クールジャイアンツ by 慈恩美

    第1回 巨人と私

    第2回 心配なジーニ

    第3回 我が憧れの原辰徳監督へのメッセージ 〜緊急版〜

    第4回 聖地光臨

    第5回 悩めるガッツな貴公子・仁志敏久



     第1回 巨人と私


     私が、巨人に惹かれていった理由は、実に単純です。ある日TVで偶然見た野球中継で、巨人が勝ったのを見て、そのままファンになりました。見ていた野球中継で他のチームが勝っていたら、間違いなくそのチームのファンになっていたでしょう。しかし、これで終わってしまったら、東京ドームで長嶋さんの胴上げを見て泣くほどの巨人ファンになってしまった理由の説明にはならないので、以下、巨人ファンとして筋金入りになった過程について、説明していきます。

     前記の通りに巨人ファンになった後、私は、巨人のことを色々な本で読むようになりました。するとそこには、巨人の輝かしい歴史と伝統が書かれていました。その代表的なものはフィクションですが、「巨人の星」です。肉体的、精神的にどうしようもなく弱い私に、その強さと素晴らしさは魅力的に映り、私は巨人に憧れを持つようになりました。ところが私の地元は、中日のホームタウン。巨人ファンを全面に出せば出すほど周囲の反発が強いのは当然で、かなりやられましたが、反骨精神だけ妙に強い私にとっては、この体験が、巨人ファンとしての強固な自分を創り上げました。
     また私は、巨人の歴史、伝統、強さだけにではなく、当時現役だった現監督・原辰徳の爽やかさとホームランのかっこよさにも、同時に惹かれていきました。「巨人軍は常に紳士たれ」という言葉を地でいっていた原辰徳は、タイガーマスク(初代の佐山聡)やアントニオ猪木と並んで、私にとってのヒーローでした。球場でも必然的に、原辰徳の応援歌に力が入っていましたし、球場観戦時にはいつもホームランを打っていたので、私はますますあの人に惹かれていきました。巨人ファンには「ON世代」が多いと思いますが、私は「辰徳世代」です。OもNも知れば知るほど奥が深いのですが(特にN)、私は監督時代のあの人の姿しか知らないので、これは当然なのかもしれません。

     大学進学で東京へ出てきたとき、私は「自分以上の巨人ファンがたくさんいる」と思っていたのですが、周りからは、「お前のような巨人ファンは、はじめて見た」とよく言われました。今でも言われます。
     私以上の巨人ファンとして、いの一番で名前を挙げるとするなら、やはり「ジャイアンツ・親父」、「ジャイアンツ・ストーカー」と言われる「徳さん」こと徳光和夫さんでしょう。徳さんの溺愛ぶりは、TV番組の「ザ・サンデー」で証明済みですが、以前ズームイン朝で巨人が優勝を逃したときに頭を丸めたこと、長嶋さんが第一期監督時代に解任された翌朝、日テレをクビになる覚悟で怒りを顕にしたことを考えると、私など可愛いものです。特に清原に対する情のかけ方は半端ではなく、徳さんの前でしか見せない清原の優しい表情を見ると、「流石」と言いたくなるだけでなく、頭が下がります。選手達に形だけの感謝をされない徳さんは、本当の意味での巨人ファンといえるのではないでしょうか?蛇足ですが、祝勝会のビールかけに参加して選手達と一緒にはしゃいでいた徳さんが羨ましいです。私もいつか参加したい・・・。

     これに対して、最近チケットの不祥事を起こした応援団(巨人のホームページでは、「一部」と強調されています)は「最低」の一語につきます。彼等の球場での態度は自己中心的で、場内に殺伐とした空気を運び込んでいます。喧嘩などの騒ぎを起こすだけでなく、自由席を我が物顔で独占し、チケット購入だけでなく座席確保に努力している人々(私もそうでしたが)に対して特権階級的な振る舞いをみせる始末。そこには、「皆で楽しもうぜ!」というアメリカの球場にあるような感覚は全くありません。清原が巨人移籍一年目で大不振だったときは、ナゴヤドームで応援を止めてしまったので、清原本人から「冷たい」と言われ不信感を持たれていた人達もいました。応援団なのに、「な、な、な、なんでだろう?」という感じです。応援団の真の姿を垣間見たような気がしました。
     ですが、今年ついに、そんな彼らの中から、逮捕者が出てしまいました。そしてこれを受け、東京ドームの巨人戦は、今年から全席指定席になったのです。これで懲りてくれればいいのですが、果たしてどうなることやら・・・。

