で南極、左手で北極を持って下さい。
     そして地球を西方向(つまり現実の自転の逆)に手前に回して頂くと、それが「速球」の回転です。このバックスピンの影響で、ボールの上と下で気圧の不一致が起き、気圧が低い上部へボールは吸い寄せられます(基本的には飛行機と同じ原理です)。
     しかし硬球を人間が投げた場合、この浮力では重力の影響をある程度緩和できても、重力に打ち勝つことは出来ません。したがって基本的に、オーバースロー、そしておそらくサイドスローでも、投げられた硬球は浮き上がりません。
     ところが例外があるのです。
     それがまた野球の魅力ですが、この話は次回に譲ることとします。

     では、実際に投げて見ましょう。(室内で投げる場合は周囲の物にご注意のほどを。)
     ビーチボールを手にして下さい。
     そして、ビーチボールの上側を持って自然に投げるのですが、この時、リリースの瞬間にスナップを効かせ、ボールの上側にある四本の指を下向きに振ってください。
     すると、激しいバックスピンの掛かったボールが飛んで行きますが、スピードが遅い割に長い距離を真っ直ぐ飛ぶので、“ゆったり”している様に見えると思います。あるいは、ビーチボールがヒモで吊られているように見えるでしょうか。

     また、ボールを投げた角度によっては、ボールが落ちる直前に浮き上がって見えます。
     が、実際に浮き上がっているのか、そう見えるだけなのかは、私の肉眼では確認できませんでした。しかし、軽いビーチボールなら浮き上がるのもあり得る事でしょう。
     因みに、ビーチボールを手の上に乗せ、指の使い方を上下逆にやれば、有名な“キャプテン翼”の“ドライブシュート”が再現出来ますが、これですと、すぐにボールが地面に落ちてしまうので、このテクニックが、野球にもサッカーにも役に立たないのがお判りになるでしょう。このテクニックが有効なのは、より球速のあるテニスやゴルフくらいです(他にビリヤードも)。野球の場合は、投手が投げた球は例外なく、下降しながら打者に到達しますから、あえて下に進む回転を掛ける必要は、ないのです。

     【ストレートの家族】

     皆さんは、「ストレート=速球」は和製英語の1つであり、アメリカでは「ストレート=速球」とは限らない事をご存知だと思います。そして「速球=ストレート」という考え方があるかないかが、日米の速球のあり方の違いに大きく関与していると言えるでしょう。
     近年日本でも、MLBの注目度が高まった結果、日本の野球ファンにも知られるようになったストレートの家族を紹介して行きます。

     ○ カットファーストボール

     タイムリーな話題と言えば、松井選手を悩ませている「シーム(縫い目)」の話ですが、ここではビーチボールで再現できるカットファーストボールに挑戦してみましょう。

     投げ方は、基本的には先ほどと同じです。違いは、先ほどはリリースの直前は垂直だった手を今回は斜めにしておく点です。すると回転軸の傾いた“バックスピン”がかかるので、手を傾けた側に、ボールは曲がります。
     内側に傾ければ、マリアーノ・リベラのカットファーストボールを大げさにしたボールを投げることができます。ただしこのやり方は、硬球を投げてカットファーストボールを投げるときの投げ方とは、違いますけれども。
     尚、手首を逆に外側に傾ければ、ボールはシュートの様に曲がります。

     少年時代の私は友達と草野球をやりながら、カットファーストボールを発明しました。結局、先を越した人がいた事を後に知ることになって、残念な想いをしたのですが。
     当時、野球に使用していたのはテニスボールでしたが、ストレートの時より少し指を右にずらして握り、投げました。こうすると、リリースの時に自然とボールがずれ、ボールにスライドする回転がかかります。皆さんも実際のボールで試してみて下さい。

     次回は、2シームファーストボールなどの話題をお届けしたいと思います。



     第15回 プロのピッチャーの球を体感しよう 〜その3〜


     沖縄地方は梅雨がそろそろあけるそうですが、みなさまはお元気でしょうか?
     さて、今回も前回に続いて球種の話をさせて頂きますが、前回に続きご自分でも試される方は、縫い目の模様があるボールをご用意下さると幸いです。

