サイコロ野球への招待 by MAKI

    第6回 サイコロ野球ゲームデザインの道(新しいサイコロ野球ゲーム)

    第7回 サイコロ野球ゲームデザインの道2(新しいサイコロ野球ゲーム)



     第6回 サイコロ野球ゲームデザインの道(新しいサイコロ野球ゲーム)


     いま、新しいサイコロ野球ゲームのデザインをすすめている最中です。数名の仲間とデザインとプレイの両方を楽しんでいます。今回と次回の2回に渡って、この新しいサイコロ野球ゲームについて、お話したいとおもいます。

    ・新しいサイコロ野球のコンセプトはなにか?

     今回のサイコロ野球については、大きなコンセプトがあります。それは、「選手のインパクトの表現」です。例えていうなら、「’36秋の中根之の打率(.376)は凄い。どれ位凄いかというと、中根の打率とリーグ平均の差が、イチローの打率のリーグ平均の差と同じになる位凄い。」というのを、具体的な数字として表したものです。
     これを、投手・打者・守備について評価を試みています。

     中西や大下のように、本塁打が少ない時代に傑出した成績を収めた長距離打者も、数字だけでみれば30本前後にすぎません。これを、そのリーグの傑出度で評価すれば、後の時代の50本塁打クラスになってきます。「当時中西や大下の凄さ」を(わずかでも)体験できるかもしれません。

     念の為、書いておきます。私は懐古主義者ですが、野球(特に日本野球)が進歩していると信じています。(「信じたい」と言うべきかも)ですから、中西が今の時代に急にやってきたとしても、松井以上の本塁打を放つとはおもえません。しかし、中西の’56での活躍度・傑出度を私なりに算定すると、’2000・’2001の松井の活躍度・傑出度を上回るということです。はたして、’2002の松井の場合はどうでしょうか?計算するのが楽しみです。

     と口に言うのは簡単にできますが、実際に算定しようとなると一苦労です。2リーグ制だけで、規定打席以上の打者だけで、のべ3000人以上。これに投手がつき、さらに守備のデータまででてきます。算定方式を変えれば、計算し直さなければなりません。いまは、いい表計算ソフトがありますので、随分手間は省けますが、それでもかなりの作業量です。

     このコンセプトを実現する上で、大切なポイントがあります。それは、すべての算定を計算式にしたことです。「野球のプレイは数字のみでは語れない」というのは、百も承知です。しかし、いまから、大下の打撃やスタルヒンの投球を見るわけにはいきません。「見ることのできない選手」を「現在の選手」と同じように評価するには、個人的にはいい方法だと思っています。

     現在は、このサイコロ野球ゲームの自費出版に向け、1チーム28人平均のデータを計算しつつあります。全部できあがるのは、相当先になるでしょうが・・そうなると、いままで、規定打席・投球回以上の投手・打者各3000人から2倍以上の15000人分以上のデータが相手です。そうして、控えの選手も見ていくと、そのチームの性格や長所・短所も見えてきます。そのチームを率いた監督の方針もわかってきます。

     一言で「投手がいいチーム」といっても、「先発が長いイニング投げるチーム」「短いイニングで交代させるチーム」「ストッパーが優れているチーム」「エースがフル回転するチーム」等々、いろいろな性格があります。

     打者にしても、「打率がいい打者」「本塁打が多い打者」「二三塁打が多い打者」「バントがうまい打者」「併殺打の少ない打者」「盗塁のうまい打者」等々千差万別です。いくつかの長所を兼ね備えている凄い打者もいます。守備がうまければ打撃を犠牲にしなければならない場合もありますし、あるポジションの層が極端に薄いチームもあります。

     私が好んで使う’59オリオンズは、考え方によっては優勝した’60より強力なチームです。榎本・山内・田宮・葛城と打線は強力。小野・荒巻といい左投手が2人そろっています。しかし、二塁がなんとしても弱いです。ここをどう克服するか。そんなこと考えながらプレイしいていくと、ヘタな本に負けないほど、イキイキと選手たちの姿が見えてきます。

     さて、次回は、前作「オールスターベースボール」より追及してきた「監督の目」で、このサイコロ野球を見てみます。



     第7回 サイコロ野球ゲームデザインの道2(新しいサイコロ野球ゲーム)


     今回は、「監督の目」から見た新しいサイコロ野球ゲームです。

     私が、以前作った「オールスターベースボール」と手本とさせていただいた「スーパースターベースボール」の大きな違いは、「投手交代の重要さ」です。それは、私が作り新しいサイコロ野球でも継承されている「投手の調子変動」のルールによるものです。
     私は、投手リレーこそ、監督の最も大きな仕事と考えていますので、必然といえます。
     左打者には好打者が多いというのも、投手リレーを複雑にします。リリーフの順序やタイミングは重要になりますすし、場合によってはワンポイントリリーフも使わなくてはならないですからね。
     それから、いくつかも工夫(プレイヤーによってはワナかも)により、完璧なローテーションが組みにくいようになっています。

     攻撃面で見ると、新しいサイコロ野球ゲームで追加されたルールの代表的なものは、「打者の併殺打の打ちやすさ」です。チームバッティングが出来る打者を要所に配置すると、打線の効率が全然違ってきます。
     前述したとおり、私の作るサイコロ野球ゲームは、併殺が多くでます。併殺を防いで、走者を進塁させるのが、攻撃面での監督の役目となりましょう。
     例えば、代打を出す場合にしても、「走者を進める」のか「走者を帰す」のかということは考えて起用しなくてはなりません。
     当然、打順もその辺を考慮しなくてはなりません。

     少し余談になります。バントをしない大型の2番打者というのが最近でてきています。「フルスイングでガンガン攻めるだあ」いくなんて言ってる人もおりますが、こういう大型2番も「打者の併殺打の打ちやすさ」の面で優れているケースが多々あります。バントしなくても進塁打を打てる打者なら、バントをやらなくても(できなくとも)2番に置くことができるというのは正しいことでありましょう。

     守備面では、アウトをとる力(≒守備範囲)とエラーが出る確率を分離したことにより、守備面でも選手の個性が出るようになっています。両方いい選手がいたらそれに越したことはありませんが、エラーが多くても守備範囲が広い選手と守備範囲が狭くてもエラーが少ない選手のどちらを選ぶかは頭の痛い問題です。

     こうして、投手・打者・守備の各面において、より監督の目に近づいたゲームができたと自負しております。

     さて、7回に渡った「サイコロ野球への招待」ですが、今回でいったん終了させていただきます。編集長、読者の皆様どうもありがとうございました。これからも、いろいろな意味で協力しあえたらいいですね。


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