     一方、私自身はといえば、こういう応援団の存在があっただけでなく、2001年のイチローのマリナーズ入団にあわせてMLBがTV中継されるようになってからは、喧嘩もなく殺伐としていない向こうの球場の雰囲気(ヤンキー・スタジアムは違うらしい)に惹かれるようになったので、巨人中心の贔屓倒し的応援は止めています。とはいえ、それは巨人との付き合い方を変えただけ。昨年の優勝・日本一決定時はささやかながら祝杯を挙げ、翌朝のスポーツ新聞各紙を買い漁り、笑顔満面の一日を過ごしていました。
     たとえ不景気だろうが、テロが起きようが、「巨人の優勝が生き甲斐だ」ということ自体は、私にとっては変わっていません。ですが、相変わらず、どっかのひょっこりひょうたんジジイや極右的巨人ファンのように、「巨人さえ強ければ、よそはどうでもいい」とは思っていませんので、あしからず。



     第2回 心配なジーニ


     開幕してしばらく経ちますが、今の巨人軍をどのように見ていますか?巨人軍は、早くも満身創痍の戦いを強いられていますが、ヤキモキしていませんか?私は、原監督が昨年掲げた「不動心」というお言葉どおり、ヤキモキすることなく見ています。現状のメンバーでやっていくしかありませんし、またベンチに入っている選手たちを信じるしかありませんからね。

     さて、私がTVを見ていて非常に気になったことは、ジーニ(注:原監督をはじめ、選手たちはペタジーニのことを「ジーニ」と呼んでいます)のことです。バッティングではそれ相応の活躍をしていますが、案の定、外野守備の不安が出てしまっています。私がTVで見ている限り、ジーニは、ベンチでどこか寂しそうに座っていて、ホームランを打ってベンチに帰ってきても表情は暗く、影がさしているようです。また円陣を組んでいる時や、4月2日の試合でサヨナラホームランの後藤をホームで迎えたときでも、ほかの選手たちと距離がありました。言い換えると、チーム内でどこか浮いてしまっているのではないか、ということです。そんなジーニの存在が、故障者続出などの様々なひずみをチームに与えているような気がしてなりません。対照的に、ヤンキースの松井は言葉の壁がありながらも、チームに馴染んで何事もなくやっている様に見えます。また、それに合わせるかのように、ヤンキースも快調に勝っているのは皮肉な限りです。

     今年の巨人軍は、清原と由伸でチームをまとめていく方向でいるようですが、この二人の出来に関係なく、ジーニに全てかかっていると思えてなりません。今は故障者が出ているため、ジーニが打って勝利をもぎ取っていますが、最終的にチームに馴染んでいなければ、終盤の勝負どころでジーニ絡みのミスやアクシデントが出た時に、結束が困難になるだけでなく、勝てる試合も勝てなくなってしまいます。このままでは、ジーニは昨年の松井以上に強烈なインパクトを残さなければ、チームの一員として認めてもらえないでしょう。ヤクルト退団から巨人入団までのいきさつから、すんなりと歓迎するのは難しいかもしれません。年俸とバッティングから、レギュラーから外せないのが実情ですから、今のうちに早くチームに馴染めるよう、周りの選手達が助けてほしいものです。

     原監督にお願いしたいのは、ジーニがホームランを打って帰ってきた時に、「お前は打って当たり前だよ」というような顔をして迎えないでほしい、ということです。原監督の著書「選手たちを動かした勇気の手紙」にも書かれていますが、ジーニにも「お前ホントすごいな、お前と一緒のユニホーム着て野球をやるのがうれしいよ!去年みたいに、敵じゃなくてホントよかったよ!」というような尊敬のまなざしをどうか送ってあげてください。また、ジーニがホームランを打ったときは、安心感を与えるためにも、私が現役時代から大好きだった辰徳スマイルで(いつも、という訳にはいかないでしょうが)迎えてあげて下さい。お願いします。