     【○○シームファーストボール】

     今回は、いよいよシームの話です。日本のファンや選手にとって最近の技術的な最も大きいトピックスが、この“シームの速球への影響”ではないでしょうか。私が知る限り、日本のテレビでこれが最初に出たのは、1999年のワールドシリーズにて解説を務めた野茂投手が、2シームファーストボールに付いて言及したときです。
     また、テレビ朝日系の番組“プロ野球って何だ”にも少しだけ登場しました。
     その後、2001年春にマリナーズの佐々木投手が2シームファーストボールに取り組んだ事で、一気に日本のファンに浸透したようです。

     ちなみに、私自身は野茂投手の話を聞く前に、名ライター、ロジャー・エンジェル氏のコラム集の中で“シームの速球への影響”について読んでいましたので、これは既知の話題でした。
     少し整理してみましょう。
     「○○シームファーストボール」と呼ばれる球種は、4シームファーストボールと2シームファーストボールの2つです。硬球(あるいは軟球かテニスボール)を手にして、ボールの縫い目がUに見える様にしてみて下さい。そしてUを横切る様に指を掛けると、これが4シームファーストボール、つまり、日本語で言うところの「ストレート」です。
     つぎに、ボールの縫い目同士が最も近付いている位置が見える様にしてみて下さい。縫い目同士が最も近付いている位置に指を掛けると(並行でも直角でも良い様です)、これが2シームファーストボールです。
     ご存知の通り、物体が空気中を移動すると、物体の後ろには気圧の低い空間が発生し、物体は後ろの空間に引っ張られますが、この“後ろの空間”が、スポーツと縁浅からぬ存在となっているのです。ゴルフボールの表面を覆う多数の窪みも“後ろの空間”への対策ですし、自転車、モータースポーツなどオープンレーンのレースでは、“後ろの空間”が勝負の鍵を握っていると言えるでしょう。
     そしてみなさんのお手元の硬球を投げた場合も“後ろの空間”は発生しますが、4シームと2シームでは“後ろの空間”の力に差が出ます。
     実際、お手元の球で試してみるとお判り頂けると思いますが、4シームで投げた場合、“バックスピン”の回転軸に平行な縫い目は4つになり、2シームは2つになります(これが4シーム、2シームの名前の由来です)。
     そして、回転軸に平行な縫い目は、気流を乱し、不安定な気流の影響で“後ろの空間”の気圧も乱れ、後ろへ引く力が少なくなります。同じ原理を使ってスピードを求めた例として、長野オリンピックのスピードスケートの選手がユニフォームに小さな突起をつけていたのをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。
     回転軸に平行な縫い目が多ければ多いほど、“後ろの空間”は弱くなるので、4シームは2シームより“後ろの空間”の影響を受けずに済み、真っ直ぐに近い軌道を保ちます。

     それでは、球種としての4シームと2シームについて整理してみましょう。
     4シームファーストボールは、重力や気圧の影響を受けず、水平に近い軌道で進みます。つまり、「ストレート」ですね。
     2シームファーストボールは、単純ではありません。
     エンジェル氏のコラムでは、2シームは4シームより、約ボール1つ分低くなると同時に、球速が5、6q遅くなる、と書いてありました。
     また昨年亡くなった大打者テッド・ウィリアムスは現役時代に2シームと4シームの違いに気付いていたそうですが、彼の見解も同様です。
     しかし、野茂投手の解説に因ると、人に因って右に曲がる人や左に曲がる人がいるそうで、また、この球種に関しては「どう変化するのか本人も分かっていない」との意見も聞きました。
     そして面白い事に、元巨人と中日の名投手の西本聖氏が、野球教本の中で解説されていた「シュートの投げ方」は、2シームの投げ方とほとんど同じでした。
     一体どれが2シームファーストボールの正体でしょうか。

     私の見解では、「4シーム以外で変化を加える事なくリリースされた球は“2シームファーストボール”とする」ということになります。
     2シームは会得するのは簡単で、ストレートを投げる人なら誰でも投げられるはずですし、他の変化球のように特別腕に負担が掛かる球種でもありません。劇的な効果もありませんが、コントロールと知恵次第で、ピッチングの幅が大きく広がるでしょう。すでに、高校球児の中に、2シームをレパートリーに加えている投手がいるのは、嬉しい事です。

     ちなみに、速球の亜種として、ムービングあるいはシンキングファーストボールと呼ばれるボールもありますが、これらも私の解釈では“2シームファーストボール”の中に含みます。

    次回は、『浮き上がる球』について取り上げます。


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