     ジーニの存在は、活躍しているとはいえ、私たちG党にとっても、まだ違和感があります。しかし、清原が万全でなく、けが人が多い現状では、もはやジーニ無しでは戦えません。ジーニがチームに馴染み、一体になってV2を目指すという意味でも、目先の勝敗に惑わされることなく、私たちの中にある「ジャイアンツ愛」を持って応援しようではありませんか。

     木佐貫と久保の両ルーキー君へ(原監督の監督賞風に)

     初勝利おめでとう! V2には二人の力が絶対必要です。試練はこれから。無理をしないで、亀の歩みでがんばって下さい。



     第3回 我が憧れの原辰徳監督へのメッセージ 〜緊急版〜


     3月の開幕から約2か月。思わず「なんでだろう?」と歌いたくなるくらい波に乗り切れず、首位阪神に大きく差を付けられた巨人。そこで、どこかふがいない巨人の試合を見ていた私は、いてもたってもいられなくなり、今回は2点について、緊急に寄稿させて頂きました。どうか気長に読んでいただければ幸いです。

     @クローザー・河原の起用について

     絶不調のクローザー・河原の起用法について疑問に思う方は、少なくはないでしょう。原監督のホームページでも、この件についての鹿取、斎藤両コーチとのやり取りが公開されていましたが、これをご覧になった方はどう思われたでしょうか?
     まずは、河原の起用法について考えてみたいと思います。

     河原は、昨年からクローザーとして本格的に起用され、今年更なる飛躍を遂げ・・・のはずでした。ところが、今年。3点差、2点差とあっても追い付かれ、追い越され、そして引っこ抜かれる。典型的な例は、5月31日の阪神戦。8回裏に、4番高橋由の2点タイムリー2ベースヒットで勝ち越し後、登場。さあ勝つぞ・・・と思ったら、連打とエラーで追い付かれ、アウト一つも取れずにKO。後続のピッチャーも打たれ、9回表に屈辱の11失点。今年の河原登場はこのように目を覆いたくなる光景ばかりで、悔し涙も「ぽろり」と出ないくらいです。

     これが長嶋前監督なら我慢しきれず、すぐに他のピッチャーを据えるでしょう。長嶋前監督は、マスコミなどの周囲の声に左右されやすいせいなのか、もしくは現役時代からのファン受けを狙いに行く本能的な部分が邪魔しているせいなのかは私にはわかりませんが、結果を出せないピッチャーをすぐにコロコロとクローザーの座から下ろしてしまったので、'93〜'01までの第二次監督時代には本当の意味で定着したクローザーが育たず、優勝を逃したことも多々あったのは、みなさんもよくご存知のことと思います。
     そこで、こうした事情と3年間のコーチ経験から、クローザーを育てることの重要性を痛感した原監督は、河原を育てるために、勝ちゲームの9回1イニングを預けることにしました。すると昨年は、それが見事的中し、河原は後半失速したものの、シーズンを通して大活躍して、巨人の日本一に大きく貢献したというわけです。
     したがって今年の場合も、4月までは、「チームを否定することはできない」ということで、原監督は、打たれても我慢して、河原を起用し続けましたが、5月に入ると原監督の我慢も限界に達し、一時は河原の配置転換を決めました。結局はもう一度河原にチャンスを与えることになったわけですが、これは、過去の長嶋前監督の手痛い失敗を踏まえた、「本当の意味でのクローザー育成」という視点があったからこその原監督の決断だったと思いますし、またその視点から考えれば、今は河原本人やチームだけでなく、原監督にも「忍」が必要な時と言えるでしょう。

     河原は、クローザーになったのも、プロに入って本当の意味で活躍し始めたのも、昨年からです。故障で壁にぶち当ったことはあっても、プロのピッチャーとして壁にぶち当ったことは、今年が初めてといっても言い過ぎではありません。今の河原は信頼を失い、相手のファンから声援を送られ、味方のファンからブーイングを浴びる屈辱を、目一杯味わっている状態です。ですが、今は乗り越えなければならない試練のときとも言えます。この試練は、実績のあるクローザーは皆経験しています。私は、河原がこの試練を乗り越えたとき、昨年以上の輝きを放ってくれると思いますし、またその時が来るのを楽しみにしているのです。
     原監督が下した「もう一度河原で」の決断は、ある意味残酷さも含まれているかもしれない、と私は考えています。なぜなら、この決断は、今年の巨人の浮沈だけでなく、原監督自身や鹿取、斎藤両コーチの進退もかかるくらいに重いものではないかと考えられるからです。また河原がこういった重圧に負け、チャンスをモノにできず、これまで同様打たれ続けた場合、完全な自信喪失状態に陥る可能性がありますし、もしかしたら、選手として完全に立ち直れなくなるかもしれません。そしてそうなった場合、待っているのは「現役引退」という最後通告ではないかと思わずにはいられないのです。
     仮にそんなことになれば、原監督は「河原もそこまでの選手だった」と判断し、新たなクローザーを探すだけでなく、監督として然るべき責任を取ることになるでしょうが、原監督にこれだけの決断をさせる河原の能力は、私たちファンの想像以上のようですので、どうやら私たちファンは、河原の人間力を信じて、見守るしかなさそうです。

    A弱気の原辰徳は見たくない!

     ケガ人続出、満身創痍、野戦病院・・・。今の巨人を形容すると、こんな感じでしょうか?確かに、尋常でないくらいの数のケガ人が出ています。その中で勝率5割以上(6月1日現在)と言うのは、見事です。これが長嶋前監督なら、思いっきり動揺し、苦悶の表情を浮かべながら、横浜と熾烈なビリ争いを展開していたと思います。
     長嶋前監督には、私たちファンには到底理解できない野球観がある(いわゆる一つの「動物的カン」ですネ!)のですが、当時はそれに頼った戦い方だったと思います。したがって、それが最大限に活かせた時は、神懸かり的に勝っていました。その際たる例は、'96年の「メークドラマ(○注:英語にこんな表現はないらしい)」の時でしょう。ところがチームが逆境に陥ると、現役時代からいろいろな意味で「弱さ」とは無縁のお方だった長嶋前監督は、選手達の「弱さ」をなかなか理解できずに、チームをどんどん追いつめていったところが私には見受けられましたし、また、周囲の批判に耳を貸すことなく、「弱さ」からはますます遠ざかるようになっていったのではないかと私は思っています。
     そこで、そんな長嶋前監督の姿を見続けてきた私は、正直言いますと、昨年オープン戦を見た時、巨人はレギュラーメンバーの誰か一人でもケガ人が出たらまともに戦えない状態になる、と思っていましたし、実際、昨年序盤は清原、仁志がいなくなった時、チームは不安定な状態でなかなか勝てませんでした。ところが、昨年後半はケガ人が続出しながらも、優勝と日本一を勝ち取ったのです。これは、長嶋前監督にはなしえなかった、原監督の手腕によるものだったのではないでしょうか。
     原監督は、現役時代晩年に過去の栄光からかけ離れた状態を経験しましたし、栄光の時代でも、マスコミに叩かれることが少なくありませんでした。そこで、その時の辛い経験が、選手の「弱さ」を知るいい機会になったようです。原監督が「弱さ」をぐっと飲み込み、それを糧にして常に前向きな姿勢を保ったことで、不安がチームから取り除かれ、サブの選手が自信を持って伸び伸びやれたことが勝因の一つとして挙げられるのではないか、と私は思っています。
     長嶋前監督にも原監督にも共通しているのは、太陽のようにいつも明るく前向きな姿勢ですが、監督としてそれをうまく活かせているのは原監督のように私には感じられます。

     ところが今年、非常に気になっているのが、TVカメラに映る原監督の表情です。
     いろいろあって大変なのは分かりますが、動揺や不安がモロに表に出てしまっています。勢いに乗っているせいか、例年以上に穏やかで悠然と構えている阪神・星野監督とはえらい違いです。セットアッパーを送り出す時、サブのメンバー中心にスタメンを組んだ時は、特にこれらが出ています。そこからは、現役時代から今まで一度も見せなかった、「人間」原辰徳の弱さを感じずにはいられません
     勝利後インタビューの重苦しさ。仕方がないとはいえ、猫の目のように代わるスタメン。試合中の選手達を見つめる目。コメントとして残される消極的な言葉の数々。いずれを見ても、自信の無さが見え見えです。私には、それが選手達に伝染しているように思えてなりません。チーム低迷の原因もそこにあると思うのは、私だけでしょうか?

     一番原辰徳らしくなく、たまらなく嫌だったのが、死球を受けて途中交代をした阿部について、「骨折じゃなくて本当によかった」と語っていたとき。これは間違いなく本音でしょうし、原辰徳以外の人間が巨人の監督でも恐らく同じことを言うでしょうが、昨年の原辰徳なら、「阿部が怪我で休んでいても、ウチはきっちりとウチの戦いができる。安心して怪我を治して戻ってきてほしい。」くらいの言葉が出てくるはずです。前述の通り、前向きで明るく、目先のことでいちいち動揺せず、強い気持ちで戦っていけるのが原辰徳の良さであり、魅力ですが、いまはこの気持ちが持てないから、消極的な言葉が出てくるのでしょうか。今年はそれ故に、選手を見つめる目に力が感じられませんし、またそれは、特に成長途上の若い選手達に対しては特に顕著です。私としては、憧れの人のそういう姿を見るのは、実に寂しいです。監督といえども、『俺たちのヒーロー』が、メディアや、にわかファンにコケにされるのは耐えられません。

     そこで、私から原監督へ。
     監督自身が書かれた「選手たちを動かした勇気の手紙」をもう一度読み返して、どうか自身を見つめ直してほしい。
     主力選手も万全でなければ、しっかり休ませて来るべき時に備えてほしい。サブの選手中心で試合に臨む際も、不安を表に出さず、しっかりと彼らを送り出してほしい。
     そうした上で、たとえどんな苦境に陥っても、私たちファンに中途半端な希望を持たせないで、松井のホームランのように、潔く正面切って戦って、豪快に散ってほしい。
     もしも今年、このまま優勝を逃すと、原監督が今の時期のケガ人多発を言い訳にして逃げてしまうバッドルーザーになりそうで、私は嫌になります。
     そんな弱気な原辰徳は、見たくない!
     現役時代の応援歌の歌詞、「輝く光浴びて それ行け辰徳!」と言いたくなる原辰徳を、いつも見ていたい!



     第4回 聖地光臨


     雨ばかりで、すっきりしないお天気ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
     6月13日、私慈恩美は、ついに阪神ファンの聖地、甲子園球場に行ってきました!実は、甲子園球場は、17年前に高校野球観戦で行ったことがありますが、プロ野球は初めてです。それも、TVからでも、阪神ファンの大声援が「これでもか!」というくらい伝わってくる巨人戦です。5月上旬になんとかして三塁側アルプス席のチケットを取ってくれた大阪の知人には、ただただ感謝です。この場を借りてお礼申し上げます。

     今回の観戦で、私の中でこれまであった阪神ファンに対する印象が大きく変わりました。そこで当日の観戦記を含めた、「慈恩美的阪神ファン観」を書き綴りたいと思います。

     私がとにかく驚いたのは、球場に集まった阪神ファンの多さ。球場の9割が彼等によって占められていたと思います。巨人ファンも全くいないわけではなかったのですが、内野席は「ウォーリーを探せ」状態で、応援団はレフトスタンド上段のアルプス席よりの隅っこで、哀愁を漂わせ佇んでいました。その佇んでいる場所は、照明が当らず、暗〜くなっていて、幽霊でも出てきそうな感じです。またその暗さは、今の巨人と巨人ファンの心中そのものを指しているかのようでした。球場にいた阪神ファンからすれば、甲子園の巨人ファンが、それこそ幽霊に見えていたのではないでしょうか。

     試合に入り、阪神ファンの声援の大きさは、まさにどん底の18年間の鬱憤を晴らすかのようでした。宿敵の巨人が相手だからかもしれませんが、TVで見るよりも、ひときわ大きかったように感じました。特に試合が終盤に入り、阪神がチャンスを作る度に声援が大きくなっていくさまは、18年分の怨念を感じずにいられませんでした。久保裕也が、甲子園初登場時に畏縮して思うようなピッチングができなかったのも頷けます。
     声援の大きさついでに言えば、甲子園名物のジェット風船もTVで見ている限り、「すげ〜な、おい!」というものですが、私はあまりのうるささにに耳をふさいでしまいました。福岡ドームにもいえることですが、風船が飛んでいる様は鮮やかできれいですが、その後球場の係員がグランドに落ちている風船を拾う姿を見ると無性に寂しくなってしまいます。もう少し、試合を盛り上げるいい方法は無いかな、と思わずにいられませんでした。

     甲子園に行く前、私が一番心配したのが、阪神ファンの「暴れんぼう将軍」ぶりです。実際、6月11日の岐阜の試合で小競り合いを起こしていましたし、過去にラジカセやチェーン、ひどい時はネズミ花火も投げたということもあり、私の中での印象は「コワイ」・「凶暴」そのものでした。そんな不安を抱きながら私は、甲子園に向かったのですが、杞憂に終わりました。13日は負け試合でしたが、暴れる様子はなく、どこか悔しさをひたすら押し殺しているようでした。また巨人戦でよく見かける、物がグランドに投げられる、という光景もありませんでした。試合終了後も、私が以前名古屋や東京で見かけた、球場の外で異常に大騒ぎするファンも見かけませんでした。
     そんなファンだからこそ、現役時代にオマリー特命コーチが「タイガースファンは一番や!」と言ったのも頷けます(今年も誰か言ってたな・・・)。ちなみにオマリーコーチ、いまは「駐車場ありまへん。球場へは阪神電車が一番や〜!」と言っています(笑)。

     今回の甲子園遠征は、阪神ファン観が変わっただけでなく、古き良き時代の雰囲気が漂う甲子園球場の魅力を改めて知り、感じ取ることもできた、私にとって非常に実りのあるものでした。ただ一つ残念だったのは、試合中に私の座席の後方で、警官が集まってくるようなケンカがあったことです。これが無ければ、もっと楽しく野球が見られただけに残念でした。日本の球場、それも巨人戦では、よくこの手の喧嘩を見かけますが、なんとかならないのでしょうか?アメリカみたいに、問答無用で「退場!」という訳にはいかないのでしょうか?「教えて、おじいさん」という感じです。
     あとは、あの阪神ファンの声援に応え、阪神がこのまま勢いに乗って、ゆ・・・って、なんでやねん!ここは巨人の応援コーナーやろ!お前何してんねん!

    というわけで、気を取り直してやり直し。

     18年ぶりに絶好調の阪神を追い上げるには、あのファンの声援をモノともせずに、強い気持ちとジャイアンツ愛を持って、巨人の選手が戦ってくれないといけません。いつまでも阪神のカモになってたら怒るで、ホンマに!簡単に阪神に勝たせたらあきまへんで!「メイクドラマ・アゲイン」、頼むで!



     第5回 悩めるガッツな貴公子・仁志敏久


     G党のみなさ〜ん、元気ですか〜(アントニオ猪木のつもりで読んで下さい。こうでもしないと元気が出ないでしょ?)!
     浪速節が日本一似合うあのチームに、と、と、とうとうマジックが点灯してしまいました。もう巨人が優勝するには、トンビに油揚げか、棚からぼたもちのような感じでしかないのでしょうか?果たして、水野晴郎よろしく「いや〜、優勝って本当にいいですね〜」といえる日は、今年やってくるのでしょうか?私はそう信じたいのですが、気分は「クララのバカ!クララの意気地なし!」と叫びたいくらいです(何や、それ)。

     さて、そんなことはさておき、今回は、週刊誌やタブロイド紙等で「移籍か?」とか、「原監督と対立!?」などと話題に上ってしまった仁志敏久についてです。私としては、別に何もないと思うし、原監督からすれば「一緒にブスっと刺す・・・」ではなく、「一笑に付す」程度のことだと思うですが、個人的にちょっと気になるので、取り上げてみたいと思います。

     6月から7月上旬まで足の故障で一軍から離れていた仁志敏久。あの当時は、楽観的に「すぐまた帰ってくるだろう」という雰囲気でしたが、これが長くなってしまったので、あれこれ出てきたようです。きっと原監督は、いい迷惑を被っていることでしょう。

     私は番記者ではないので、具体的に何が起きているか分かりかねますが、実際のところは、こんな感じなのではないでしょうか?

    1.死球の箇所の治療だけでなく、4月に元木と激突して怪我をした部分の完全治療

     これが一番妥当なのではないかと思われます。ちょうど怪我で休んでいた選手が戻ってきたところで、すぐにチーム状況が変わるわけじゃないですから、じっくり治療するだけでなく、リフレッシュもかねて調整していた。如何ですか?

    2.1以外にも、現に報道されていることが根っこにある

     あり得ないとは思いますが、ちょっと原監督の視点で考えてみたいと思います。

     仁志に限らず、プロ野球の第一線でやっている選手は、アマ時代からの申し分のない実績があり、独自の野球観も培っています。それ故に、監督やコーチのやり方に、全く不満がないということはありえないでしょう。ですが、現役時代晩年に不遇の時期を過ごしてきた原監督が、そのような選手の複雑な感情を理解できない、ということは果たして考えられるでしょうか?
     また、仮にそれが理由で、選手が、「自分のプレーができない」と言ってふてくされていたとしても、それは非常にもったいないことだと思います。原監督なら、そういう選手を見かけたらきっと、「プロ野球選手として輝ける時期は、人生の中ではそんなに長くないぞ。その長くない時期を、オレに対する不満だけで潰していいのか?オレに不満を向けるのは一向にかまわないが、それだけで、自分自身のプレーヤーとしての可能性を小さくしていいのか?」とか、「家族もいるだろ、子供もまだ小さいだろ。自分がプレーする姿を家族に見せたいとは思わないのか?」と問いかけることと思います。

     原監督は基本的に、レギュラーを固定する方針でいます。そのクラスの選手達に、無用な競争をさせないで、思い切りやれる環境を整えてあげるためです(参照:幻冬舎刊、原辰徳著「選手達を動かした勇気の手紙P.33&34)。そして今の巨人では、実績等から判断して、仁志は、必要不可欠なセカンドのレギュラーと言えると思います。
     ただ原監督は、つまらない感情を仁志が少しでも持ったままでいるのだとしたら、どれだけ能力が高くても、彼をレギュラーから外すでしょう。というのも、その感情が、仁志のプレーヤーとしての飛躍の可能性を著しく阻害している、という彼自身の個人的な理由以上に、「さあ、これから」というチームの士気に影響を及ぼす、と思われるからです。そして、仮にこうなった場合、原監督は自分の責任で成長途上の鈴木尚広を、エラーしようが、チャンスで凡退して試合に負けようが、セカンドで使い続けて経験を積ませていくでしょう。
     ですから、今回の一連の仁志関係で報道されたことが実際にあるというのなら、原監督は、こういった事を仁志が理解できていないが故に、「頭を冷やしなさい」ということでずっと下で調整をさせている、という感じです。これまた、如何でしょう?

     仁志は、高橋由らと共にチームリーダーとして、巨人を引っ張っていってほしい選手です。また、今までの殻を打ち破り、さらに光り輝いてほしい選手でもあります。
     TVの企画とはいえ、江川卓さんにしっかり噛み付いて「江川の天敵」とか、「切り込みバトラー」と言われてしまうくらい自我の強い選手ですが、それがもっといい方向に向かってほしい、と思っています。また仁志本人も、自ら選んで巨人に入ったことを、どうか後悔しないで、前に進んでいって欲しいとも願っています。
     そしてそれは、きっと原監督も同じではないでしょうか?

     実は、仁志について今回、「私が取り上げる」という話をしたとき、「是非おやんなさ〜い(長嶋さんのつもりで言ってみて下さい)」と言ってくれたのは、編集長のMBさんでした。MBさん曰く、仁志は巨人の中でも一番気になっている選手で、どうやら6大学のときからずっとスタンドで見ていたので、愛着があるとか。でも、いつまでも能力に見合った活躍が見られないので、ちょっとがっかりしているということでした。ですので仁志には、そういう人たちの期待を忘れずに、これからも羽ばたいていってほしいと思っています。


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